ブナの沢旅ブナの沢旅
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2024.02.17
虎毛山〜須金岳
カテゴリー:雪山

2024年2月17-18日

10年前に虎毛沢を遡行したが虎毛山には登らなかった。源頭を詰めてもうすぐ登山道というころから雨が降り出し、ガスで視界がなくなったため山頂は諦めて登山道を下ったからだ。また行けばいいと思いながらいつの間にか10年がすぎた。

全国的に好天が約束された週末となり、久しぶりに東北の山へ行きたいと思った。そして思い出したのが引き出しの奥にあった虎毛山。近づく「店じまい」の前に冬ルートから訪れてみようと急遽計画を立てた。一般には日帰りで歩かれているけれど、当日発の遅い出発で山に泊まるのが私たちの山歩きだ。

鬼首奥の上ノ台寒湯沢橋から林道を進み、渡渉して須金岳登山口に着いたのは11時近かった。虎毛山には避難小屋があるが、遅い出発では到着できないだろうし小屋が使えないかもしれないとテントを担いだ。駐車地点に地元ナンバーの車が3台駐車していたので予想通り先行者のトレースがあり気楽な気分で登る。

針葉樹の細尾根を登ると雪がつき始めブナの混合林となる。さらに尾根が西向きになると大木のブナの純林が広がりとても雰囲気がいい。登山地図にもブナ巨木群の表記があるところで、ここが以前から注目していた須金岳のブナ林なのだと思いながら急斜面に汗をかく。須金岳は翌日立ち寄ることにして分水嶺の広尾根を虎毛山方面に向かう。

1241mポコに乗り上げると一気に展望が開け万滝沢をはさんで虎毛山が近い。東北の山らしいゆったりとした山容で前衛の山並みもおだやかだ。去年朝日連峰前衛の三足一分山に登った時にうけた印象と似ている。仲間が膝が痛くなったと言うので平坦な水沢森分岐付近の小さな窪地でザックをおろした。整地が不要で展望抜群というなかなかの優良物件。いつものテントライフに落ち着いて初日を終えた。

 

 

 

 

朝食をすませて外に出ると尾根の東側には朝日に照らされた雲海が広がっていた。幻想的な美しさにしばし見惚れる。不要な荷をデポして日帰りハイキングに出発する。昨日以上に平坦な広尾根を進むと展望が開け南には禿岳から大鏑山、西には真っ白な神室連峰の山並みが姿をあらわす。それぞれ思い出のある山だ。禿山は8年前に東北旅行をしたとき花立峠で山に登らない友人に待ってもらい一人でサクッと往復し、鬼首の間けつ泉を散策した。

虎毛山までは近くに見えるのに意外と遠い。万滝沢を大きく回り込むように取り囲んだ幾つかのポコを越えていく。残雪期には万滝が見えるらしいが今は雪の中。そう、鳥海山も見えてきた。美しい山だけれど、直接登るよりも眺めるか麓を歩く方が私は好きだ。展望を楽しみながら緩やかに登って山頂の避難小屋へ。

前日最後にすれ違った若者が小屋の戸は開かなかったと教えてくれた通り、鍵を開けてもびくともしなかった。戸の隙間に雪が吹き込んで凍りついたのだろう。テントでよかったと言い合う。今回ピッケルは持ってこなかった。小屋の裏から改めて360度展望の山座同定に時間を忘れる。北には高松山はじめとする泥湯三山。最初に赤湯又沢を遡行したのはいつだったか忘れるほど昔のこと。沢旅を始めたばかりのころだった。野湯に泊まって翌日高松山に登って虎毛山までの長いブナの縦走路を見渡した。あの時はいつか歩いてみたいと思ったなあと懐かしむ。

東側にはひときわ聳え立って見える栗駒山が白い。手前の虚空蔵山右岸の沢筋は麝香熊沢かな。湯浜コースのブナ林がよかったなあ。山麓を取り巻くように広がるブナ林帯の世界谷地にも行ってみたい。ぐるっと回って神室連峰に目を細める。わずか1300m強の神室山から小又山、火打山の峰々が小粒ながら風格のある美しさを見せている。10年前に鉤掛森から入山して杢蔵山まで完全縦走したことは今でも記憶に鮮明でいつも季節を変えてまた歩きたいと思い続けている(どこの山にも同じことを言っている自覚がありながら、神室は五本の指に入ることまちがいなし)。冬季の神室山は最近では鬼首道路から取り付く東陵に人気があるようだけれど、もしいくなら水晶森とできれば黒森をつなげたルートで登りたいと思っている。

 

 

 

 

 

 

下山時には気温も上がり幕営地に戻った時にはぐったりとした疲労感を覚える。再び重くなったザックと強い日差しで平坦な尾根歩きでも意外と体にこたえる。須金岳は小さなポコみたいな山だからパスしようと言いながらダラダラ歩いていたらいつの間にか山頂へ。あらっ、須金岳に来てしまった。疲れて考えなしにトレースを辿って分岐を見過ごしたらしい。それほど小さい山なのだけれどなぜか須金山ではなく須金岳。自分達のいい加減さを笑いながらもおかげでパスせずに済んだと面白がる。さあ、あとはあの急斜面のブナ美林を下るだけだ。

久しぶりの東北遠征。かつて歩いた山々への郷愁がよみがえり、今年はもっと訪れたいと気持ちを新たにした山行となった。

 

 

 

寒湯沢橋10:35ー須金岳登山口10:55ー1241m15:05ー1190m幕営地15:30//7:00ー虎毛山9:00/9:30ー幕営地11:00/11:30ー須金岳12:40/13:00ー寒湯沢橋15:40