ブナの沢旅ブナの沢旅
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2024.02.28
南会津 舟鼻峠〜転石峠〜駒止峠
カテゴリー:雪山

2024年2月28-29日

2月に入り続けて好天の雪尾根歩きに恵まれた。けれどさすがに三度続くことはなく直前まで風雪警報がでていて稜線歩きは厳しそうだった。そこで山とは言えない山のブナの森歩きならば少しくらい悪天でもそれなりに楽しめるかもしれないと、峠から峠をつなぐ山旅を計画。小雪のシーズンとは言え降雪後なので様子がつかめない。行けるところまで行ってダメなら戻ればいいと気を楽にして出発した。

前夜のうちに会津田島に移動し、翌朝タクシーで舟鼻トンネルへ。去年も舟鼻峠から博士山への山旅で田島からタクシーを利用した同じ運転手さんで覚えていてくれた。舟鼻トンネルを出たところで下ろしてもらいシューで歩き始めて雪の少なさに驚くが直近の降雪で2~30センチほどもぐる。いつも何気なく乗り上げていた雪堤の先が深い切れ込みで小沢がでていて先に進めない。沢があるなんて知らなかった。ようやく雪がつながっているところを見つけ舟鼻峠の林道に乗り上げる。

林道からは脛ほどのラッセルとなる。峠の広場には新しい伐採の丸太が積まれていた。何かの工事をするのだろうか。トンネル出口でも作業中の看板がでていた。緩やかな尾根を登り再び林道が交差するところからは林道沿いのジグザグ道に進む。これだけの新雪だと急斜面の直登はきびしい。

視界はあまりないが白森山方面の樹氷の山並みがときどきぼんやり見える。そんなときは美しさに思わず立ち止まる。林道を離れ舟鼻山の山頂台地に入る。樹氷をまとったブナが晴天の霧氷とは違う神々しさを漂わせている。

最近は臆病になって晴れなければ山には入らなかった。久しぶりの小雪まうブナの森歩きがとても新鮮に感じられ、初心に帰った気持ちだと喜びを仲間に伝えたりした。舟鼻山周辺はかつて大規模な伐採が入ったと言われているが沢筋に集中していて尾根伝いは大木が残されている。

広い山頂台地からはぼんやりとしたアップダウンの地形を進む。これといった見どころもない高原台地なので読図がメインタスクとなる。時にはそんな山歩きも楽しい。視界がわるく周りの地形が見えないため慎重にコンパスを振りGPSで確かめる。とはいっても、じつは10年前の軌跡が保存してあり、いざという時は助けになるという安心感に支えられてのこと。

歩いても歩いてもブナの森。脛ほどの新雪ラッセルも苦になるほどでなく交代で進む。トレースのある大展望の山よりもどれほど心地よいことか。

 

 

 

しだいに視界が明るくなり太陽とガスのせめぎ合いとなる。歩き始めた時はこんな天候なので転石峠まで行けないかもしれない。途中で泊まって引き返すのかな、などと思ったりもしたが急に青空が広がると俄然気持ちも前向きになる。

1162m南の鞍部に下って林道の道型に乗ったところで一安心。意外と進むことができた。ここからしばらくは林道を進むが、雪が飛んだところでは古いスノーモビルの轍があったのが意外だった。どこからやってきたのか興味がわくが地図で推測するに畑小屋方面からだろうか。

1172m鞍部から尾根にのって転石峠に下った。10年前は4月中旬の残雪期で道型や湿原の地形がはっきりしていたけれど、すべてが雪に覆われ峠の位置はあまりはっきりわからなかった。広々とした雪原で仲間はここで行動を終えたそうだったが、翌日も長い工程なので気持ち前に進む。緩やかに延びる尾根はカラマツ林からブナの混合林となる。平坦になったところでザックをおろし初日の行動を終えた。

 

 

 

予報では終日曇り空だったので期待はなかったが、朝から青空が広がる。風もなく快適な山歩きとなりそうだ。緩やかな尾根は明瞭なブナの伐採林となるが大木だけは目印のように残されている。尾根が西に向きを変えると草地マークのところがだだっ広い雪原となり小さな沢筋が幾重にも並ぶ。中には早々と顔を出している所もあり、あちらこちら覗きながらのゆらり旅。顕著なランドマークの1142mは南側をトラバースしていくと湿原らしい雪原がさらに広がり駒止湿原が近づいたことがわかる。

 

 

平坦に見える駒止湿原だが小さな起伏を何度か越える。ようやく水無谷地の一角に辿り着いた時は陽も高く雪が重くなる。雪の湿原は単にだだっ広い雪原だと言ってしまえばそうだけれど、心で感じられればいい。白樺谷地を横断し、さらに今回は大谷地をまわる。ずっと雪原歩きで足取りが重く飽きてもきたけれど、二日目のハイライトで終着点なのだからと、ここでへんなこだわりを見せてしまう。

駒止湿原入口から旧道をたどり駒止峠へ向かう。重雪の林道ラッセルがこたえる。林道が沢を横切る広場はかつて峠の茶屋があった場所。田島と只見をつなぐ重要な道で悪天に遭遇したときのお助け茶屋的性格を持っていたと言われている。

 

 

 

ようやく駒止峠だ。10年前の堅雪コースタイムから当初の甘い予定では保城峠までいけるかな、なんて思ったりもしたが、早々に無理とわかりここから林道を下る。道型は明瞭なので淡々と下ればいいのだが九十九折り以外は傾斜がなく重雪の林道歩きが意外ときつかった。途中気晴らしをしてくださいと言わんばかりに展望が開け、正面に唐倉山と背後に大戸沢岳から三岩、窓明、坪入山の真っ白な山並みや稲子山以北のブナ街道、尾白山から古町丸山を見渡す。何度も通った山並みがみんな見える。春になったら唐倉山にも登ってみたい。

できるだけショートカットしながら九十九折りをやり過ごし、沢沿いを下ると国道289号線が見えてきた。駒止トンネルの開通で旧289号線はその役割を終えたが、実は旧289号線以前にさらに古い289号線が存在したという記事を読み、今はそのルートを辿ることができないかという妄想に囚われている。そんな新たな想いを引き出すきっかけとなった駒止高原山地への冬の山旅だった。

(2013年4月に同じコースを辿っているので詳細記録は割愛しました。)

 

舟鼻トンネル6:25ー舟鼻峠7:15/7:30ー舟鼻山9:30ー転石峠14:50//6:20ー水無谷地10:00/10:20ー白樺谷地ー大谷地ー駒止湿原入口12:20/12:35ー駒止峠13:30ー国道289号16:10