ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.03.20
離森〜三足一分山
カテゴリー:雪山

2023年3月20-21日

前の週に登った粟ヶ岳が思いのほか難儀したので今回はゆったりとした山旅がしたかった。こんなときは数少ない手持ちのリストから南会津や東北の山が思い浮かぶ。今の時期に朝日連峰など高嶺の花だが、月山と朝日に挟まれた前衛の山並みはとてもたおやかだ。何年か前に初めて石見堂から赤見堂を歩いて以来すっかり魅せられ、一昨年は鍋森、離森から赤見堂を歩いた。

そのとき離森から北にのびる雪原尾根の果てにちょこんと突き出た山が目にとまった。三足一分山、みあしいちぶやまだ。山名がいわくありげなこともあり心に残った。というわけで、(舟鼻峠から博士峠に続き)山とも言えない山歩き、第二弾と銘打って訪れてみることにした。離森から先はプツリと人出がないのも私たちにとっては好ましかった。(本命は別ルートだったのだが、一泊では不安があったので、あるかどうかわからない次回に繰り延べたというのが実際のところです。。。)

朝日方面は遠いようだけれど、新幹線が使えるので南会津よりも近くて便利だ。いつのまにか全席指定になった山形新幹線に乗り山形駅からレンタカーで月山第一トンネルの駐車場へ。離森は最近は人気の山らしく残雪期の週末は必ず人が入っているためトレースはしっかりついている。

雪で埋もれた沢から尾根に乗ると対岸の月山、湯殿山の開放的な展望が開ける。さらに進むと石見堂から赤見堂が姿をあらわし、さらに開放感が広がる。このゆったり感がなんともいえず心地いい。鍋森に近づくと北東方面になだらかに波打つ雪原丘が幾重にも重なって見える。明日はあの丘をいくつも越えていく。

赤見堂の奥には朝日連峰の山並みが連なる。なかなか行けない山域で、いつもこうして眺めるだけ。毎回雪の峰々を眺めるたびに今年こそは緑の時期に縦走したいと話をするのだがまだ実現しない。そして今回も、今年こそは行きたいねと言い合う。

鍋森を越え三足一分山尾根の分岐にザックをデポして離森に向かう。近づくとどっしりとした山に見える。早くも大きなクラックが二ヶ所。今年はほんとうに春の訪れが早い。山頂からは未だ真っ白な八久和ダムを見下ろす。以東岳が意外と近く、はるか奥に大朝日岳を遠望する。

ひとわたり展望を楽しんで尾根分岐まで下る。ここからはトレースのない雪原尾根に進む。至る所がテン場適地ながら、より快適性と好展望を求め、最初の平を越えた広い鞍部でザックを下ろした。風もなく穏やかな夜だったが、二週間前の山が十三夜だったのに比べると月はちょっと寂しかった。夕日が沈み始めると日本海が光り、夜は鶴岡方面の庄内平野の灯りが煌めいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝は日の出とともに出発する。まさに雪原砂漠といった風情で、思わず、月の砂漠を〜遥々と〜♪が頭を駆け巡る。一見変化がないようにも見えるが、ひと平越えるたびに朝日の展望が移りかわり、鳥海山も昨日よりは明瞭に見渡せる。わずか1100~1200mの丘陵なのにさすがに積雪は多く、雪庇の厚みも貫禄がある。

一見緩やかなのに雪庇に阻まれ進路を工夫するところもある。私たちにとっては緊張しなくても飽きることなく歩けるのがいい。何度も立ち止まり周りの景色に見惚れたり写真を撮ったりしても、標高差は少なく雪は締まっているので意外と順調に進む。

三足一分山が近づくと、最後の平だけはブナ林に覆われている。最後は緩やかな登りとなり雪庇の張り出した山頂に導かれる。まるで月山に向かってダイブするような感覚となり、先端までは怖くて進めない。わずか1123mの三足一分山にやって来た。

北側には月山ダムが近く、雪で覆われた林道も見え人里感がある。きっと鶴岡側からは違う姿で聳えているのかもしれない。それにしても三足一分山という山名の由来は、この山にやって来る誰もが知りたいと思うところ。けれど調べてもわからないようだ。帰路に志津温泉に立ち寄りご主人に尋ねてみたがやはりわからないという。

高山の山頂をきわめるような達成感とは違うけれど、あまり人が入らない朝日前衛端っこの小さな山(三角点はあるらしい)への足跡が、自分らしいと思えた山旅だった。

 

 

 

 

 

 

同じ道を辿って出発点に戻った。

 

 

月山第一トンネル駐車場10:30ー鍋森14:20ー離森15:15ー幕営地15:50//6:05ー三足一分山8:00ー幕営地ー駐車場14:40