ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.03.17
粟ヶ岳
カテゴリー:雪山

2023年3月12日

いつか残雪期に白山から粟ケ岳を歩いてみたいと思っていたので越後のsamさんから山行の誘いがあった時にリクエストしたのだが、やはり今の時期に一泊では厳しい。そうこうしているうちに二日目に雨予報となってしまい日帰りで権ノ守周回に落ち着いた。

長いコースなので長岡駅のビジネスホテルに前夜入りして翌朝は3時半集合。加茂方面に向かうが沿道には雪が全くない。水源地の車止めから歩き始めてすぐに取り付きの尾根を見るが雪が皆無。これじゃあ藪漕ぎになると、さすがのsamさんも諦め林道をさらに進んで取り付けそうな谷筋や尾根を見るが、状況はいずこも同じ。

第二貯水池からさらに林道を進んで大俣登山口方面へ向かうと渡渉点の沢は雪解け水で増水し流れも早い。こんなところの渡渉は無理だとうろついて、ようやく素直に中央登山口から粟ケ岳往復するしかないと、当初の大風呂敷から普通の常識的な登山となった。

14年前に初めて登った時は雪がたっぷりあり、それなりのアップダウンも悪い印象はなかった。砥沢ヒュッテに泊まり翌日北峯から山頂への登りがとても美しく印象に残った。けれど今回は様子がまったくちがっていた。中盤のミニジェットコースターのようなアップダウンはトレースあっても細くて緊張した。なにしろ三日前まで南会津の丘陵地のような山歩きだったので体が慣れていない。尾根両側の枝尾根や谷筋は雪が禿げて黒々している。

samさんとは久しぶりの山行なので、あれこれおしゃべりをしながらの山登り。最近の山岳会のこと、ネットやSNS時代の個人登山者の山行などに意見を言い合う。もちろん自分のことはさておいて、なのだが、時に辛口トークにもなる。さらに共通の話題はやはり親の介護問題。もう私たちは老老介護の域に入っている。

それでもヒュッテについて山頂を見渡せば、やはり川内山塊の盟主たる貫禄十分。藪が出ていたりクラックが入っている。やはり遅かった。前回は2月初旬だった。川内山地の展望が出てくると以前登った矢筈岳や青里岳方面が広がり楽しい。かつては地図を広げてはあれこれ妄想を膨らませたりしたが、今では矢筈岳の思い出を美しいままに胸に収めておきたいと思うだけだ。

一本岳を見下ろすと南側は雪が落ちている。最初は白根山から粟ケ岳も面白そうと思ったりしたけれど私の足と技量では日帰りは無理だろう。守門方面が意外と近いのに霞んでいる。南会津から粟ケ岳を何度も眺めてきた。日曜日ながら登山者はおらず山頂で単独者がやってきただけ。みなさん前日の好天日に登ったのだろう。日曜日は曇のち下山途中から青空だった。ヒュッテに戻るが小屋に入るにはアイゼンを外すのがめんどうで、雪に埋もれた小屋の屋根をベンチがわりにランチタイム。

下山は往路をもどる。大俣登山道の方が楽だけれど渡渉ができないので仕方ない。またあのいやらしいアップダウンを繰り返すのかと思うと気が重かったが仕方なく諦めの境地で黙々と歩く。そんなわけで行きも帰りもたっぷり時間がかかり最後は疲れきって下山した。水源池手前の小沢の水がおいしくて生き返る心地だった。

なんと11時間行動の1日となってしまった。美しい思い出の粟ケ岳だったが、雪山は時期がずれると行動時間も印象も大きく変わることを実感した。ちょっと期待とは違っていたが、白山から粟ケ岳は無雪期の新緑か紅葉の時期に歩いてみたいという思いは変わらない。