ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.02.12
横山〜神籠ヶ岳
カテゴリー:雪山

2023年2月11-12日

連休直後に親睦山行を予定していたので当初は連休の計画はなかった。けれど、久しぶりの好天予報を見逃すのが惜しくなり、軽く雪を踏みに行くことにした。名の知れた山はどこも人出が多いだろうが、南会津の里山ならきっと静かな山旅ができるはず。経験的に休日の会津行き列車は満席になることが多いのだが、キャンセルでも出たのか直前にもかかわらず最後2席だけ残っていた。これで山行が決まった。

横山は、どこにでもありそうな平凡な名の登山道のない低山ではあるが、雪山を始めたばかりの15年ほど前に初めて訪れたとき、淡い霧氷の森がとても印象的だった。あの時は平たい山頂の一角を覗いただけ。その後数年して舟鼻峠から緩やかな高原台地を彷徨いながら横山に至り、神籠ヶ岳へ向かった。あれからもう10年。またあの霧氷の森に出会えるだろうかと、淡い期待を抱いて山へ向かった。

ルートはいくつかあるが、積雪状況がわからないので前回同様一番確実な茂峨沢右岸尾根を使うことにして会津下郷駅からタクシーで麓の中山へ向かった。赤城神社は15年前よりも明るく綺麗になっていた。お参りをして裏の尾根を登る。最初は伐採二次林の雑木林だが傾斜は緩く歩きやすい。1100mを越えるとブナの二次林となり、さらに登って1313mポコの鞍部に近づくと尾根が広がりブナの大木が見られるようになる。展望が開けたところでは真っ白な二岐山が美しい姿を見せていた。

1350mの境界尾根に近づくと霧氷の樹林帯となる。曇っているが久しぶりに目にする霧氷のブナ林に気持ちが高ぶる。東西に1500mほど続く(「会津の峠」より)横山の山頂台地を進むと霧氷の厚みが増していく。同時に曇りがちの空に青空が広がり始め、霧氷の美しさが際立つ。まさに有頂天とも言えるような気分だ。地図上の山頂付近になると霧氷というより樹氷が重苦しいほどになる。登山道のない山で山頂標識はいつも見当たらないが、そんなの関係ない。。(昔、そんなキャッチフレーズの芸人さんがいたっけ)

霧氷の森でテントを張りたいと、少し戻って場所を探す。どこでもいいのだが、欲張ってさらにいい場所を求めてうろつく。平坦で北側の展望がひらけたところでザックをおろす。神籠ヶ岳に向かう尾根もすべて霧氷で覆われている。翌日は朝から晴れ予報なのでなくなりはしないかと盛んに気を揉む様子を、仲間はおかしそうにその都度大丈夫だよと気休めをいう。

土曜日は麓の大内宿の雪まつり最終日にかさなった。以前大白森を強風で撤退して小野岳に転戦し、麓にテントを張ったのがちょうど雪まつり最中で、夜テントから花火が見えて喜んだことを思い出す。ひょっとしてまた見えるかななんて思ったが方角がずれていた。6時頃に遠くでドーンという音だけが聞こえた。あとで地元の人に聞くと大盛況だったようだ。北東方向の集落の灯りがチラチラと点在し、冬の夜空でいつも探すオリオンを確認してシュラフにもぐった。

 

 

 

 

 

 

朝はかなり冷え込んだがテントは結露もなく乾いていた。いつものようにのんびり朝食をとり7時過ぎに出発する。朝から快晴だが、夜中にそれほど風もなかったのに霧氷は早くも薄くなっていた。横山の東の肩まで戻り神籠ヶ岳に続く尾根に下る。日当たりがよく、すっかり春めいた雰囲気に変化する。二岐山以南の那須の山並みが淡い墨絵のように連なり美しい。

ゆるやかに小さなポコをいくつか越える。こんな低山でも尾根筋は厚みのある雪庇が張り出している。1381m直下で息を切らしながら急斜面を登ると雪原広場のような山頂にいたる。無名峰だが神籠ヶ岳よりも標高は5mほど高い。展望もひらけ、目の前には博士山と後ろに志津倉山が近い。振り返ると横山がゆったり大らかな姿を見せている。はるか彼方ではあるが、浅草岳から村杉半島の山並み、会津朝日から(頑張って目を凝らして)丸山岳まで続いているのが見えたのは意外だった。

ここでトレースがあらわれた。1381m東尾根から登っているようだ。展望と一渡りの山座同定ののち神籠ヶ岳へ向かう。最初に注目したのは山名に惹かれたからだったと思う。けれどこれで3回目ともなると気持ちも幾分すれてきて、横山のようにブナの山でもなく、どうということのない平凡な山頂だ。磐梯山と猪苗代湖を確認したのち下山路を相談する。

当初は反射板のある東尾根から大内宿近くに下るつもりだったが、あまり快適な尾根ではない。一方トレースは1381mからピストンで下っている。ということで、まだ下ったことのないトレースのある尾根を下ることにした。戻り始めるとスキーパーティが次々と登ってきた。きっと地元の人たちだろう。何人目かの人に声をかけると会津山岳会だという。やはりそうだった。1381mポコに戻ってザックを下ろし、お湯を沸かしてとっておきのお汁粉をつくってくつろぐ。

そのうちに山岳会の人たちも戻ってきた。みなさん神籠ヶ岳はついでに立ち寄る山のようだ。会津山岳会ならばもしかしてと思い、青いラガーシャツの男性に声をかけたらやはりKさんだった。10年ほど前に合同パーティで山行を計画したものの悪天で転戦となり、その際に泊めてもらったことがあった。1月に窓明山に行きましたよねと「ブナの沢旅」の記録を読んでくれているとのこと。わたしもKさんが毎年冬に横山に通っていることを年報で拝見していた。ふだんは平日山行が多いので人に会うことはないのだが、好天の休日だと人と出合う確率が高くなるのだと感じた。

下りはトレースを追うだけなので気楽だった。しばらくは快適な尾根下り。所々の急斜面をスノーシューのまま下るのは難儀だったが1時間半ほどで車道に下り立つことができた。今回は日帰りのコースをテント泊でのんびり歩いたのが功を奏し、タイミングよく初日に霧氷のブナ林散策を楽しむことができた。

 

 

 

 

中山10:40ー1313m鞍部13:40ー横山15:20ー山頂幕営地15:40//7:00ー1381m10:25/10:45ー神籠ヶ岳11:20ー1381m11:50/12:40 ー北東尾根ー車道14:10