ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2022.03.24
山毛欅沢山〜城郭朝日山
カテゴリー:雪山

2022年3月24~26日

遠い南会津でゆったりとブナの山旅をするには三日ほどほしい。それでも往復の移動を割り引けば実質二日となる。今シーズンは諸条件があわずに延び延びとなっていたが、ようやく行くことができた。城郭朝日山は今回で3回目であり、一昨年と去年も計画しつつ時間切れや強風で中退した。

城郭朝日山は坪入山から北にくねくね続くブナ尾根のいわば北端の山で、窓明山からも意識して目をこらすと山頂のちょこんと白い三角錐が見える。会津駒から丸山岳につながるメインストリートの主稜線から見れば取るに足らない地味な低山だ。それほどこだわりを持つ山なのかと聞かれればそうでもないのだが、到達するまでの山歩きに思い入れを感じている。もちろん山頂に登れば今まで得られなかった会越方面の山並みが一挙に広がり、低山ながらも360度の展望が楽しめる。

スキーシーズンも終盤なのか会津高原尾瀬駅からのバスは閑散としており、たかつえスキー場で単独のボーダー客を降ろしてからはいつものように貸切状態となった。鳥井戸橋で下車して深瀬沢の鉄板橋を渡ると私たちの南会津ブナの山旅が始まる。雪は締まっており、その上に前日の新雪がきれいに乗っているという理想的な状態だ。870mからの痩せ尾根の急登も凸凹が均されていて比較的楽に越えられた。尾根が北西に向きを変えると緩やかなブナ林の広尾根となり順調に高度を上げていく。

しばらくは青空が広がっていたが3時近くなると曇り空から雪が降り出した。夕方から崩れる予報だったが早まったようだ。1300mを越えると雪原台地のような広尾根となり、しんしんと雪降るブナの森を歩く雰囲気となる。もちろん視界は悪いけれど翌日の晴れを信じているので気持ちは明るい。予想以上に順調に進み、山毛欅沢山の稜線には4時少し前に到着。見なれた景色を目の前にして、また今年もやってこれたと思う。ここからはブナ街道を北上する。積雪が多いようでブナの背が低く見える。

できるだけ進んだ方が翌日のためにはいいのだけれど吹雪いてきたので風が弱そうな場所を見つけてザックを下ろした。風と雪の吹込みでテント設営も一苦労だったが、ない知恵を働かせて全てをテントに収めた時はホッと一息。こんなこともなんだか楽しい。吹雪いているのにそれほど寒くはなく冬のテントでは寒々と飲むことが多いビールが美味しかった。

 

 

 

風雪は夜中に止んでおり、静かな朝だった。これまではテントをそのままにして空身で城郭朝日山を往復したのだが、体力的に従来通りにはいかないためテントを担いで進むことにした。ブナの大木が並ぶ美しい雪尾根を歩くのはほんとうに気持ちがいい。昨日は悪天で展望がなかったが、時折三岩岳から丸山岳につづく主稜線の展望がひらける。去年はあの白い尾根を歩いていたんだなと思う。最初の頃は一般的な残雪期に歩いていた。それなりに快適な山歩きなのだが、低潅木をすっぽり覆い隠す雪尾根の美しさを体験してからは2-3月をシーズンにしている。

ずんぐりした恵羅窪山でようやく目指す城郭朝日山の白い三角錐が見えてくるが、とても遠くに感じられる。けれどすてきなブナの森はさらに続く。一昨年は1446mまで逍遥し、山の姿を間近にして引き返した。なので今年はたぶん最後だろうからと固い決意でやってきた。

まずは大きく下って1353mのポコを越える。尾根が細くなるが今までとかわらない。この先で残雪期には藪となる針葉樹林の小峰を二つ越える所で勝手が違ってくる。雪はつながっていて藪は出ていないが尾根上は雪庇のでこぼこで通過できず西側斜面をトラバースし、急斜面を下る。アイゼンとピッケルで通過するがいつも緊張するところだ。

1386mピークからは雪庇に気をつけながら雪尾根の斜面を登る。この辺りからブナは伐採二次林となり只見黒谷の山となる。以前会津朝日岳手前の沼ノ沢山に登った時、麓の集落からも城郭朝日山が顕著にそびえており、只見の山なのだなと感じた記憶がある。それでも山頂に近づくと伐採されずに残った古いブナが点在し、真っ白で丸い山頂に導かれる。もっと上まで行きたいがどこまでが雪庇かわからずに怖いので適当なところで登頂宣言。

今まで見えなかった会越国境の山並みが広がり爽快なのだが、空が霞んでいてはっきりと山座同定できないのが残念だ。それでも浅草岳は意外と近く、会津朝日岳から丸山岳に続く稜線に目をこらす。真ん中の大幽朝日岳がとんがって見える。あの尾根を歩く機会はないだろし今は未練もないけれど。。行けたらいいなあと今でも思う。城郭朝日山からさらに北に延びる尾根には地図で予想できるように幾つかの小峰が連なっている。雪がついているしそれほど悪そうにも見えないけれどどんなだろう。あれこれ思いは尽きない。

時間は今まで以上にかかったけれどようやく思いを遂げることができたと喜んで山を下る。行きにいやらしかったところは雪が緩んだこともあり難なく通過。行きには、いいなあ〜なんて余裕で歩いたブナの広尾根であったが、帰りの後半になると疲れてきた。すると今度は、まだ続くのか〜(もう沢山。。)なんて我ながら勝手なものだと思いながら恵羅窪山を越えたデポ地に下った。

陽はまだ高い。二日目は今年初めての焚き火ができないかと期待していた。まだ焚木が得られるほど枯枝はなかったけれど、なんとかかき集めた。ところが風が出てきた。さらに疲れて横になりたくなってしまった。あっさりと焚火は諦め翌朝に延期。いつもの夕餉を迎えたがあまり食べることができなかった。最近テント泊でよくあることなのだが、これもそろそろ終盤のサインなのかもしれないとちょと悲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく眠って朝を迎えた。三日目は下山だけなので朝はゆるりと時間を過ごし昨日諦めた焚火をした。小さな焚火で単に集めた枯枝を燃やした程度だったが、すぐに火がついて煙が広がると懐かしい焚火の匂いに包まれる。やっぱり焚火は良いな。今度はもっと手軽な山に焚火をしに行きたいと思う。

昨年は強風であっさりと二日目に撤退を決め、山毛欅沢山に登って下山した。春の気配が見られる山毛欅沢山を横目に幽ノ沢右岸尾根を下る。高曇りながら視界は良好で三岩岳方面や枯木山から大嵐山の稜線、土埋山などの展望を楽しみながらも下りは早い。午後一のバスには時間が余るので目処がついた所で時間調整をしようとお湯を沸かす準備を始めた所ポツリポツリと雨の気配。雪はともかく雨はさけたいので予定を変更してタクシーを手配して下山した。

予定外の出費となったがタクシーに乗り込む頃には本格的に雨が降り出した。電車の時間を調べると最初から当てにしていなかったリバティに間に合うかもと運転手さん。頑張ってくれてjust in timeで飛び乗ることができた。なんとか工面した三日間。久しぶりに飽きるほどどっぷりとブナの山歩きに浸ることができた山旅となった。

 

 

 

鳥井戸橋11:00ー山毛欅沢山稜線15:55ー1500m幕営地16:15//6:05ー1404m鞍部幕営地(デポ)ー恵羅窪山8:35ー城郭朝日山11:45/12:15ー1404m鞍部幕営地15:45//7:00ー山毛欅沢山下9:00ー鳥井戸橋12:15