ブナの沢旅ブナの沢旅
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2022.02.28
舟鼻山〜御前ヶ岳
カテゴリー:雪山

2022年2月26日

2月最後の土曜日(26日)は約束されたような好天の一日。けれど一日だけなので久しぶりに前夜泊で好天の一日をフル活用することにした。さてどこに行こうか。好天の週末でも静かな山歩きが期待でき、ブナの森があってラッセルもそれほど大変ではなさそうで日帰りできる南会津の山。いくつか浮上した中で、一番地味な舟鼻山周辺に落ち着いた。

起点となる舟鼻峠はブナの沢旅にとっては思い入れ深い峠。最近は、舟鼻峠から駒止湿原を通って七ヶ岳まで縦走した山旅をもう一度なぞってみたいという話を折につけて口に出していた。今回は日帰りだけれどあの時の雰囲気を思い出したいと、舟鼻山から(ついでに)御前ヶ岳を歩いてみることにした。このコースも8年前に歩いている。悪天候のためガスで霞む幻想的なブナ林の山歩きが印象に残った。そんな山を青空の下で歩いてみたいとも思った。

前夜のうちに田島に移動し、早朝現地に向かった。最初は道の駅で仮眠の予定だったが高齢化を理由に楽をしようと個人経営の小さなビジネスホテルを利用した。翌朝舟鼻トンネルに向かうが、今年の大雪でトンネル脇の駐車スペースが確保できるかどうかが気がかりだった。なんとかスペースはあったが除雪車がやってきて、ここには駐車できないからと別の場所を指示されそれにしたがった。

スコップで雪壁に段をつけて這い上がると舟鼻山は霧氷で白くなっていた。太陽が昇り、早く行かないとはかない霧氷が消えてしまうと、はやる気持ちを抑えて舟鼻峠へ。まっさらな雪面に陽の光が影をおとした峠の広場に懐かしさがこみ上げてきた。カーブミラーがあったはずだが雪に埋もれているようだ。すぐに通り過ぎるのが惜しくてしばらくたたずみ、さあ出発。正面のゆるやかな広尾根を登っていくと次第に森が霧氷で白くなっていく。

林道横断点を越えると傾斜が増してくるがショートカットで直登し再び林道へ。ここからは傾斜がさらに増してくるためトラバース。以前は雪が締まっていて緊張させられたが、深雪のため安定感があった。北面の景観も開けて眼下に峠の反対側にちょこんとそびえる白森山と奥に博士山が見える。短いコースなので早くに下山できたら白森山にも登ってみようかなどと言っていたのだが。。。

 

 

 

 

 

林道がカーブする付近は傾斜も緩み奥に雪原台地が広がる。もう舟鼻山山頂と言ってもいいほど真っ平らな山だ。ここからはブナの森を逍遥する気分となる。大まかな方向だけを決めて目に止まったブナに立ち寄ったりと回り道しながら進む。日差しが強く早くも霧氷がとけ始めている。出発の車移動の30分のロスタイムが今となっては恨めしいが、それでも朝日にきらめく白い森を歩く幸せを十分に感じながら地図が示す山頂に向かう。

ブナ林を抜けるとだだっ広い無木立の雪原となり運動場のようだ。もちろん標識などはない。あっても埋もれているのだろう。南に七ヶ岳の峰の連なりが見え、奥には荒海山や大嵐山方面の山並みだろうか。南東には那須連山が霞んで見えるが、ここは展望を楽しむ山ではないのでさっとやり過ごす。

 

 

 

 

木陰で一服したのち御前ヶ岳へ向かう。前回は周囲の視界がなかったため、ひたすらブナ林を歩いて最後ちょっと登ったという記憶しかなかった。ゆるく尾根を下ると林道交差点らしいがそれらしい道はわからない。小さなポコを幾つか越えながら広い尾根をコンパスで方向を確認しながら進む。一段上がったポコからようやく目指す御前ヶ岳が見えてきたが、随分と遠くに感じられる。

1174m付近の台地からは南西に会津駒から連なる山並みが浅草岳方面まで続いて見渡せたのが意外だった。伐採林が多いが、ところどころ大木が残されていてアクセントになっている。雪が緩み始めて重くなる。ようやく最後の登りに差し掛かる。高低差は80mほどだが重雪ラッセルで時間がかかる。付近は伐採が入らなかったようで原生林が広がり雰囲気がいい。

傾斜が緩んで山頂へ。東側は雪庇が張り出し近づけないが博士山と手前の志津倉山方面がクリアだ。どちらもブナの山で積雪期に昨年、一昨年に登っている。南西には独立峰の燧ヶ岳から始まるおなじみの山並みが続く。思ったより展望がある山だった。

御前ヶ岳は登山道のない山だと思っていたが昭和村観光協会のHPには御前ヶ岳の登山情報が掲載されており西側の畑小屋から登山道があるようだ。「御前」という名称がつく山の由来は、近くで言えば御前ヶ遊窟など、だいたいが古の高貴な人の伝説があるけれど、御前ヶ岳も例外ではないらしい。「都落ちした高倉宮以仁王を追った妃の紅梅御前と付き人の桜木姫が住んでいたという伝説に由来」する、と。そういえば、八十里越えにも高倉宮居住跡なる地点があったが、越後に落ち延びる道中でさまざまな伝説が生まれているのだろう。(https://showakanko.or.jp/see/gozengatake/)往復2時間半ほどらしいので機会があれば無雪期にも立ち寄ってみたい。

山頂の真ん中で雪を踏み固め昼食の準備。といってもカップ麺だけれど、食後のコーヒー&デザートと、あれこれ楽しく一時間ほど居座ってしまった。最近はこんな風にのんびりするハイキングが楽しい。

 

 

 

 

 

さあ、あとは来た道を戻るだけだと思いきや、午後の腐れ雪で意外と時間がかかる。不思議なことに舟鼻山までもどると雪質が変わって朝とそれほど変わらないサラサラ雪。時折トレースを離れてショートカットしながら林道トラバース道へもどる。三引山から横山〜神籠ヶ岳を遠望し、かつて歩いた記憶を呼び覚ます。急斜面をこわごわやり過ごして峠に戻れば早くも陽が落ち始めている。長い一日となったけれど、久しぶりの懐かしい山歩きができて嬉しかった。

 

 

 

舟鼻トンネル6:45ー舟鼻峠7:15/7:30ー舟鼻山9:35/9:50ー御前ヶ岳12:15/13:15ー舟鼻トンネル16:00