ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.11.15
玄倉川檜洞(沢)〜石棚山稜
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2021年11月12-13日

沢シーズンを終える前に焚火がしたくて、8年ぶりにゆったり感が好印象だった檜洞(沢)へ。いまは玄倉林道が通行止めのためユーシンへは寄から雨山峠越えをしなければならない。アプローチが厄介だが、そのため入渓者も少なく静かな沢歩きを楽しむことができた。

バスでは不便なので渋沢駅から寄大橋までタクシーを利用したところ、中山峠越えルートを走って以外と近く料金も4000円かからなかった。殺伐とした寄川沿いから雨山峠までの登山道はわかりにくくコースタイムを大幅にオーバーしてたどり着いた。雨山峠は10年ほど前に檜岳から山神峠を越え玄倉にくだったことがあったのだが、その時の記憶よりも随分と崩壊が進んでいるようだった。

雨山峠へは最後のナメ沢歩きが唯一快適で楽しいところ。ベンチにホッとへたり込むと爽やかな風が吹き抜けて気持ちがいい。まだ先は長いのに一仕事終えた気分となる。標識にはユーシンへの登山道は通行止めの紙が貼られていた。実際には手入れをされていて崩壊箇所には階段が付け替えら問題なかったが、一般登山道としてはかなり厄介だと思った。昔は沢沿いの雰囲気のあるいい峠越えの道だったのだろう。古い石積み堰堤をたくさん見下ろしながら最後は長い桟道から玄倉林道におりたった。

林道には厳重なゲートが敷かれ、通行止めの期間が2022年4月まで延長になった旨の看板が立っていた。本来ならば、本日11月12日までで解除予定だったらしい。ユーシンロッジへ向かう途中林道がごっそり崩落している箇所があった。歩くことはできるが、ここはもう修復できないのではないかと思ってしまうほどの凄まじい崩落だ。

ユーシンロッジはもみじの紅葉に彩られ静かな佇まいのままだった。草が生い茂る円形劇場風の前庭ベンチで休憩がてらくつろぎ、ようやくユーシンまで来たと安堵する。ロッジ裏の山道を進んで取水設備脇から鉄橋を渡って堰堤を越え沢におりたつ。ここまでなんと4時間半!

 

 

 

 

入渓まで時間がかかったが、日の長い季節には日帰りで歩かれている沢だ。860m二俣付近でテントサイトを探すつもりなので余裕たっぷりな気持ちで歩き始める。すぐに4m滝があらわれトラロープをたぐって左岸の岩棚に乗り、へつって越える。つづくCS滝は一見取り付けそうもなく見え、初めての仲間は不安そうだった。経験済みなので前回の登り方を説明し、今回はザックを背負ったまま仲間のショルダーで左壁から越え補助ロープで後続を確保した。

魚止の滝は水量が少ないせいか釜が浅く、綺麗なブルーがみられなかった。ここは左から高巻くと上部にはトラロープがかかっていた。テープの巻かれたやせ尾根の下降点を見下ろすと急斜面なのでロープを出してクライムダウンした。すぐに大岩わきの傾斜のあるナメとなり、魚止滝よりも迫力がある。ここは左側のバンド伝いに越えると穏やかな川原となりひと心地つく。

檜洞の見所は二俣までに集中しているので、仲間にはあとは何もないからね、と安心してもらう。二俣手前の幅広ナメ小滝に続いて「吹き割の滝」と呼ばれている前半のハイライトともいえる美しい渓相に迎えられる。このあたりはとても丹沢とは思えない、とは前回も思ったことで、仲間もしきりに感激している。ゆっくり焚火をしたいので、ここで行動をおえることにした。ユーシン沢出合付近でテン場を探すと左岸台地に焚火の炉がある落ち葉でフカフカの好物件を見つけた。

薪木も豊富に集まりあっという間に火熾しができた。最近は沢の楽しみにしめる焚火の要素が強くなっている。だんだん歳を重ねて沢もゆったりと過ごしたいという気持ちが強くなっているからだろう。そのうち焚火だけのキャンプでも楽しめそうだと言い合う。日が暮れるのが早く5時を過ぎると暗い。焚火の向こうに月がでて暖かい夜だった。

 

 

 

 

 

翌朝も焚火を起こし、前夜の鍋の残りで雑炊をつくって火にあたりながらゆったりと朝食とコーヒータイム。出発は7時半をまわっていた。出合からしばらくは幅広ナメとブルーの釜を持つ小滝が続くが、その後は大岩ゴーロとなる。といっても檜洞の大岩はどれも真っ白でゴーロなのにきれいで雰囲気がいい。これは玄倉川の岩の特徴で、下流でもみな同じだ。

時に迷路のような大岩帯に行く手を阻まれたりと、これも楽し。日が差し始めると大岩の白さがさらにきわだつ。有名な平らな一枚岩をこえ時々あらわれるトイ状の滝を見下ろしながら進む。緊張感のかけらもない、まったりとした沢歩きに、いいねえ〜と言いあう。シーズン終盤にふさわしい光景だ。ザンザ洞出合手前の左岸に広い台地があったのであがってみたが、岩がゴロゴロしていてテン場としては今一つか。

最後の見所は奥の魚止滝につづく多段の幅広ナメ滝だ。もう少し早い時期ならば紅葉も残っていてもっと見栄えがしただろう。3段目まで上るが最後はちょっと手がでない。左岸の斜面に上がると明瞭な巻き道があった。さらに小一時間ほど大岩ゴーロとナメを繰り返す沢を進むと荒涼とした川原が広がる1160mの二俣となる。ここからは左の経角沢にすすむ。すぐに左岸から金山沢を合わせ小さな台地が見える。前回テントを張った場所だ。えぐれて削り取られ半分くらいになった様子に驚く。もともと崩壊が進んでいる雰囲気のところだったが、たぶん一昨年の台風19号でさらに崩壊が進んだのではないだろうか。

淡々として進むと次第にもとの沢の雰囲気となり、予想外にもナメ滝が続く。一箇所大木の倒木があったが、倒木でぐちゃぐちゃということはない。これも台風でみなクリーンアップされたのかもしれない。すぐに中ノ沢乗越に抜ける沢が出合う。すでに水枯れしているが苔蒸して両岸が広く開放的で雰囲気がいい。最後は藪もなくすっきりと登山道に抜けた。

 

 

 

 

 

中ノ沢乗越からは石棚山稜の登山道へ向かう。落ち着いた雰囲気の静かな登山道が好ましい。ブナの大木を見下ろしながらゆるやかな小道を進みユーシン分岐の標識とベンチのある尾根にでた。つつじ新道分岐までも近く、こちらからくだった方が時間が短いのだが、この段階では予定のバスに間に合うだろうと好きなブナ林がある石棚山稜を下ることにした。

石棚コースは登ることが多く、くだりで歩いたのはほんとうに久しぶりだった。石棚山まではよかったのだが、濡れた沢装備で重くなったザックでアップダウンの激しい登山道をくだるのは予想以上に大変だった。自分の判断の甘さを後悔しながらコースタイムを大幅に超えて箒沢自然公園バス停にたどりついた。

アプローチと下山が思いの外大変だったけれど、檜洞の沢は渓相がゆったりと美しく、心休まる沢歩きと焚火ができたことが嬉しかった。玄倉林道が開通する来年の新緑の季節に再訪したいと思った。そして次回は下山路を工夫してみよう。

 

 

沢名は檜洞で、洞が沢を意味するので檜洞沢とする必要はないのだが、山名と区別するためカッコ付きで檜洞「沢」とした。

寄大橋8:00ー雨山峠10:40/10:55ーユーシンロッジ12:10/12:25ー入渓13:00ー860m二俣15:00//7:40ー経角沢11:00/11:15ー中ノ沢乗越12:00/12:20ーユーシン分岐13:00ー箒沢自然公園バス停16:15