ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.11.09
西上州 市ノ萱川道平川
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2021年11月5日

11月に入り沢歩きもそろそろ終盤を迎えつつある。あまり濡れたくない晩秋になると西上州の沢が思い浮かぶ。昨年は11月に碓氷川本流と谷急沢へ行った。紅葉もちょうど見頃だろう。朝発でも無理なく周回できる短めの沢でまだ遡行したことのない沢。ということで道平川を選んだ。

もとは10年ほど前から故ひろたさんが新規開拓し紹介した西上州の幾つかの沢の一つで、いずれも遡行距離は短く、その上それほど大きな滝もないためか従来は遡行対象にならなかったマイナーな沢だ。けれど最近の沢愛好者のすそのの広がりにあわせ、関東近郊で短かくて難易度も高くない日帰り沢がガイド本にも掲載され、新規性を求める人たちのニーズにもマッチして遡行されている。

西上州の中でもあまり馴染みのない山域だったが、軽井沢から車で数十分ほどで道平ダムのある荒船湖沿いを南下して林道ゲート前に駐車。以外とスムーズだった。沢沿いを歩くとすぐに二俣となり、ここから左俣に入渓する。しばらくは大岩ゴーロ帯で側壁が高いため日もささず薄暗い。

一見威圧的なゴルジュがあらわれ、情報がなければ怯んでしまうところだが、中は穏やかなナメで楚々と水を流している。出口のチョックストーン滝に取り付く気はせず右岸の大岩から乗り越すがひと苦労だった。

あいかわらず側壁は高いが次第に両岸が開け威圧感はない。頭上の自然林には日が差して紅葉がはえる。しばらくは穏やかな渓相がつづき紅葉と側壁とナメのコンビネーションを楽しむ。柱状節理の側壁は首が痛くなるほど見上げる高さで、その上に紅葉の木々が広がる光景はとても美しい。ナメも柱状節理の壁を沢床にしたような形状がどこまでも続き、それが日の光で眩しいほどにきらめく。私にとって、これが道平川のハイライトだった。

 

 

 

 

 

790mの二俣は両門の滝となり、左の枝沢には5mハング滝、本流には6m滝がかかる。れいの滝だなと、のぼる気満々。一見すると手足はたくさんあるし仲間も登れそうとのことだったが、念のためロープを引いて登る。上部は乾いた右側の方が登りやすそうだったが、調子にのって最後は水流沿いを這い上がった。支点となる細い木が一本だけあり、ロープを使用した人が必ず使用するためか確保支点あたりの高さの木の皮が擦り切れ剥がれていた。

その後はふたたび平凡な沢となる。5mほどの滝がいくつかあらわれるが、登れない滝の巻道は明瞭だ。源頭部は枝沢が多く慎重に方向を確認しながら進んだ。すでに水も枯れ苔蒸して広々とした庭園風の光景となる。忠実に沢を詰め、最後は鹿道に沿って支尾根から稜線にでた。

 

 

 

 

 

 

トヤ山に立ち寄るために西へ数分踏み跡を辿って登る。1220mと小さな山だが切り開かれているためほぼ360度の展望だ。やはり北側の妙義の山並みのギザギザが目にとまる。眼下には荒船湖が近い。地図をみると登山道のある山がたくさんあるのだが、私にはどれがどれだかわからない。そういえば、西にある毛無岩には山の会に入会した年に登ったことがあった。とにかく紅葉に染まった山々に囲まれた気持ちのいい山頂で半時間ほどのんびりする。

 

トヤ山から戻ると痩せた急斜面の下りとなり冷や汗をかく。沢よりも怖いと泣き言を言いながらやり過ごすと古い標識があらわれ、正規の登山道となる。標識の一方は荒船山を指していたのが意外で、ここから歩ける距離にあることを改めて知った。一般登山道になってからは手すりの階段があらわれたり、鋭い突起は巻いたりと快適なプロムナード。紅葉が美しくこの登山道を歩いただけで幸せな気分に浸ることができた。

右俣の下降点には古いテープがあった。以前は標識が立っていたらしい。ゆるやかな源頭には薄い踏み跡もありどんどん下る。両岸のどちらかが緩い斜面なので沢におりず適当に斜面をトラバースしながら下る。傾斜が緩んで沢床が広がったところで沢に降りるとすぐに左手に林道があらわれた。あとは広い林道を紅葉と岩峰を愛でながら歩いてゲートに戻った。

 

 

林道を下り、ちょうど左俣と一番近くボトルネック状のところに山道の階段があった。帰宅後調べると山道をたどると小さな素掘りトンネルがあり左俣に抜けられるらしい。左俣は最初が大岩ゴーロで時間がかかったため、もし季節を変えて再訪(たぶんないだろうけれど)することがあれば、右俣沿いの林道から山越えをして左俣に下りたら面白いかもしれない。

林道ゲート930ー二俣入渓9:35ー(左俣)ー790m二俣(両門の滝)12:00ートヤ山13:50/14:15ー右俣下降点15:00ー林道終点16:00ー林道ゲート16:45