ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.05.12
餅ヶ瀬川押溜沢〜下中手沢下降
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2018年5月12日

 

前日の小法師岳下山後、駐車場の隣の東屋のある小さな広場にテントを張った。当初は餅ヶ瀬川の林道ゲートまで移動することも考えたが、駐車場脇の広場がとても快適だったので翌朝移動することにした。

庚申山登山口へ向かうのか、夜間や早朝に車が数台通過していった。花の季節の好天の土曜日なので登山道のある山は賑わいをみせるのだろう。6時前に出発してまずは餅ヶ瀬川沿いの林道ゲートまで進む。

餅ヶ瀬川は水量も多く、ダイナミックな渓相を見下ろしながら1時間ほどのハイキング。押溜沢出合への下降点をさぐると緩い斜面のところにテープがあり簡単に下った。沢靴に履き替え餅ヶ瀬川本流を渡渉して押溜沢へ入る。平凡なゴーロ沢の様相だが、明るく開けていて見上げる樹林の雰囲気はいい。

今シーズン初の沢歩きなので、ゆったりと何もないくらいの沢がちょうどいいなどと思う。水の中を歩く感触がしだいに蘇ってくる。しばらくは高度を上げることもなく、時々あらわれる深い釜を持つ小滝を越えたり巻いたりしながら1277mの二俣へ。

ようやく変化があらわれ、2段10m滝となる。一見登れそうに見えたので1段目を登ると深い釜をへつらないと2段目に取り付くことができそうにない。沢初めだしと、あっさり巻いてしまう。少し高く上がりすぎたようで、次の滝も巻いてしまう。まあ、いいことにしよう。上から見下ろした沢は新緑にミツバツツジが点在して絵になる景色だ。

さらに進むとゴーロから岩盤状のナメに変わる。それほど長くは続かなかったけれど一ヶ所、多分この沢を遡行した人が必ず写真をとると思われるキレイな幅広ナメ小滝があらわれる。私たちもここぞとばかり時間をついやして愛おしむ。

しだいに源頭部の様相となり、V字形の斜面は足尾の沢でよく見られる笹原で覆われる。ふたたびナメ床となり、ひたひたと登る。すっきりとした源頭を詰めていくと最後は崖に阻まれる。稜線も見えている。左手のザレた窪に取り付いて上部は傾斜の緩い斜面に逃げて稜線にでた。薮を漕ぐことはなかった。ここから少し踏み跡を辿って登山道へでた。

 

 

しばらくは登山道を進み、下降点である小丸山から下った鞍部へ向かう。途中たくさんのハイカーとすれ違う。まだアカヤシオは健在で、登山道沿いにたくさん咲いていた。小丸山に向かう途中、沢を挟んでみえた対岸の尾根のポコが赤く染まっていた。全体がアカヤシオに覆われている。さっそく地図を出して確認すると、1878mの前袈裟丸山から南に派生している尾根のようだ。登山道はないが、ちょっと気になる尾根だった。

小丸を越えた鞍部から適当に笹を漕ぎながら下るとすぐに沢形があらわれ下中手沢を下る。苔むした雰囲気のいい沢だ。滝があらわれるが階段状なので問題ない。1450mあたりまでは順調に下ったが、直瀑の上で戸惑う。支点となる木がないため懸垂ができず両岸が立っていて巻くこともできない。そこで手前の左手斜面を登って小尾根で様子をみることに。さいわい尾根の反対側には地図にない小さな沢があり、ここを下ると下降していた沢に合流した。

どうも当初予定していた沢の隣の沢を下ったようだった。少し下ると右岸から下るはずだった枝沢が緩やかに合流する。両岸が開け、大岩ゴーロのところは右岸の道らしきところをたどり、少し急ぎ足でどんどん下る。出合いが近くなると側壁が立ってきて水量の多い沢の中を進む。

樹林に覆われた薄暗い沢から空の広い明るい本流に出たときはほっとした。下る沢を間違えたせいか時間がかかってしまったが、これからの沢シーズンに向けていいトレーニングができたと思えば悪くない。けれど、よくやる地図読みの勘違いには気をつけなければいけない。沢自体は平凡だったけれど、沢歩きは沢自体もさることながら、沢を取り巻く山や樹林の雰囲気が大事な要素だ。そういうところから足尾の沢には好感を抱いているのだと思った。

 

林道ゲート6:00ー入渓7:45ー登山道12:20ー小丸ー下降点13:50ー餅ヶ瀬川出合17:00