ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.07.09
小淵沢~大江湿原~センノ沢下降
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2012年7月9-10日

梅雨時の沢選びは難しい。そんな時は近場の沢が無難ではあるが、テントをかついでちょっと遠くへ沢旅に出かけたい。候補にあげたのが奥秩父と足尾だったが、メンバーの都合により前夜発ができないため、比較的コースの短い足尾の小田倉沢に決めた。2年前の敗退以来ずっといつか再訪の機会をうかがっていた沢だった。

ところが予想以上の増水のため取り付きの本流泙川の渡渉ができず、再び退散となった。そこで転戦先を求めて尾瀬へ向った(経緯はブログへ)。

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ちょうど昼ごろに大清水に到着すると、手前の駐車場は満車だった。平日なのにさすがシーズン中の尾瀬だと感心しながら、坂を下った第二駐車場へ。こんな時間からの出発なので、北岐沢あたりを遡行して奥の二俣で泊るのが一番無難なのだが、すでに二回遡下降している。

小淵沢は4年前に遡行したが、9月末で燧ヶ岳に初冠雪を見たほど寒くて水が冷たかった。登れるナメ滝が続いて楽しかったのだが、なにしろ水の冷たさばかりが記憶に残ってしまった。Yさんは初めてだし、もう一度遡行してみるいい機会だと思った。

どんな状況にも対応できるように泊り装備をかついで出発。林道が横断する入渓点までが意外と長く、真夏のような日射しにヘトヘトになる。すぐに軟弱虫がうずき出し、入渓点でテント張って翌日早朝からの遡行でもいいよーと探りを入れるが、当然無視される。

橋の左手前から沢に降りた時にはすでに2時半近かった。遅すぎる出発なのだが、テントを背負っている強みか、なんとかなるだろうときわめてお気楽ムード。朝からのドタバタを乗り越えてようやく沢に入れた喜びにひたる。そんな気持ちに応えるかのように、さっそく水量豊かなナメ滝がつぎつぎと登場。あれっ、こんなにきれいだったかなあと思うほど、すべてが美しかった。

一見威圧的に見える10m前後の斜滝もおおむね水流脇が階段状なので、楽しく登れる。小淵沢にはテンバはなかったと記憶していたが、意外なことに、遡行を始めて1時間ほどすると右岸に喉から手が出そうなほど快適なテンバがあった。

さっそくYさんに話を持ちかけると、まだ3時半なので早すぎると却下される。なんとかなると思いながらも、やはり気になっていたのだ。小淵沢をぬけると水場を確保できるテンバはないだろうと・・・

すぐに15m大滝があらわれた。すごい迫力だ。水量が多くて右岸の水流沿いは無理なので右壁にルートを取ることに。中段のバンドに上がる手前が一枚岩で厄介そうなため、空身で登って後続を確保。バンドをトラバースして上段は笹につかまりながら水際を登って滝上へ。ふうっ。でも、前回はこんな悪い所なかったはず。あとで当時の記録と写真を見たところ、水量が少ないため右岸のヘリを容易に登っていた。

その後もトイ状滝やナメ滝、斜滝が続くがどれも水際を登れた。そしてフィナーレの18mハング滝へ。登れる滝ではなく、左岸の立派な巻き道をたどる。滝上からは急に源頭部の様相となるが、水量が多いためいつまでも水流が続く。最後は少し笹藪をかきわけると登山道にでた。前回はもう少し手前から湿原をめざして藪こぎをしたが、今回は藪こぎをしなかった代わりに湿原より少し東側の登山道に抜けた。

ほとんど沢状態の登山道を少し下ると突然のように小淵沢田代に躍り出る。そこは静寂が支配する緑の空間・・霧に濡れたワタスゲが物寂しげに咲いている。遅い時間のことや、今宵の宿の確保といった現世の懸念をしばし忘れ、今のこの時の幸せに浸る。

なんて、いつまでも夢心地でいるわけにもいかない。田代の脇で泊まれたらいいねといいながら登山道に戻る。地図をみると30分ほど先に尾瀬沼キャンプ場があるが、それじゃあテントをかついで来た意味がないと、あくまで山中泊にこだわった。日が長い今の季節はありがたいもので、6時を過ぎようとしているのに暢気でいられる。

水を確保したいので小淵沢の源頭部に戻ろうと登山道を歩き始めたところ、Yさんが樹林の奧に奇跡的な更地の空間を見つけた。少し草刈りをすると快適なテンバとなった。軽くヤブをこいで沢へ下り、水を確保することもできた。これで一安心だ。焚火こそできなかったが、テントに入って人心地つけば、沢泊まりと変わりなく快適だ。いつもの珍道中ながら、増水で美しさをました小淵沢と静寂の田代を楽しめたことにカンパ~イ!

 

 

 

翌日は朝から快晴だ。まずは早朝の小淵沢田代を散策しよう。昨日はガスで見えなかった日光白根方面の山並みが広がっている。対岸から単独の男性が近づいて来た。これから長い登山道をたどって鬼怒沼湿原へ向かい、夕方までに大清水に戻るのだという。三脚を手にしていたので、お花の写真をたくさん撮るのだろうなあ。長いルートはほとんどが樹林帯なので忍耐もいりそうだ。ご苦労様ですとわかれる。

朝日が射し始めた田代を横断して大江湿原の道へ進む。木道も登山道も沢状態のところが多く、沢靴がものをいう。小淵沢田代の数倍はありそうな大江湿原はニッコウキスゲの大群落地らしいがシーズンはこれからのようで、所々にぽつんと咲いているだけだった。燧ヶ岳が雲一つない青空に聳えて見える。いつか登って見ようかな。

尾瀬沼がみえてくると急に観光地風になり、売店やら山小屋があらわれる。三平下のベンチで休憩して水を補給しつぎなる湿原の大清水平へ。途中、尾瀬沼に姿を映す燧ヶ岳が美しい展望地でしばし足をとめる。そういえば、前回も色づき始めた湿原と燧がすばらしかったことを思いだす。

大清水平はなんの変哲もない田代ながら、ワタスゲと共に大江湿原では見られなかったタテヤマリンドウがたくさん咲いていた。ここから皿伏山までは緩やかながら登りが続き、足取りが重くなる。樹林に囲まれた平地のような山頂標識の前で休憩がてら、スパッツとハーネスを付け、セン沢田代へと下る。

登山道から軽く笹藪をかき分けて奥に入ると、小さなセン沢田代があらわれる。乾燥してたんなる草地になりつつあるが、前回苦労してたどり着いた懐かしい場所だ。さあ、ここからは最後のお楽しみのセンノ沢の下降だ。コンパスで方向を合わせて田代の南端へ進むと水が流れる窪となり、拍子抜けするほどあっさりと沢筋があらわれた。

あとは藪をかき分けながらひたすら下るだけだ。少し下ると左手から顕著な水流の枝沢が合わさる。前回はこちらに進んだために田代をはずしたようだ。地図で水線のある1670mの二俣まで下ると沢幅も広がってボサもなくすっきりとした渓相となる。

雰囲気がよくなったところで早めの昼食を取ることに。はじめてフリーズドライのにゅうめんを食べてみたが、簡単でとても美味しかった。センノ沢は小滝とナメが交互にあらわれるとても下りやすい沢だ。途中少し冗長な感じがしたが、下るにつれナメの美しさが際立つ。

二つの8m滝もなんとかクライムダウン。その後は赤茶けた岩盤のナメとなり、水量が多いため白い水の流れがとても美しい。時々階段状の斜滝をかけながら、ナメは延々とつづいた。そしてフィナーレを飾るかのように、10mナメ滝があらわれるが、水流脇の岩壁を簡単に下ることができた。なんてすばらしい演出なんだろうと思う。上部がほとんどヤブ沢なので、下って正解だった。

滝下からは平凡になるがすぐに橋が見えてきた。そして本流の一ノ瀬川の増水に目を見張った。前回の記憶では左岸の橋の脇にある階段から沢に下った。渡渉ができるかと一瞬不安になったが、右岸の橋下にも踏み跡があり容易に林道へ抜けることができた。

増水のために足尾の小田倉沢は行けなかったが、尾瀬では増水のおかげで、どちらの沢も記憶以上に美しかった。急ごしらえとは思えないほどいいコースだったと満足しながら駐車場へ戻った。

 

 

 

 

9日 大清水駐車場12:25-小淵沢入渓点14:20-小淵沢田代17:35/17:55-テンバ18:10

10日 テンバ5:40-大江湿原6:20-三平峠下-皿伏山9:00-セン沢田代9:55-センノ沢下降-三平橋13:00-大清水駐車場13:45