ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.07.16
稲子山
カテゴリー:ハイキング

2012年7月16日

メンバー:sugi,他1

 

北八ヶ岳は学生時代から何十回も歩いている。しかし、どの地図上にも登山道がない稲子岳には登ったことがなかった。昨年、その学生時代からの友人から稲子岳に行こうと誘われたが、その友人が心臓病を患い延期に。リハビリも終わり天候にも恵まれ、ようやく実現した。バリエーションルートとあって、ルートが見つかるかという不安があったが、後に記すようにバリエーションにならず、さすが八ヶ岳というか。

7時半に家を出て麦草峠には8時に到着。東京からとは異なりあっという間である。峠の無料駐車場は週末は満杯になるが、平日とあってさすがに空きがある。白駒池周辺は苔むす森や野鳥を撮ろうというのだろうか、カメラを据えた人が多数いた。紅葉の頃は場所取りすら大変な、撮影の名所となっている。

白駒池からニュウまでの登りはあちこちぬかるみで木道や岩も滑るため、神経を使い結構疲れる。途中、小さいながらも湿原があり、ワタスゲが見られた。そして多くの登山者とすれ違いながら、コースタイム以上の時間をかけてようやくニュウ直下の稜線に出た。

すると、それまで雲に覆われた森を歩いてきたが、突然晴れ渡り、眼前に富士山の姿が現れ、顔がほころぶ。疲れたこともあり、目的は稲子岳なのでニュウのピークには上がらず、中山峠方向に向かい、稲子岳への入口を探した。

過去の記録を見ると、文章からもルート図からも入口は一つではなさそう。急な斜面を下っていくと赤テープの目印が出てくるとある。それらしき所を探して行き来すると、登山道にかけられた鉄製の梯子の手前がなんとなく抜けており、少し入ってみると比較的傾斜の緩い斜面に踏み跡らしきものがあり、さらに赤テープを発見。そこからは踏み跡が明瞭になりテープも次々に現われた。

これで間違いがないと確信し、多少藪っぽい道を歩いていると、すぐに後ろから声がして3人の姿が見えたのでびっくり。なんと女性二人と案内役のガイド氏で、「稲子岳ですか?これで間違いないですよ」と「親切」に教えてくれ先行していった。

「せっかくのバリエーションルートが、ガイド先行ルートになってしまったなあ」と冗談を言いながら歩いていくと、大量の倒木でルートが分からなくなる。高い方へ倒木を乗り越えていく。このあたりは縞枯現象なのだろうか。

稲子岳まで約1時間、本当の山頂は樹林の中だが、東側の岩場から眼前には天狗岳と硫黄岳の切れ落ちた壁が迫り、ここからしか見ることができない光景に感動する。ここで昼食休憩、ガイド氏に写真を撮ってもらう。

実は、ひそかに「カモシカヶ原」を廻ってニュウに戻りたいと思っていた。地図を見ると、稲子岳の西側にもう一つ双耳峰のように等高線が輪になったところがある。よく見るとこれが山ではなく、大きな窪地であることがわかる。

谷であれば必ず出口があり沢があるが、ここはすり鉢状で出口がない。深さは70メートルほどもあり、その底は広い草地の原になっており、そこから見る天狗岳はえも言われず美しいそうだ。ほとんど記録もない。

ガイド氏に聞くと、いまからだと時間がかかり過ぎるからやめた方がとつれない。たしかにすでに午後になっており予定よりかなり遅れた。友人も、「次回沢仲間と来たら」とその気がなさそうで、諦めて中山峠に抜けることにした。

少し下ったところに砂礫地が広がり、ロープが張られている。コマクサを保護しているとのこと。確かにコマクサらしい草がたくさん生えているが、まだ花が咲いていない。ようやく一つだけ見つけた。

さらに下ると眼下の岩場に数人のクライマーがいるではないか。稲子岳南壁カンテと呼ばれる岩場があり、「難しいところがないから人気がない」と聞いていたが、さすが八ヶ岳というか、3連休だからか、にぎわっていた。

樹林帯に入り、一か所崩壊したガレ場を乗り越えるところがあるが、それ以外は立派な登山道があり、迷うことはない。30分足らずでしらびそ小屋から中山峠への一般登山道に出てしまった。ロープが何本も張られて立ち入り禁止になっているため、かえってここが稲子岳への入口だとわかるようになっている。

ここから中山峠までが苦しかった。なにしろ120メートルの急登。あえぎながら登っていくと途中でカモシカヶ原が見えた。確かに緑の草原になっている。登り切った峠は2410メートルと稲子岳より高く、稲子岳が見下ろせる。

休憩していると鮮やかなヤッケのカップルが近づいてきて、よく見れば男性は野口健さん、女性はタレントだろうか、二人ともオーラを放っていた。後ろにはスタッフが数名いて、信州朝日放送の番組とのこと。メジャーなところではこんな出会いもあるのだと感心した。高見石では、小屋のテラスで休ませてもらおうとしたら、注文しない客は座るなと書かれており、昔の高見石はこんなではなかったと嘆いた。

稲子岳ルートを完歩、目的を果たして麦草峠に戻った。ルートには、イワカガミ、コメバツガザクラ、キバナノコマノツメなどの高山植物も豊富だったことも付記しておく。

イナゴ1 いなご2

いなご6 イナゴ3

いなご3 いなご4

麦草峠駐車場8:00―白駒池8:15―ニュウ10:00ー稲子岳11:45/12:15―中山峠13:20―高見石14:30―麦草峠駐車場15:30