ブナの沢旅ブナの沢旅
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2007.10.20
高倉沢右俣
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2007年10月20日

 

美しいナメと手ごろなスラブで下山はロープーウェイというガイドブックのコピーにつられ、おまけに紅葉を楽しもうと高倉沢右俣へ。

土合駅から少しもどってトンネルを抜けたところのガード脇から湯檜曽川の枝沢の河原に下って沢支度。昨晩まで降っていた雨もやんで天気も上々。出合はあまりにも貧相で一度通過してしまう。けれど一度中に入ると谷は大きく開けて いて、ナメの小滝がが続く。

すぐに現われた15m滝は左側を巻きぎみに登る。沢床は赤茶けていて滑りやすい。さらにナメを進むと15m2段滝が見えてきた。見上げると右岸側にオレンジ色のビニールロープがかかっている。誰がこんなロープかけたんだろーと不思議に思いながら滑りやすいロープにつかまって登り、潅木につかまりながら急斜面をトラバースして落ち口に回りこむ。

二俣を右に入ると苔むした大岩のゴーロとなるが、谷は開けていて樹林がきれいだ。トイ状の小滝はsumireさんの肩を借りて立ちこみ、あとは水流の中を登る。2条6m滝はそそり立って登れそうにない。左のガレを直上して落ち口にトラバースするのだが足元が悪く、最初から右方向に斜上したほうがよかった。

小滝をいくつか越えると5mほどのチムニー滝だ。これくらいは登れないといけないなぁ~と思いながらも、しり込みしてしまう。出だしから滑りそうでsumireさんに靴を押さえてもらいながら大騒ぎで立ちこみ、あとはヒヤヒヤしながらも突っ張りで登りきることができた。すっごくうれしかった。ロープの支点が取れそうにないと思ったら、少し登ったところの潅木に残置シュリンゲがかかっていたので助かった。回収していないということは懸垂用かな。

続く3段12mも下がつるっとしていている。最初の2,3歩が難しそうだ。倒木があるので、釜に入ることを嫌わなければ何とかなるかなと言いながら、巻くことに。右手の踏み跡をたどって巻き、2段目の上に降りようとしたが、2,3mほど岩壁になっている。

懸垂を試みたが足場が悪くうまくいかない。あきらめてさらに3段目も高巻くことにした。みんな同じコースをたどっているかのような踏み跡が続いていておかしかった。あとでネットをみたところ、左手から巻けば問題ないようで、その人も、ガイドブックを鵜呑みにせず自分で見極めないといけないと書いていた。その通りなんだけど・・・

 

  

その後はゴーロとナメが続く単調な渓相となる。970mの二俣を左に進むと水流も細くなり、藪っぽく倒木が目に付くようになる。奥の二俣になると右手に草つきスラブが見えてきた。うーん、これを登るのか~。

とにかく右に進む。ガレを越えるとスラブの取り付きだ。手足はあるのだが、滑りそうで怖い。一生懸命自分を奮い立たせ、声を出して気合を入れる。上まで行くとロープが足りなくなるので途中の足場がしっかりしているところでピッチを切ることに。

といっても草しかないのでハーケンを打ってみる。本番は初めての経験だ。3,4回トライしたら何とか固定できたのだが、本当はハーケン1本でビレーは危険だ。sumireさんにそのまま上まで登ってもらうが、40mロープぎりぎりだった。二人とも支点作りに手間取ったりなにやらで時間がかかってしまった。

スラブの上も急傾斜のナメが続き、細かいホールドを拾いながらずり上がっていく。ようやく左手に尾根が近づいてきて這い上がるが、ここからも藪をこぎながらの急斜面だ。時間ばかりが過ぎて行き、ロープーウェイの最終時間が気になり始める。

こんなに時間がかかると思わなかったので、最終時間は調べてこなかった。傾斜も緩んでそろそろ頂上のはずなのだが、なかなか登山道にでない。ガスが出始めて視界が悪くなっているためにだんだん不安に。

近くに来ているはずなのに最後がわからない~。時間が迫ってる~焦りの気持ちがでてくる。コンパスを振ってとにかく登山道が通っている西の方向めがけて藪を下っていくとしばらくして笹原に出た。

すると霧の中前方に尾根が見え、赤い布がかかっていた。よかったぁ~、登山道だよ~と、もう泣きそうなくらいほっとした。頂上はずんぐりしているので、あせらずにもう少し進めば山頂の印と登山道に突き当たったはずなのだ。

あとは一目散に登山道を下ると、天神平ではまだ観光客がぶらぶらしていて、何だが生還した気分。大げさだと思われそうだが、そのときはほんとに心細かった。ロープーウェイは5時までやっていて、駅には4時20分ころ着いたので、知っていればもっと冷静になれたはず。装備を解くまもなく沢の格好でロープーウェイに乗り込み、安堵感と充実感に満たされながら7分間の空中観光を楽しんで帰路についた。