ブナの沢旅ブナの沢旅
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2021.01.13
白倉山〜三依山
カテゴリー:雪山

2021年1月13-14日

豪雪で始まった今シーズンの雪山。南会津のスノーシュー山歩きには時期尚早だけれど、少し手前の塩原方面ならばそれほど雪も多くないだろうと、日光と塩原の境にある三依山で今シーズン初の足慣らしテント泊を楽しんだ。地味な山だけれど、豪雪の厳冬期にどこも行けないなんていう時には、駅から登って駅に下れる手軽な雪山なのだ。そしてそれ以上に、最初に自力で雪山テント泊をした思い出の山でもある。

上三依塩原温泉口駅から塩原方面の車道を歩き、尾根のとったんからとりつく。最初に登る白倉山へのルートは幾つかあり、一番距離が短いのは尾頭トンネル入口から入るコースだが、日帰りコースを山中泊するので、長いけれどゆったりと続く尾根を選んだ。雪がたっぷりなので最初からシューをはいて登る。

最初に登った時はまだ経験がなくただがむしゃらなだけだった。猿の集団がやってきてビビりながら車道の目の前の急斜面を200mほどよじ登った。そんな「若気のいたり」を感心しながら笑い話に、気持ちのいい雪尾根を進む。予想以上に雪が多くサラサラの新雪だ。

ところどころ傾斜のあるところではシューで踏みこむと柔雪が崩れて難儀するが、ほとんどは踝ほどの軽いラッセルだ。出だしは雑木林だったが1200mを超えたあたりからブナの大木もちらほら。大方伐採されたのだろう。1460mの白倉山は今回の山行の最高点だ。展望は今ひとつだが、日留賀岳が以外と近くにそびえて見える。日留賀岳に登るならここ白倉山からアプローチしてみたい。

白倉山からは緩やかな広尾根を下る。こんな時はシューで脱力しながらの下りがとても気持ちが良い。あっという間にテン場予定地の1350m平坦地へ。翌日を通してテントを張るならここが最適地の塲所だ。雪が柔らかいので踏んでも踏んでも締まらない。適当なところで妥協してテントを張る。久しぶりの雪山テントはまず水作りのルーチンからだ。また新しいシーズンが始まったことが嬉しい。

 

さすがに朝は明るくなるのが遅い。朝日が昇り始めるタイミングで出発する。夜は比較的気温が高く穏やかだった。いつもなら早朝は雪面が硬く締まるのだが、サラサラのままだ。日留賀岳から先に男鹿山塊の山並みが広がるが、あまり山名がわからないのが残念。

尾根が細くなるところではかなりの雪庇が張り出している。前回は3月初旬だったが雪はほんとに少なかったのでいわば嬉しい誤算ともいえる。鉄塔を見下ろしながら尾根から鞍部に下る。尾頭峠は歴史的にいくつかのエピソードが残されているようだ。

一つは明治の小説家森田草平と平塚らいてうの逃避行だ。明治41年3月二人は塩原温泉に駆け落ち地て心中未遂事件を起こし雪の尾頭峠でさまよっているところを発見され一命をとりとめたという。また峠にポツンと立つ石柱にはよく読めないが「歩兵第五十九聯隊建之」とある。前回登った時に知ったのだが、大韓帝国皇太子の李王垠は「韓国併合」前の明治40年に11歳で日本に留学し、皇族の一員として高い地位を与えられ昭和12年に330名以上の歩兵、軍馬を率いてここを雪中行軍したのだという。

石柱の文字を確かめながら改めてしばし歴史を思う。尾頭山への登り返しからは緩やかながらも幾つかのポコを越える。無雪期ならば大したことはないのだろうが、その度にサラサラ雪のラッセル登りとなる。先頭を交代する時間がだんだん短くなる。尾根筋にはブナが多く白倉山の尾根よりは雰囲気がいい。とくにポコ付近にはブナの大木が残されていて南会津の山を思わせる。というか、見慣れているあのブナの山をどこかに求めてしまう。

当初は三依山から塩沢山を往復しようなんて思っていたが早々と時間的に無理だとわかった。わりと単調な尾根歩きが続いてあきるかもね、などといってあっさりと予定変更。高原山の山並みの一角のように前黒山が見える。こうしてみると大きくて立派な山容だ。スキー場が二つ並んで見え、一番近いハンターマウンテンはまさに頂上まで開かれている。

三依山は駅から近い小さい山なのに、ようやく着いたと素直に喜ぶ。それだけ予想以上の雪山歩きを堪能したということなのだろう。ラッセルは軽からず、重からず。これからの本格雪山シーズンに向けたほんとの雪山始めになった。

とはいえ、今回のもう一つの課題は中三依駅前にうまく着地できるかだ。前回は最後にルートを迷って恐ろしく急斜面の植林帯を摺り下った。しっかり読図をしようと気合いをいれてきた。おまけにGPSもある。分岐ごとに注意しながら下って無事に駅前の雪原に降り立つと新しいテープが付いていた。

 

 

 

 

上三依塩原駅9:30ー白倉山14:10/14:30ー1360m幕営地15:00//6:50ー尾頭峠8:30ー三依山11:40ー中三依駅14:30