ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2019.03.10
王博士〜博士山
カテゴリー:雪山

2019年3月8〜9日

ようやく思い描いていた通りの雪のブナの山歩きが実現しました。やはり初めて歩く山はワクワク感が違います。博士山へは一昨年の秋に一般登山道から登ったのですが、ちょっと期待はずれでやはり雪山の季節にブナ林が広がる西〜南側斜面を登らないと博士山の良さが味わえないことを実感していました。

一般的には冬季は最短距離の琵琶首から登られていますが、ちょっとこだわって王博士から博士山のコースを山中泊で計画しました。晴れ予報の9日をメインに据え、降雪の残る前日に入山。この日程が功を奏して期待通りのモフモフ新雪ラッセルと樹氷のブナ林の山歩きができました。コース全体がとてもゆったりとした尾根で歩きやすく、今後の定番コースにしたいと思いました。

 

新白河から甲子トンネルを抜けて会津へ向かう。2週間前は沿道の雪の少なさに驚くほどだったが、前日降雪があったようで山並みは雪化粧していた。田島はすっかり春模様だったが舟鼻峠に向かうにつれ雪が深くなる。トンネル出口の駐車場は雪で覆われ除雪車がせっせと除雪作業を行っていた。

小野川集落を過ぎると除雪がどこで終わっているかわからなかったが、予想以上に続いている。なぜかどんどん進んでいけると思っていたら、案の定工事現場が見えてきた。事前に調べていなかったのだが、昨年暮から博士山トンネルの開削工事が始まっていたのだ。車道が北向きに変わるあたりから北東に直線を引くようにトンネルを作って冬季に閉鎖される峠道を回避する計画らしい。

路肩に車を止めて支度をしていたら、工事関係者の人に声をかけられ駐車場所を教えてもらう。除雪終了点の雪壁を乗り越えると真っ白な手つかずの雪原が広がる。空は晴れたり降ったりとめまぐるしく変わり風もある。新雪の軽いラッセルが心地いい。小一時間ほど車道を進み、最初のカーブミラーのところからゆるやかな尾根にのる。

雑木林から植林帯をやり過ごすと1138mあたりからブナ林となる。次第に尾根が広がり、ゆったりとしたブナの森の雰囲気がただよう。時間はまだ早いが、天気がよくないので1250mの平坦地でザックをおろし初日の行動を終えることにした。強風の中のテント設営にも慣れてきた。中に入って一息つく。あとはいつも通りの食事を楽しみ7時前にはシュラフに入った。

早々と寝たのではやく眼がさめるだろうと目覚ましをかけなかったら寝坊してしまった。とはいえテントはそのままにしておくので7時前には出発。予報通り朝から雲ひとつない快晴だ。1300m前後は急登だが、適度のラッセルのためガリガリな斜面よりは登りやすい。南西斜面が広がり、すばらしいブナ林となる。スキーはやらないけれど、ブナの大木をぬいながら滑り降りたら気持ちがいいだろうなあとうっとりとする。

王博士の山頂に近づくと西側の展望が開ける。燧ヶ岳から始まり見慣れた山並みが続く。村杉半島から浅草岳、守門と、距離があるぶんパノラマの広がりがある。奥には丸山岳もはっきり見える。予想以上の展望だ。これから向かう博士山はゆったりとした姿をみせている。

王博士の北東斜面にはようやく待望の霧氷の樹林帯がみられた。青空とのコントラストが美しく見とれすぎて足が進まない。南側から見た博士山がこれほど優雅な姿だとは思っていなかった。目をほそめ喜びをかみしめながら新雪の斜面を下る。

山頂直下は雪庇の壁となっていた。雪庇の端を取り崩してこわごわと乗り上げると、そこが一番高くなっていた。無雪期の山頂とあまりにも様子が違うので戸惑ってしまうが、南側に大きく張り出した雪庇の上に乗っているようだった。西側の展望は潅木に遮られて王博士ほどは広がりがないが、北側には飯豊が真っ白に聳えて風格をみせている。磐梯山の奥には安達太良と吾妻連峰。なにしろ360度の展望なので、山座同定のきりがない。それほど寒くないのでしばらくお茶をしたりして静かな贅沢な時を過ごす。

あとはゆっくり往路を戻るだけだ。気温がどんどん上昇しているのがわかる。来る時にあんなに綺麗だった霧氷がほんの数時間もしないうちにほとんど消えてしまっていた。すると山の見え方もずいぶん変わるもので、真冬と春山をいっぺんに体験した気分となる。

下りは早い。テントに戻って帰り支度をすませ、ゆっくりお茶でくつろいで博士山をあとにした。

 

 

 

 

駐車地点12:15ー1250m幕営地15:15//6:45ー王博士8:00ー博士山9:50ー幕営地11:20/12:15ー駐車地点14:00