ブナの沢旅ブナの沢旅
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2024.04.12
三本山毛欅峠〜稲子山〜坪入山
カテゴリー:雪山

2024年4月12-14日

昨年サングラスを忘れて中退したコースを再度計画し、日程も二泊と余裕を持たせ、いつもの南会津へ。会津高原尾瀬口駅の売店でバスの乗車券を購入しようとしたところ行き先を聞かれる。小立岩と答えると只見の方に行くのかと聞かれた。

最初はえっ、只見?と思ったが、すぐに、地元の年配の人はそう思うのかと察した。かつて山毛欅沢右岸尾根から三本山毛欅峠を越え只見側の小手沢に下る道があったからだ。それにしても小立岩から只見の連想はちょっと唐突ではある。

バス乗り場にいた単独の登山者と話をかわすと、この辺によくきますか?ええ。ーーakoさんですか。と言われビックリ。私の記録に影響を受け山毛欅沢山にも行かれたとのこと。そういえば一昨年も「ブナの沢旅」を参考にしたとかで、同じルートを前後して歩いた若者がいたことを思い出す。

小立岩から林道を進み、安越又川をわたって尾根に取り付くが予想通りまったく雪がない。藪はそれほどないし部分的には登山道が残っているのだが、バスで行くと登り始めが昼になるため暑さと急登で初めからバテ気味となる。とくに仲間の憔悴ぶりが著しく先行き不安になる。

1100mを越えるとようやく雪山となり一息つく。これまでないほど時間がかかっており小沢山まではきびしい。1240mの平坦地でザックを下ろすことにした。ちょうど山毛欅沢山を対岸にのぞむ気持ちのいい平地だ。さっそく焚き木集めにとりかかる。一見あまりなさそうだったが、執念を燃やしまずまずの収穫を得る。陽が落ちても寒くない。小さく燃える焚き火のそばで水を作り食事をする。

どうということのない山歩きだけれど、山に泊まって焚き火のそばでゆったりと宵闇に包まれる山に身を委ねることの心地よさは日帰りでは決して得られない。三日間という余裕も手伝って、まあのんびりと、行けるところまで行けばいいという安らかな気持ちで初日を終えた。

 

 

 

前日の遅れを取り戻すため早めに出発すると言いながら、内心はどうでもいいと思っているのがわかる。かつての三本山毛欅峠まで緩やかな登りだ。今どき1436mポコをそんな呼び方しないけれど、昔の地図には会津と只見をつなぐ峠としてこう書いてある。いい名称だと気に入っている。(今は四本に見えるのだけれど。。)昨年は山毛欅沢山に逃げて下山した。久しぶりにブナ街道以西を歩く。

小沢山周辺のブナもいい。何度かテントを張った1410mの泊まり場をさらに下り、鞍部から稲子山への細尾根を登る。東面は雪が剥げ落ち黒々している。かつては5月の連休でも白かった。山頂手前の傾斜が緩んだところをトラバースして1467m鞍部に急降下。ここから坪入山下までが極上のブナ街道だ。一昨年歩いた道行沢源頭部を越えると運動場のようなだだっ広い雪原が広がる。

今回は坪入山に登らず安越又川西沢に下り窓明山北の1775mから派生する尾根を登るつもりでやってきた。ここを通るたびにいつも、なめらかに延びるブナの尾根が気になっていていつか歩いてみたかったからだ。

近づく目当ての尾根をじっくり観察しながら広尾根を進む。が、西沢が近づくと嫌な予感。沢が埋まっておらずゴウゴウと勢いのある沢音がする。2月の小雪で、これまでも沢が埋まらず両岸が雪壁で深くなっていることがあった。沢への小尾根下降点ではたと迷う。一応下って様子を見るか、中止するか。上流を見るとさすがに雪で埋まっているが対岸の取り付きが雪が剥がれた急斜面。

相談の末こんな時に無理することはない、沢が埋まっている時にしようと、もっともな理由をつけてパスすることに決めた。また来ることはないかもしれないことはわかっていたけれど。。

というわけでブナ街道を終端まで進んで坪入山を踏むことにきめた。ブナからダケカンバがとだえ無木立ちの急斜面がつらかった。時間がかかり山頂尾根にあがる頃にはくたくたになる。ようやく坪入山山頂だと思ったところで樹林の中にトレースを発見。ちょっと大袈裟にいえば衝撃を受ける。丸山岳に向かっているに違いない。確かめるように少したどると西側へ下っている。そして思う。やっぱりね。

今回の日程前後は稀に見る四日間連続で好天予報。仲間にこんなにいいタイミングはないと再三話を向けてもまったく相手にされず、いわば妥協策としてとった三日間だった。10年前だったら一人でも行ったかもしれないけれど、ある時から泊まりの単独行はやめにしている。などと偉そうなことを言っても現実はきびしい。現に坪入山でくたくたになり、もう会津駒なんか行かないで窓明から下って早い電車で帰ろーといい出したのは自分だから。

当初は二日目に窓明山を越えれば会津駒まで縦走するという心算だった。時間的には可能だったが当初の目的を断念したことで気力がなえてしまった。三岩岳から駒まではスキーは気持ちいいかもしれないけれど山歩き的にはパーツが大きくて大味だから未練なんて全然ないよと言わんばかり。そうと決まれば1612m鞍部付近まで一気に下り、三岩岳から大戸沢岳方面の展望がいい平地でザックを下ろした。そしてまずはテントで小一時間ほど昼寝をして体と胃を休め、二日目の夕食に備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりにテントで熟睡し爽やかに朝を迎えた。朝食後は小さな焚き火をするほどの余裕もできた。残雪期の窓明山直下は雪が割れて歩きにくく樹林を絡めながら登る。1775mポコから西沢にのびる尾根を見下ろそうとしたが雪庇で覗けなかった。窓明山は早朝のため日曜日ながらまだ誰もいない。

ザックに腰を下ろし四井の山並みを見渡す。華やかな雪の峰々がひろがる西側から目を転じ、今回とこれまで歩いてきた城郭朝日山までのブナ街道を見渡してしみじみと思いを口にする。「ブナの沢旅はここから始まってここで終わるのよね。」すかさず仲間に笑われてしまうが、しばらくセンチメンタルな気分にひたってしまう。

名残り惜しむかのように小一時間ほどを過ごして山頂を後にする。下るとどんどんスキーヤーが登ってくる。みな単独だ。さらに下ると会津駒から縦走してきた登山者が追い越していく。絶好の登山日和だもの。小立岩からの静かなブナの山旅をなおさらいとおしく思いながら山を下った。

 

 

 

 

 

 

小立岩11:10ー1280m幕営地15:20//5:30ー小沢山7:00ー稲子山南尾根9:30ー坪入山13:45ー鞍部幕営地14:20//6:00ー窓明山7:30/8:20ー家向山10:15/10:35ー窓明山登山口12:20