ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.08.11
東黒沢〜ナルミズ沢〜宝川温泉
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2023年8月4-5日

山に行く気力もなえてしまうほど連日の猛暑。涼しさとゆとりを求めて尾瀬の沢を検討したものの県境付近は連日午後になると雷雨予報がでていて恐ろしい。できるだけ天候が安定していて当日発が可能な泊まり沢ということで少しマンネリながらナルミズ沢へ。3年前に二日では下山できず延泊した記憶が新しい。

前回の教訓を生かすなら三日の日程を取るとかアクセスを宝川からとすればいいものを、東黒沢からにこだわった。前回は増水で時間がかかったという刷り込みだ。東黒沢に入ると平水だった。前回は足元ばかり気にしてあまり楽しめなかったが、あらためていい沢だなあと思いながら最初は気持ちよく歩くことができた。

樹林の中はよかったが、二俣を過ぎて陽にさらされるようになると暑さがこたえ、とたんにペースダウン。広河原で焚き火して帰ってもいいかななんて、辛くなると弱気になったりもした。それでも丸山を乗越し枝沢を下降してウツボギ沢に出た時は気持ちも回復。少し時間は押しているけれど大石沢出合まで頑張ろう。

とくに悪いところはないけれど、たしかに増水すると苦労しそうだった。登れない滝には必ず明瞭な巻道がある安心感がいい。1時間ほどのつもりだったが、やはり予定オーバーでようやく大石沢出合へ。手前にテン場があると思っていたら、沢よりも一段高い平地という自分の見立てでは見当たらなかった。出合の滝と大岩をこえた左岸に適地を見つけた時はホッとした。もう5時近かった。

夜中に小雨予報もでていたのでタープをはり焚き木集めに時間をかけた。小一時間ほどでなんとかかき集め焚き火ができてよかった。いつもより遅い時間の食事だったので暗くなるのも早かった。これからどんどん日が短くなっていく。同時に空が稲光で明るくなり遠方に雷鳴が聞こえた。やっぱり栃木県境方面は予報通りだったようだ。夜は月明かりでとても明るかった。

 

 

 

ナルミズ沢へ

 

 

 

長い一日になりそうなので6時前には出発する。イメージ通りの水のきれいなナルミズ沢だ。魚止ノ滝手前で先行者に挨拶。昨晩私たちのテン場の少し上流に泊まったご夫婦らしい2人パーティで20年ぶりとか。滝を越えると正面に顕著なピーク地蔵の頭があらわれ解放感が高まる。二俣を右へ進むと右岸にこれぞテン場というキャンプサイト。最初の単独遡行で泊まったところだ。10年ほど前にはここまで進めた。おまけに白毛門経由で3時半には土合駅に着いたのだから我ながらたいしたものだと感心する。

ナメが続くがコケで黒ずんでいるのが特長だ。いくつか小滝を越えると次第に源頭の様相となる。奥の二俣を左に進むと草原の中を流れる小川風情となり、沢沿いには踏み跡がつづく。なん度歩いても感動的で、この景色を見てこの景色の中を歩くためにやって来たような気持ちになる。

笹藪の稜線に出る前に源頭を見下ろす草地に腰をおろし、しばらくお茶をしながら景色を楽しむ。先行パーティが早い足取りで大烏帽子山に登っている。どんなコースで戻るのか興味をそそられながら私たちはジャンクションピークへ向かう。かつて登山道があった尾根なので足元は開けている。とはいえ次第に足取りが重くなり登山道に合流したところで倒れ込んでしまうほど疲労困憊。

 

 

 

 

 

 

ジャンクションピークから宝川分岐まではほんの一時の気持ちのいい稜線漫歩。分岐を過ぎたところの水場は3年前と違ってほとんど涸れていた。夏場はあまりあてにしないほうがよさそうだ。休んでいると半袖半ズボンの若者が水場をきいてきた。なんと、巻機山まで縦走するつもりが大烏帽子山から先の藪に阻まれて引き返してきたという。その大胆(無謀)さにびっくりすると、藪漕ぎ中は雨具のズボンを履いたとの返事。

休んでばかりいる私たちだったが、出会った人たちはみな健脚だったな〜。登山道から大石沢に下るやザックを放り出して沢に入り顔を洗ったり水につかったりして生気を取り戻す。少しだけ沢を歩いてテン場にもどり帰り支度。ここで二日目の行動を終えるのが正しい沢旅のあり方のはずだが、なぜか今回は下山するという根拠のない決意でいた。

やっぱり長かった。宝川を渡渉してからの登山道はわかっていても嫌な道で心の中でなんども悪態をつく。藪に埋もれた林道に下ってからは暗闇との競争となり、板幽橋を過ぎたところでヘッデンをつける。おまけに、しばらくすると踏み跡程度の小径となって下っていく。そんなはずはないので道を外したと思い引き返すがわからずしばらくうろつく。暗闇迫る中心細くなるが、道があるのだから辿るしかないと引き返して下る。するとロープがでてきて再び登り始め林道に合流。なんの情報もなく歩いたけれど、どうも崩壊の迂回路らしかった。その後も一箇所崩壊箇所があった。

ようやく宝川温泉の灯りが見えた時には安堵した。電波が通じるようになったのでタクシーを呼ぼうとしたがつながらなかった。困ったもののテントがあるのでなんとかなると思い悲壮感はなかった。宝川温泉に電話をして事情を話すとタクシーはないのだと言われた。宿泊できるかどうか聞いたところ空き部屋があるからいらっしゃいとの温かい言葉。大いに感謝し汚れた沢靴のまま汪泉閣の玄関に入り、温泉に直行したのだった。

 

 

今回でナルミズ沢は5回目なので、沢遡行の記録はこれまでの記録で記載済みのため省略しました。

白毛門登山口9:00ー白毛門沢出合10:15ー丸山乗越14:00ーウツボギ沢出合15:00ー大石沢出合幕営地16:50//5:30ー奥の二俣ー大烏帽子山の鞍部8:45/9:00ージャンクションピーク11:00/11:20ー宝川温泉分岐ー大石沢14:00/15:00ー宝川渡渉点16:20ー宝川温泉20:00