ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.08.29
関川黒沢〜火打山
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2023年8月22-23日

初めての山域、妙高の黒沢を遡行し火打山へ登ってから一週間が過ぎた。ようやく重い腰をあげて記録を書かねばとパソコンに向かっている。疲れが溜まっているのかな。その上猛暑続きで夏バテしてる。以前なら初めての山は新鮮な気持ちで思いがあふれて書くことができたのになあと、ため息もでてしまう。

yamarecoやyamapなどのサイトでは連日山行速報があふれ、ほとんどリアルタイムで山の情報を得ることができる時代になっている。みんなどうしてそんなにすぐ記録が書けるのか。sooner the better の発想なのか。たんに自分が何事も動きが鈍くなっているだけなのか。あれこれ思うことはあるが、あくまで going my way で自分のやり方で記憶を記録しつづけようと思う。そしてブナの沢旅も、以前の山行やスタイルにこだわらず今の自分に見合った山旅のあり方を見つけたい。こんなことをしみじみ思うのも、沢の記録を時々読んでいた同年代の女性が、私にとってはグレードが高い沢で事故死したことを知りショックを受けたからだった。

前回のナルミズ沢では下山に時間がかかり、こういう沢旅はもう無理だと感じさせられた。帰宅後の疲労と暑さで気力が失せたまま夏が終わるのも寂しいと思い、軽めの沢と山歩きを計画した。ただ山はどこも連日午後になると雷雨予報がつづいたためテント泊はさけようと、山小屋が利用できて当日発が可能な山を探したところ、いつもとは違う山域も悪くないと妙高の関川水系黒沢を選んでみた。

なので何か思い入れがあるわけではない。けれど、最近は安心安全から同じ沢ばかり選んでいたので、たまには面白いかも。出発前には気持ちも楽しみに変わっていった。北陸新幹線の「かがやき」に乗ると長野までは大宮からノンストップで早い。そこから在来線で妙高高原駅で下車してタクシーで笹ヶ峰登山口から歩き始めたのが9時過ぎ。もっと遠いと思っていたけれど意外と近い。西黒尾根から歩き始めるのとほぼ同じ。つくづく南会津は遠いと思う。

しばらくは散策路のようなブナ林の道を進み、黒沢橋から入渓する。予想以上に水量が多くいきなりの巨岩で最初は少し緊張する。しばらくすると少し落ち着いた苔むした大岩ゴーロ帯となり渓相は悪くない。もともと事前情報では沢登りの対象となるような「面白い」沢ではなくロープも不要な歩く沢とのこと。

水に積極的に浸かった方が進みやすいので夏向きの沢だと思った。虫もいなくて快適。最近は何もないゴーロ沢にも安らぎを感じるが、ここは大岩が多いので少々アスレチックではある。小屋泊まりなのでザックは日帰り沢装備でよかったと思う。中流部に見栄えのする滝があらわれる。一見登れそうにないが左壁をフリクションをきかせて快適に登る。続く二段滝も左が階段状だ。

その後もゴーロ滝がつづくが、いずれも容易に登れて楽しい。そんな感じで前半は予想以上に見どころもあり順調に進んだのだが、後半は地図で等高線が緩やかなところでも大岩が続くため疲れてペースが落ちてきた。最後は、あの岩を越えたら平になるかなと、かすかな期待を抱きつつ裏切られつつ源頭部へ。

ようやく2000mに近づいたところで突然小川風情となり、沢は草原に吸い込まれるように黒沢池に消えた。登山道が横断するところで沢を離れ気持ちのいい草原でザックを下ろし靴を履き替えた。後半時間がかかったが遡行し終えた安堵と満足感に満たされ、けっこう面白かったね、と。ここからはまさに天国のような小径がつづく。夏の花は終わりかけ、オオヤマリンドウが沿道を飾っていた。すぐに今宵の宿、黒沢池ヒュッテの青い屋根が見えてきた。

黒沢池ヒュッテについてもそれほど情報を得ていたわけでなく、ドーム型のユニークな建物で、ル・コルビジェの弟子が設計したというところに目が止まった。というのも家の近くの図書館がやはりコルビジェに学んだ建築家による設計ということで、以前から関心を持っていたからだ。食事や宿泊などについてはともかく、歴史のあるユニークな山小屋だった。

 

 

 

 

 

 

山小屋の朝食は4時半と早い。二日目は火打山に登る。黒沢池ヒュッテに泊まるので妙高山も考えたが、より登りやすくて途中に湿原と池塘のある火打山にした。どちらも百名山とのこと。当初は二日目は火打山から黒沢橋に下り、そこから初日にパスした黒沢のナメが多い下流部を下降するなんて計画を立てたのだが、前日のアスレチックな黒沢遡行の最中に早くも明日の沢下降なんてあり得ないと意見が一致。

なので気楽なハイキングだ。雲がたなびく妙高山を見渡しながら茶臼山を越え1時間ほどで高谷池ヒュッテに近づくと池塘が連なる美しい光景が広がる。高谷池ヒュッテの方が人気があるようだが、今年は渇水のため新規予約の受付が停止されていた。高谷池に続いて天狗の庭と呼ばれる池塘群もとても美しく、むしろ前日の黒沢はこの景色を見るためのバリルートだったと思えるほどだった。これから登る火打山と奥にかすかに煙を上げている焼山を見渡す。

鬼ヶ城という恐ろしげな名前の赤ちゃけた岩壁を見渡しながら緩やかに登ると雷鳥平の平地となる。雷鳥生息地回復のためのイネ科植物の除去作業を行う方々が休んでいた。この頃からガスが出始め山頂が見えなくなる。もう少し早く出発すればよかったのだが、ピークハンターではないし、プロセスを楽しむ派なのでまあ、いいっか。とはいえ時々太陽が頑張って顔を出すものだから30分ほど山頂で粘ってみる。その間に登山者が何人か登ってくるが、中にはいかにも100名山ゲッターらしく、ひたすら山頂標識の自撮りに精を出してすぐに去っていく人もいた。

2回目の朝食をとって火打山を後にする。山頂のガスは取れなかったが下るにつれ再び展望が広がり二度楽しい思いができた。高谷池ヒュッテからの下山路も大岩ゴロゴロの歩きにくい道ながら続々と登山者が登ってくる。平日なのに人気の山なのだなと思う。12曲がりの急坂が終わるとブナ林が広がり黒沢橋へ下った。思わず、ただいまー。

ちょっと辛い下山路だったが、ここからは快適な散策路だ。途中の枝沢でザックを下ろし、顔を洗ったり水を飲んだりして火照りを鎮め登山口に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笹ヶ峰登山口9:10ー黒沢橋9:55/10:20ー登山道横断点15:20/15:45ー黒沢池ヒュッテ16:15//5:15ー天狗の庭6:40/6:55ー火打山8:00/8:30ー高谷池ヒュッテ10:00ー黒沢橋12:10ー笹ヶ峰登山口13:05