ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.11.04
武尊山麓夜後沢
カテゴリー:備忘録

2018年11月4日

遠出の沢もそろそろ終わりの季節となったので、晩秋のしっとりのんびりした沢歩きを計画した。ん?そういえば、晩秋に限らず最近はいつものんびり沢歩きだ。そこで岡田敏夫氏の「上州武尊山」の中で紹介されている夜後沢を選んでみた。あまり記録はなく、どうも地味な沢らしい。ここはひとつ自分の目で確かめてみるのも悪くない。それに沢をたどって玉原の美しいブナ林を歩くというのもブナの沢旅にぴったりだ。

夜後沢へは水上駅から湯の小屋行きのバスがあるが、下山時間が読めず乗り損なう不安があったため上毛高原駅からレンタカーを使った。下山地点であるバス停一つ手前の長沢橋ゲート前に車を置き、夜後沢橋まで車道をあるく。藤原湖周辺の紅葉がちょうど見頃でとてもきれいだ。夜後沢橋をわたった右岸沿いの踏み跡をたどる。見下ろす夜後沢は小ぶりながら小滝を連ねている。

地図で大滝と書かれているところまで踏み跡のような径路をたどるのだが、最初に見えた6m直瀑で一度沢に降りてみた。登れる滝ではないので巻き道を探すと径路が上に続いてトラロープがかかっていた。以前はここにアルミの梯子があったらしい。しばらく斜面をからむように径路をたどると二俣となり本流に6m直瀑がみえてきた。下からはよく見えないが2段滝で、ここが大滝のようだった。

径路は枝沢側から大滝を高巻くように付けられていた。途中少しだけ上段15m滝が見えた。最初から呑気に構えていたせいか予想外の「難路」だったので、大滝を越えて沢に降りたときはほっとした。ここからが目論んでいたのんびり沢ハイキングの始まりだ。最初は平凡な平瀬だが、日が差して残りの紅葉がきらめいている。今の時期、こういう光景だけで心が和む。岡田本では、1980年に遡行した際、夜後沢が伐採によって魅力が半減してしまい残念だと書いている。確かに植林帯があらわれ、とくに右岸はしばらくスギ林が続いていた。

 

植林帯を流れる平瀬の沢。こんなものかな、でもまあいいや。最初はそんな思いで歩いていたが、中盤からナメがあらわれ始めた。さらに2段8mほどのナメ滝が前方に見えてきた。何もないとこんな所でもテンションが上がる。左側を小さく巻くようにして登る。ナメはさらに滑らかになり、悪くないなと思わせる。しばらく続いて一旦平瀬になるが、小さなギャップを巻いて沢に戻った所で、ちょっとした感動を味わう。

沢の景色が変わっていたのだ。いままでよりはるかに沢幅が広がり、はるか先まで沢幅いっぱいのナメが勢い良く流れていた。思わず、まるで別の沢みたいと仲間に相づちを求める。揚々とした気分で靴底をしっかり踏みしめながらどんどん進む。そうしないと滑りそうだから。ナメは途中ゴーロをはさんでいつまでも続いた。これはほんとうに意外なことで、前半の平凡な「ただの小川」的な思いはどこかにふっとんでしまった。

ハイライトのナメが収束したのちはふたたび穏やかなチャラ瀬となるが、両岸は開けた自然林で雰囲気がいい。1100mの二俣で平坦な草地に上がると造林小屋跡で、レンジ台やら細かな台所品が散乱していた。ここは右俣へ進むが、次第に沢床がゴツゴツしてきたので沢沿いの段丘を進む。すると何の木だろうか、広くはった根の中が空洞になっている巨木マザーツリーがあらわれた。ひょっとして玉原一の巨木ではないだろうか。そしてこの後は踏み跡がでてきた。

左岸には台地が広がり、今まで見られなかったブナが目立つようになる。青空のもと、シダの緑と白いブナの樹肌、木々の紅葉が太陽の光をあびてチャラ瀬を引き立てている。華やかさとは違う自然の美しさが感じられてとても居心地がいい。つづく二俣は登山道に近い右沢に入るが、次第に小さな流れを笹薮や倒木が覆うようになって進むのに苦労する。

 

 

このまま沢を詰めると時間がかかりそうだ。藪をさけて左岸の尾根に這い上がる。すると径路のような踏み跡があり急斜面ながら楽に登って広いポコについた。あたりは一面ブナ林で足元は笹薮だ。だだっぴろい笹薮をコンパスで方向を定めて進み登山道にでた。午後からは暗雲がちらつき始めどんよりとした空模様にかわっていた。紅葉のシーズンがおわったせいか日曜日だというのに誰もいない。

笹やぶを漕いだあとなので、とても歩きやすい立派な登山道をブナ平に進む。何年か前に新緑の時に歩いて感動したところだ。1302mの三角点を通り、玉原越えから長沢橋へと下る。玉原のブナ林はすっかり落葉していたが、下るにつれ紅葉が鮮やかになる。道は沢沿いをジグザグ下って行くが、途中で20mくらいの2段2条の美しいナメ滝を見る。枝尾根に何箇所かテープがついていたのは、きっとこの滝を見るためなのだろう。最後は車道を30分ほど下ると長沢橋に置いた車が見えてきた。

あまり期待もなく歩いたし、一般的な沢登りからみれば物足りないだろう夜後沢だったが、シニアなブナの沢旅的にはなかなか好ましい沢だった。大滝までの径路もわかった。最初の植林帯の小川をやり過ごせばすてきなナメがずっと続く。あとはブナ林の広がる台地から沢を離れて登山道にでれば、とても素晴らしい日帰りブナの沢ハイキングとなる。いつか新緑の時にまた行きたいと思った。

 

長沢橋9:00ー大滝上10:10ー8m滝11:15ー巨木12:15ー登山道14:00ー長沢橋16:30