ブナの沢旅ブナの沢旅
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2017.11.10
神子内川手焼沢
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2017年11月7日

 

一度はあきらめた沢納めだったけれど、このところ穏やかな晴天が続いていることもありやはり気になる。日帰りの歩く沢なら大丈夫だからと半ば自分を騙すように急遽沢納めを決めた。足尾の手焼沢は、私の足尾山塊のバイブルである「皇海山と足尾山塊」で穏やかな1級の沢として紹介されており、以前からリストに入れていた。

著者の増田宏さんによると、周辺の字名は槻平であり、槻と欅は同類なので欅沢が正しい名称だろうと。欅沢が毛焼沢と宛字され、毛が手に誤転写されて手焼沢になったのだろうと推測されている。地名のこういういわれはよくあることなので、さもありなんと思う。

日が長い季節ならば朝発で間に合うが、もう11月も半ば近く5時になると真っ暗だ。ちょっとおっくうだけれど前夜発で日足トンネル出口の駐車スペースにテントを張って仮眠した。夜中でも意外と交通量は多く、道がカーブするあたりに駐車スペースがあるので、まるで駐車スペースに飛び込んでくるような錯覚を覚え恐ろしい。とはいえ、前日友人達と温泉旅行から帰ったばかりの足で出発したため疲れてすぐに熟睡。

トンネル口脇にある地蔵滝にいくかつての遊歩道を進む。地蔵滝とその上の堰堤を巻いて沢に降りるとすぐに手焼沢と長手沢の二俣となる。左の手焼沢には滑車のぶら下がったワイヤーロープがかかっていた。沢は初めから開けて穏やかだ。しばらく行くと両岸に石垣がみえ、さらに石積みの堰堤があらわれる。大きな黒い石が整然と積み重ねられ美しささえ感じられる。右岸から巻いて進むと次第に沢に日が差し始め、名残の紅葉が鮮やかさをます。

小さな淵を持つちょっとしたゴルジュを左壁から越えるが、ここで肩に力をかけたくないためロープを出してもらう。できるだけ右手は使わないようにしている。そういえば以前最初の山の会で岩トレに参加した時、ベテランさんが簡単な岩を片手で登る練習をしていたことを思い出した。(もちろんバランスをとるためには両手を使うが。。)

前半は7m滝や小滝がつづくが、どれも容易に越えることができ、両岸はひらけて明るい。左手に2段組みになった立派な石垣が見えるが、何の目的か興味をそそられる。1135mの二俣は5m滝を落とす右へ進む。近づくと見かけよりも簡単で、その上の6mも力をかけずに左側から登った。沢はおおむね大岩ゴーロで平凡だが、両岸がますます開け、太陽が草木を輝かせていてとても雰囲気がいい。小滝でも結構大きい釜があり、水がとてもきれいだ。

つぎの二俣も右へ進むとトイ状のナメがあらわれる。その後も小滝とナメが続く。顕著な6m滝は一見濡れそうに見えたが、近づくと右からうまく登ることができた。次第に小川風情の流れとなり源頭部では両岸は笹が生い茂る緩やかな斜面となる。1500mを過ぎて水が涸れ始めたところで靴を履き替える。隣の長手沢を下降して入渓点に戻るコースが一般的だが、肩のこともあるし、手焼沢と長手沢の中間尾根を下ることにしていた。

 

 

適当なところから沢を離れ、ひと登りして登山道にでた。落葉した樹林の間からは中禅寺湖と周りの山並みを覗き見ることができる。半月峠まで登ったところで、もう少し先に展望地があるらしいと先に進んでみた。正面に男体山がどんと構えて見える。展望地はまだ先のようなので明智平分岐で引き返し、半月峠から登山道のロープをまたいで笹やぶの尾根を進む。

しだいに笹も薄くなり、何となく踏み跡もあったりして予想以上に歩きやすい。途中少し登り返したポコは思わぬ展望地。予想外のことで嬉しくなり、ザックを置いてしばらく日向ぼっこの休憩をとる。男体山と中禅寺湖、その先にはうっすらと白い白根山。半月山から社山へと続く尾根も明瞭に見渡せる。どのような尾根かわからなかったが、きっと沢を下るよりもよかったはずだと自己満足する。

しばらくは一直線の歩きやすい尾根を下り、地図で要注意点だと感じた1150m地点へ。ここで尾根は突然途絶え沢筋が深く入り込む。略奪点と命名したところだ。少し下って斜面の緩やかなところで窪に降り立ち、反対側の尾根に登り返す。この辺りは紅葉が美しいところだった。さらに尾根を進んで1110mでは微妙に分かれた尾根を外さないよう注意したつもりが隣の尾根を下ってしまう。途中でトラバースして軌道修正したが、おかしいと思いながら引き返さずに間違ったことが情けなくくやしい。

鉄塔があらわれたところで明瞭な巡視路らしき道があり、ジグザグに下って長手沢側の二俣出合に降り立った。手焼沢はわざわざ東京方面から出かけるほどではないかもしれない。けれど明るく開けた溪相が好ましく、下った尾根も歩きやすく多少の読図もできる。ささやかではあるが、穏やかで心休まる沢ハイキングで今年の沢を締めることができたことを青空と仲間に感謝したい。

 

日足トンネル出口駐車地点7:10ー手焼沢出合7:25ー1135m二俣ー稜線12:30ー明智平分岐13:00ー半月峠13:15ー半月峠南尾根ー手焼沢出合15:50ー駐車地点16:00