ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.03.20
舟鼻山~御前ヶ岳と斎藤山
カテゴリー:雪山

2014年3月20−21日

 

 

久しぶりのブナの沢旅で南会津を計画していたところ、わらじの仲間のEさんから三引山から博士山山行のお知らせをいただいた。昨年3月に同じ山域の舟鼻峠から神籠ヶ岳を同日同ルートでたどった奇遇がご縁の交流山行だ。予定していた日程が1日ずれていたので別パーティとして合流する形で参加することにした。

三引山から博士山は21-22日の1泊2日の日程だが、私たちは20日入山の2泊3日予定だったので1日目をどうするか検討。都合で前夜発がかなわず時間的に中途半端なのだが、舟鼻峠から入山してあの茫洋としたブナの森で泊まりたかった。そのために山中で合流するという厄介な条件を受け入れてもらい当日にのぞんだ。

と、期待の大きな楽しみな計画だったが、天気予報は絶望的に悪かった。恨めしい思いだったが、今回は交流会なのだと気持ちを切り替え、小雨の東京駅に集合した。いつものことだが、山行前は慌ただしさも手伝っておっくう感が漂うが、電車に乗ってしまえば山モード全快。Yさんとは久しぶりの山なので話がつきない。

新白河駅からレンタカーで田島経由の舟鼻トンネルへ向かう。こちらはまだ西から押し寄せる雨雲が届かず曇り空。舟鼻トンネルにつくと懐かしさがこみ上げる。昨年は3月4月の二回にわたり、ここが我が南会津のブナの山旅の出発点となったのだ。

雨ならばこの辺りの民俗資料館や苧麻の里などを見てまわろうと思っていたが、時折小雪が舞うほどなので空身で舟鼻山辺りを散策することにした。

シューをはいてトンネル脇の斜面から取り付き、まずは舟鼻峠へ。去年の4月に初めて通ったときは、峠の開放的な空間と青空とブナの霧氷のハーモニーがとても美しかった。峠道の脇にあった石の社を探したがみつからなかったので、きっとまだ雪に埋もれているのだろう。カーブミラーが辛うじて雪面から頭を出していた。

あたりはうっすらとガスがかかっている。前回は青空だったから違う雰囲気が味わえていいなどと、負け惜しみの言葉をつぶやきながら緩やかに伸びる尾根に取り付く。林道を横断すると傾斜がきつくなり、少し頑張って登ると再び林道へ乗り上げる。

ここから上は登れないのでしばらく林道を歩くが、途中からは完全に雪の斜面になる。少し気をつかいながらトラバースして山頂の一角の緩やかな尾根にのる。すぐにだだっ広い雪原となり、コンパスで地図の山頂を目指して進むが、この逍遥感がなんともいえずに好きなのだ。モノトーンの世界なのだが、伐採を免れた端正なブナが集まっている所で不思議な感覚にとらわれる。空と雪面の境がわからない真っ白な背景の中で苔のついたブナの幹が、まるで3Dメガネをかけたときのように浮き上がって幻想的。

2度目の舟鼻山なので地形をつかんでいるせいか、天気が悪くても足取りは早い。山頂らしき小さなポコに乗って時間を見るとまだ昼前だ。悪天予報のため、当初は舟鼻山の往復と控えめに考えていたが、小雪が舞うくらいなので御前ヶ岳まで足を伸ばすことにした。このころから小雪が小雨に変わっていたが、気になるほどではなかった。地形はどこもかしこも穏やかで、茫洋とした雪原の大海原の波間をぬって歩く。所々尾根が判然としないので読図の楽しみもあり、ブナもたくさん残っていて予想以上にいいコースだ。

ようやく前方に山らしい形が見え、ひと登りでこんもりとした御前ヶ岳の山頂へ。標識はたぶん雪の中なのだろう。山頂の片隅の木にテープが下がっているだけだった。視界はなかったが、悪条件の中で御前ヶ岳に登ることができたのは収穫だった。

少し下った木陰で休憩後、自分たちのトレースをたどるが、帰りは舟鼻山をパスしてショートカット。林道から急斜面を下るところでは逆にジグザグの林道をたどって回り道をしながら舟鼻峠へ下り車にもどった。

地元の予報では山は終日吹雪だという。山岳会の人たちはこういう天候でも入山するのだろうか。初めてで行動パターンがわからないため、Eさんに一応予定通りに集合するつもりであることをメールして一日を終えた。

翌朝は5時半に集合。すでに三引山での合流はあり得ないと思いながら再び舟鼻トンネルへ向かう。トンネルを通過するたびに天候は悪くなり、舟鼻トンネルを出ると吹雪いて視界もあまりない状態だった。入山はあきらめ、Eさん達が下山予定地の琵琶首に車をデポする為に通過するのを待つ。ここは携帯が通じないのだ。その間みるみるうちに道路は雪で真っ白になる。

逃してはならじと、通過車を止めるがそのたびに違って恐縮する。3度目の正直でようやく目当ての車2台がやって来た。とんだ天気になってしまいましたね、という雰囲気を互いにただよわせながら、初めましてのご挨拶。Eさんはじめ、まほろば山岳会のMさん、会津山岳会のKさんの3人パーティに、さっそく口火をきる。私たちだけならこんな天候の山行はあり得ず中止するが、みなさんが行くならば出発点から同行すると。

するとEさんはニヤニヤしながら、自分たちはブナの沢旅組が行くと言ったらどうしようと思っていたとおっしゃる。Kさんも、地元ではこんなときは山に入らないと。ということで、互いに中止したいけれど相手が行くと言ったらどうしようと心配していたことがわかり、みんなでホッと笑い合って一件落着、中止となった。

さっそく田島にもどってKさん宅に寄せてもらう。お宅はわらじの南会津山行のベースになっているらしい。さっそく挨拶がてらの話がつきないが、時計を見ればまだ9時前。外は時折青空が出るような天気。こうなれば自然とどこか山へ行きたくなるものだ。周辺の山を熟知しているKさんにおまかせ気分で選んでもらい、斎藤山に決まる。伐採でズタズタになったけれど山頂付近は立派なブナが残っている会津百名山の山だと記憶していた。こういう時でないとわざわざ行きそうにないので、ちょうどいい機会だと思った。

途中のコンビニでKさんが2万5千の地図をコピーして皆に配布してくれた。植林帯の林道歩きが長いが、とにかく会津の山に登れるのだ。沢沿いを進み二俣から急斜面に取り付く。稜線に近づくと傾斜が緩みブナ林となるが吹雪いて視界も悪くなる。尾根は雪面がデコボコのためスキー組はツボ足で登る。吹雪で頬が痛くなるわ、手がしびれてくるわと、予想外の苦戦。田島の裏山ハイキングだと軽く考えていたバチあたりなのかな。這々の体で風よけになる電波塔の下へ逃げ込む。視界もないので山頂間近でも誰も行こうと言わない。山頂についたも同然としてそそくさと下山する。

途中、中が空洞のブナの大木でEさんが中に入って写真を撮ってもらっていた。こんなときでも余裕だなあと、なかば呆れてなかば感心。私も負けじと中に入ってみる。見上げると異次元空間が空に突き上げ面白い。シューを履いていなければ突っ張りで登りたくなる所だ。などと、ひと遊びして下る。急斜面の下りはシューを脱いだら楽になった。

下るにつれ再び青空が広がり、振り返ると電波塔の山頂が見えた。展望はなかったけれど、稜線のガスで霞んだブナ林は雰囲気があった。奥田博さんが「福島百山紀行」でいう頂上付近での「会津の山の風格」の一端を感じることができた。そして斎藤山には、礼節を持って出直してこいと会津の山の意地を見せつけられた思いだった。

この日は私たちもK邸に泊めてもらうことになった。地元の日帰り温泉で温まり、スーパーでつまみの馬刺を仕入れ、こたつに入って先ずはビールで乾杯。山行が中止のためメインイベントに昇格した交流宴会となる。何しろ歴史のある会のメンバーばかりなので、まずはランダムに広く浅く話題を拾って突撃レポーターとなる。

ブナの沢旅は諸先輩方の足跡を追っているとも言えるので、これを機会に交流が続けばいいなと思う。Eさんからはあれこれと山行プランをいただき、Mさんとは季節が変わったら沢へ行きましょうとなった。Kさんからは今度じっくりと会津の山にまつわる山歴や語り聞いたエピソードの数々を聞かせてもらいたい。あれこれ期待がふくらんだ交流会となった。

 

20日 舟鼻トンネル10:30−舟鼻山12:10−御前ヶ岳13:50−舟鼻トンネル16:10

21日 あかまつ荘入口9:40−電波塔12:35−あかまつ荘入口14:50