ブナの沢旅ブナの沢旅
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2014.03.22
鎌房山~大白森
カテゴリー:雪山

2014年3月22日

 

三引山から博士山が中止となった為、交流会の翌日はみなさんと別れ羽鳥スキーリゾートへ向かう。前夜のうちに急遽代案を検討し、天気が良さそうな那須連峰方面から2年前に強風ラッセルで中退した大白森に決めたのだ。

出発するときは田島も晴れていた。会津の山並みが輝いて見えるのに離れていくのが心残りではあったが、目先のお日様に惑わされてはいけない。来年はきっと歩くぞーと思いながら観光地のような羽鳥スキーリゾートへ。

最長のリフトに乗るとあっという間に1280mのゲレンデトップへ運んでくれる。高速なので降りるときが心配だと、近づいた所で大きく手を振ってスタッフに待機してもらったのに、やっぱりちゃんと着地できなかった。どうしてだろう、苦手でしょうがない。

なにしろ急遽決めたので地形図はなくGPSの地図だけが頼りだ。といっても、地形図があってもすぐにGPSに頼っている昨今ではあるけれど。。電波塔への林道は一旦かなり下るのだが、途中でわからなくなったので、だだっ広い尾根の方角だけ確認して電波塔をめざす。ここからは切り開かれた道が明瞭となる。

もっと人が入っていると思ったが、単独者のトレースがあるだけだ。途中でその単独者とスライドする。鎌房山の往復らしいがガスで展望はなかったといってそそくさと下って行った。確かに麓は晴れていたのに上は雲に覆われている。けれど予報は曇りのち晴れなので、大白森につく頃にはきっと晴れるはずと念力を入れる。淡々と進んで今回の出発点である鎌房山へ。ラッセルがなかったので前回よりも1時間半ほど早い。

少しずつガスが晴れて大白森方向の尾根筋が見えるようになった。尾根を確認して鞍部へ下ると霧氷のブナが美しく、ようやく出会えたと思う。鞍部から明瞭な尾根に乗るまでがわかりにくい。北面の谷側はカラマツの植林だが、広い尾根は伐採を免れたブナ林がつづく。ルートの確認もそこそこに予想外の美しさに足が止まって進まない。足が動いてもあちこち寄り道ばかりとなる。

一度1498mに登り返して下るといつの間にか大白森が近づき、ブナ林から灌木帯、そして無木立の真っ白な斜面となる。傾斜はそれほど強くないが、遮るものがないというのは精神的によろしくない。その上風で斜面はクラスト気味。早朝だったらアイゼンにかえたかもしれないが、なんとかシューのギザギザが食い込み、緊張感はいつしか爽快感に。最後は声を出して気合いを入れながら山頂の一角へ乗り上げる。

低灌木はミニモンスターとなり、3月下旬だというのに真冬の様相だ。かなりの強風だが広い尾根なのでなんとか踏ん張れた。もともと風に弱いので、これ以上の強風または痩せ尾根だと撤退したかもしれない。

一足先に山頂についた仲間がストックを持った手を上げている。風に煽られながらも2年越しの大白森山頂へ。宿題をやり遂げた気分となる。さすがに360度の展望はすばらしく、去年一昨年と2年続けて行った旭岳がカッコいい。昨年歩いた甲子山から坊主沼への茫漠としたブナ林を見渡す。

小白森の奥にはまだ登っていない大戸岳。何年か前に男女川を遡行して尾根を越えた時、ここをたどると二岐山に行けると思ったのだが、同じ尾根を南方向へたどれば大白森ともつながっている。山頂から会津の山々を見渡すとつぎの山が見えてくるものだ。

旭岳の山頂から大白森を見下ろした時は、低くて丸っこい凡庸な山にみえた。だからその時はもう登らなくてもいいかな、なんて思ったけれど、山はそんな単純なものではないと当たり前のことを感じる。

もっと山を眺めていたかったが、強風には勝てず往路をもどることに。無木立の斜面を下る所でアイゼンとピッケルにかえる。大白森は山スキーの記録が多かった記憶があるので、こんな斜面を下るのかとスキーをするsugiさんに聞いた所、これだけガリガリしていると流されてしまうとのこと。もっと早い時期がいいのだろう。そのせいか、スキーヤーもトレースも見当たらなかった。

樹林帯にはいると途端にもぐり出したため、シューに履き替える。予想通りこの上ない青空が広がり、霧氷のブナ林がさらに美しく見える。これまでの悪天と足して2で割ってもおつりがくるほどだと喜ぶ。霧氷の枝をよく見ると完全に氷に覆われその上に白い霧氷の花を咲かせている。霧氷がとけた枝では氷に包まれた冬芽がまるで永久保存のアートのようだ。そして頭上では、氷の枝が風にそよいで淡い風鈴の音のようにカランコロンと鳴っている。夢心地の境地だった。

同じコースをもどる場合そそくさと下山する場合も多いのだが、これが見納めの予感がするのか、足が進まない。大きなダケカンバの根元が風よけの窪になっていたので、おやつの休憩。寝っころがって上を見上げると青空と流れる雲を背景に氷細工が煌めいている。と、我ながらしつこく書いていると自覚。。

ということで、往路と同じくらい時間をかけて鎌房山へもどるが、途中別の明瞭な尾根に引き込まれそうになったり、山頂がわからなくなったり。大した違いは生じないが、風でトレースが消えてしまうとわかりにくい地形だ。

樹林帯を抜けて明瞭な林道に出たところでようやくいつもの下山モードとなる。灌木を覆う氷が残照で煌めき、まるでダイヤモンドをちりばめたように見えたのが珍しかった。一生懸命写真に撮ろうとしたが、素人の腕とコンデジでは無理のよう。

最後はゲレンデ脇を淡々と下るが、時々スキーヤーがきれいなフォームで下って行く。仲間にあの人上手だねとか、カッコいいねなどと言うと、あのくらいは自分でもできると返ってきた。ならばスキーの姿を見てみたい、そしたら見直すかもね、などと軽口を言いながら駐車場にもどった。

 

 

 

 

ゲレンデトップ9:00−鎌房山10:15−大白森12:15−鎌房山14:30−駐車場16:10