ブナの沢旅ブナの沢旅
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2013.10.06
檜枝岐川下ノ沢
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2013年10月6日

 

かねてから、下ノ沢はルートを選べば藪こぎもなくフィナーレは草原を詰めて駒ノ小屋下に抜けられると聞いていたので、機会を捉えて行きたいと思っていた。そして今年は遅くまで雪渓が残っているので夏よりは秋がいいだろうと思っていた。週末の天気はあまりよくなかったが、新潟方面は晴れマークがでていたので、むしろ関東地方でくすぶっているよりはいいかもしれないと下ノ沢へ行くことに決めた。現地で天気が悪ければ、また実川奧の沢に行けばいいと、気軽な気持ちで現地へ向かった。

前夜田島駅で待ち合わせ、アルザ尾瀬の郷駐車場にテントを張る。東武線浅草駅のデパ地下で買い込んだ総菜と弁当で遅い夕食をとり、お酒を少々。昼間は雨だったらしいが着く頃にはやんでいた。寝る前に空を見上げるとオリオンと北斗七星がくっきりと見える。明日は晴れそうな気配だ。Yukiさんのシュラフが爆笑もので、日清やきそばUFOの抽選に応募したら当たったという宇宙服もどきのシュラフ。さっそく記念写真をとって大笑いしながら就寝。

翌朝は晴れていた。午後から一時雨らしいので早めに出発する。Yukiさんは三度目で一人でもむずかしくはなかったというので最初はそんなモノかと思っていたが、直前になって少しリサーチしてあせる。けっこう手強い滝があるではないですか。日帰りで大丈夫だろうか、前回の西横川が予想より簡単だったので調子にのってしまったかななど、あれこれの思いがよぎる。

竜ノ門の滝入口に駐車して出発。すぐに沢におりると新しい橋が架けられていた。一昨年の豪雨で流されて以来、竜ノ門の滝展望台へ続くこの道は、これまで手前の林道から通行止めになっていたらしい。橋下に以前あった滝はなくなり、代わりに新しい沢筋ができているという解説をきく。

大岩ゴーロを進むとすぐに行く先がゴルジュとなり、その奧に大滝がある気配だが姿は見えない。ゴルジュの両岸は立っていてへつるのもむずかしそうだ。右岸の奧の壁にシュリンゲが2箇所かかっていたが、一つはyukiさんがゴルジュ突破の水遊びをしたときにつけたものだという。もっとも、その時は淵に落ちて戦意喪失したらしいが・・

行ってみるかと聞かれたが、もちろんノーサンキューで、少し手前の巻き道へ這い上がるが、グズグズの斜面で一苦労。少し登ると2段40m竜ノ門の滝の全景が見えてきた。ふうーん。下段は傾斜が緩くて登れるけれど上段は無理とのこと。しばらく眺めたのち、ふたたび高巻きを続けるが、ものすごい急斜面が続く。これでも一部にいやらしいトラバースがある一般的な高巻きよりはマシなのだという。初っ端から緊張の連続で、内心きっとここが核心部に違いないと思う。だってこれ以上たいへんだったらお手上げだから。

やっとの思いで滝上の沢に降り立つ。すると時を同じくして別の急斜面から男性4人パーティが降りてきた。彼らは滝の展望台まであがってしまい、そこから下降してきたとのこと。結構たいへんだったらしい。このパーティとはその後も相前後して遡行することになるが、みなまじめに遡行図かなにか記録をとっていたのが印象的だった。

渓相はあまりパッとしないが、谷に陽が射しはじめ、早くも前方には薄く色づいた稜線が見渡せて気持ちがいい。岩も所々滑っているので気が抜けない。遡行図でいう第1ゴルジュに入るが、どこがゴルジュかわからない渓相をいくと、ようやく上がトヨナメの10m滝があらわれる。よく見ると水流右側はホールドが豊富なのでフリーで登る。続く6mCS滝がくせ者だった。yukiさんがトライするが、のっぺりした滝の落ち口で踏ん切りが付かない様子。後からやって来た4人Pは様子をみて右岸から巻きはじめたので、私たちも巻くことにした。

ふたたびゴーロを行くと開けた二俣となる。二俣の草むらの奧が刈り払いされていてテン場に使われた様子だ。下ノ沢はテン場適地に乏しく、これから上には一見してテン場はなさそうだった。左俣にはいってゴーロを行くと第2ゴルジュとなり、ガイド本の写真にでていた7mトヨ状滝があらわれる。左壁から越えると8mくの字滝となり、左からとりついて右壁を登る。10mスダレ滝は右岸の岩壁から高巻く。途中一箇所ちょい悪のところがあったが、なんとかロープに頼らずに登れた。それにしても予想以上の好天で気温も高く、まさに沢日より。それだけでどんな沢でも気持ちがよくないわけがない。と、ちょっと微妙な言い方かな。

その後あらわれる小滝はいずれも登れる。このあたりから滝が連続するようになり、いつしか第3ゴルジュへ。入口の8m滝へ近づくと先行Pがザイルを出して登攀中だがとても苦労している様子だ。以前は途中にある木にシュリンゲをかけて通過できたのに、今はその木が折れてなくなっているとのこと。時間がかかりそうだし自分も登れるかどうかわからないので、さっさと巻くことに決める。左岸のなんとか取り付けそうな斜面から木登りしてトラバースするがヤブがひどくて苦労する。

ほうほうの体で沢におり、yukiさんからこれでもう悪い所はないと聞いてホッとする。たしかに第3ゴルジュはその後、簡単ではないけれどロープなしで登れるそこそこの滝が連続して楽しい。下ノ沢は第3ゴルジュで得をしている沢だと思う。それまではあまり渓相もきれいでないしゴーロも多かったのだけれど、最後になっていい感じでいろいろなタイプの滝が続いたり深い釜に腰までつかったりと変化があって俄然面白くなるのだ。第3ゴルジュがなかったら最低の沢だけど、結果面白かったなどと書いてある記録もあった。そこまで言うほどではないと思うが、確かにね・・・

1770mの奧の二俣は右俣が10m滝を落としている。一見さえない左俣へ進むとすぐに12m滝があらわれる。かなり垂直に近い滝だが、左壁からあっさりと登ることができた。滝らしい滝はこれが最後で、とたんに源頭部の様相となる。沢自体は何もなく高度を上げていくが、沢沿いはキイチゴが生い茂り真っ赤な実があちこちで手招きする。沢登りは終わったも同然なので急にイチゴ狩りモードとなる。

雲行きが怪しくなってきたので急ごうといいながら真っ赤な実を見ると二人とも無視するのが忍びなく、なんだかんだとビニール袋一杯に収穫。そのままでは酸っぱいのでガラにもなくジャムを作ってみることに。分岐があらわれる度に地図で確認し、最後は勝手知ったるyukiさんの好ルート取りのおかげでほとんど藪こぎなく待望の草原に飛び出した。小さな地塘もある草原は赤く染まっており、前方の稜線には登山者がみえる。少しガスがでてきたのが残念だったが、フィナーレをかみしめるようにフカフカの草地をゆっくり登って登山道へ。

前方の小高い山の上に駒ノ小屋とアンテナが見える。木道の反対側には小さな地塘が点在していてミニ丸山岳のようだ。なんと時間はまだ一時。それほど急いでもいないしイチゴ狩りを楽しんだわりにはスピーディーな遡行だったと思う。ロープを使わなかったからと、水量が少なかったおかげだと思う。Yukiさんにアリガトの握手を求める。終わりよければすべて良し。なかなか変化に富んで面白かったし、自分にとっては少しチャレンジングでいい経験にもなった。

一服して快適な登山道を下る。最初は草モミジの草原と湿原、シラビソ林から下るにつれ色づきはじめたブナの道となる。山頂には行かなかったけれど、まだまだ沢に雪山にと機会はたくさんあるはずだ。下ノ沢はザックが軽い日帰りで計画した方が滝登りを楽しむことができる沢だと思った。(yuki、ako)

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竜ノ門の滝駐車場6:10-竜ノ門の滝下-滝上7:15-二俣8:45-奧の二俣11:35-駒ノ小屋下登山道13:00/13:15-登山口15:00-竜ノ門の滝駐車場15:15