ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.11.03
霧積川墓場尻川
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2010年11月3日

 

奇妙な名前と、ナメがきれいな沢だということで以前から気になっていた墓場尻沢に行く機会を得た。本来は会津の山の紅葉見物を兼ねた沢ハイキングを計画していたのだが、またしても天候の悪化で土壇場の変更となった結果だ。上州方面は今くらいの時期がむしろベストシーズンだし、心配していたヒルの被害もないだろうと考えた末の変更となった。

仕事の都合でいつも直前にしか予定が立たないKさんにも声をかけたところ、奇策を使いなんとかやりくりして参加となった。毒水に行った仲なのだから、つぎは墓場でしょ、という楽しい企画なのだから、そそられるはずだ。車2台となったので、林道歩きの時間を大幅に節約することができた。

前夜、道の駅妙義で待ち合わせる。SさんとKさんは4月の未丈ケ岳以来の久しぶりの顔合わせ。軽く入山祝いの宴会をして仮眠。道の駅の駐車場からは関東平野の夜景がとても美しく、意外だった。

翌朝は車2台で下山地点のめがね橋へ向い、1台をデポしてから霧積ダム先の入渓点に近いいずみ橋へ。墓場尻川左岸沿いの林道を少し歩き、堰堤を過ぎたあたりで適当に斜面を下って川原におりた。

最初は平瀬のゴーロだが、沢が小滝を落として右曲するところから沢幅一杯のナメが始まり、その美しさにみんなで大歓声。予想以上にすばらしいナメワールドが広がっていた。天気も上々で、久しぶりに太陽と共に遡行できそうだ。

ナメは巨大な堰堤で遮られるが、記録で読んでいたので驚きはしなかった。どちらからでも巻くことができそうだったが、私たちは左手の階段状の構造物を這い上がって越えた。堰堤上は平凡な小川となっているが、太陽に照らされた広河原は気持ちがよかった。

すぐに最初の顕著な滝、7mナメ滝があらわれる。右壁に近づくと思いのほか手足がありそうだったので少し登ってみたが、岩がはがれて危ない。見ていた二人もハラハラしたようで、もどって右岸のルンゼから高巻いた。その後もゴーロや小滝、ゴルジュを適度に配置しながらナメが続く。

すると前方に大岩を挟んだ9mCSが見えてきた。左岸が段丘状なので簡単に巻いた。その後しばらくは川原歩きが続くが、あたりの淡い紅葉がきれいで退屈することがない。三俣が近づくと左手に中俣の大滝滝が目に飛び込んできた。一瞬ここを登るのかと緊張したが、さらに進むと左手にも小滝が見え、それが左俣だとわかった。ここでしばらく休憩する。

左俣に入ってすぐの3段12mはやっかいそうだった。下段7mは登れそうな雰囲気だが、上段はツルツルで手がかりがなさそう。ここは右の窪から高巻いたのだが、トラバースできずにどんどん追い上げられてしまう。そこで適当なところで斜面を這い上がると、沢床は恐ろしく下に見えた。

結局我がパーティも、ある記録に書いてあった通りになってしまった。仕方なく足場の悪い急斜面の途中にある大木を支点に懸垂下降。2ピッチでなんとか滝上に降り立った。Kさんがてきぱきとロープを捌いてくれて頼もしかった。

再び美しいナメとなり、しかもかなり長く続く。どうしてこの沢があまり知られていないのか不思議なくらいだ。そういえば、以前も別の沢でそんなことを書いた記憶がある。きっとこれまではナメ沢なんて沢登りの対象ではなかったからなのだろう。淡い紅葉とあいまってそれは美しく、何度も足を止めて光景を目に焼き付ける。

ナメが途切れるとトイ状小滝が続き、15m雌滝が前方に見えてきた。上がハング気味で登れる滝とは思えない。ここは左岸を巻いたが、とくに悪いところはなかった。高巻き途中からは、下では見えなかった滝の上部も見え思ったよりも大きな滝であることがわかった。

古い石積堰堤があらわれ、よくもこのような構造物をこんな所に作ったものだと感心する。最初は雄滝を越えてから昼食休憩の予定だったが、途中沢が二つに分かれて広い中州のような川原になっているところがとてもいい雰囲気だったので、ここで休憩を取ることにした。

さあ、焚き火をするのだと宣言。男性陣に焚き火をまかせ、具だくさんの味噌ラーメンを準備する。最近は沢泊まりでも天候不順でずっとおあずけになっていたため、今回の遡行の不可欠のイベントとして楽しみにしていたのだ。焚き火のにおいや煙に包まれると、ほんとうに気持ちが和み、幸せな気分になれる。

遡行も終盤に近づいたところで20m雄滝の登場だ。フィナーレにふさわしい堂々とした姿に感動する。滝に近づき、撮影大会となる。登山道からこの滝を見るための踏み跡があるようだ。しばらく滝見を堪能してから左岸を高巻いたが、上部は立っていて岩がもろく要注意だった。

多少倒木がでてくるが気になるほどではない。下段がハング滝の石積堰堤を右手から巻き、少し先の斜面を上がると林道にとびだした。とてもすっきりと遡行を終えることができた。

車の通行を止めている林道は広い登山道のようでとても快適だ。沢装備をとき、ここからは日溜まりハイキングを楽しむ。真っ青な空と淡い紅葉がマッチしてとてもきれいだ。

途中から合流する旧中山道は要所要所に歴史を偲ばせる面影と説明の看板があり、なかなか興味深い道だった。「安政の遠足」という看板が随所にあり、人気のハイキングコースのようだ。途中の広い平地の鞍部は、明治天皇が巡幸したという茶屋集落跡で、小学校もあったらしい。さらに、頓挫した別荘開発らしき跡、うち捨てられたバスなどなど・・・否が応でも想像力がかき立てられ、興味が尽きない

めがね橋分岐は要注意だ。気をつけないとはね石山の登山道に誘導されてしまう。ロープが張られて草が生い茂っているため見過ごしやすいのだ。ロープをまたいで草を踏んでいくと次第に普通の広い登山道となる。所々倒木があったり草が生い茂っているが、とても歩きやすい道だった。

最後は沢沿いの舗装道路を下って行くとめがね橋にでた。5時近くなってしまったが、まだ橋の周りには多くの観光客がいて、急に別世界に舞い降りたような気がした。いずみ橋にデポしたもう一台の車を回収し、観光レストラン街OGINOYAで峠の釜飯を食べて帰路についた。(K、S、A)

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霧積ダム上入渓点7:20ー三俣10:00ー雌滝上広河原12:00/12:50ー林道(遡行終了点13:45/14:10)ーめがね橋16:50