ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2021.09.06
ナメトコ沢〜ナメトコ山〜西ノ股沢下降
カテゴリー:山歩き

2021年9月6日

十年ほど前の雪山シーズンに駒頭山を訪れた時から毒ヶ森山塊に興味を持った。やはり宮沢賢治の童話の世界だという想いが、この低山の里山に特別な意味合いを添えている。その時「ナメトコ山の熊」のナメトコ山が漠然とこの山域を指す山名ではなく、実在する山であるということが地元有志の方の調査で判明したという事実を知った。

今では国土地理院の地図にも山名が記載されている。いつかナメトコ山にも行ってみたい。いつも計画リストにはあったけれど機会がなく、今年の晩秋こそはと思っていた。このところ長雨だが、北東北は降雨帯からはずれているため、計画を前倒しにして十年越しの想いを実現させた、というのは少し大げさだけれど。。

新花巻駅から鉛温泉奥にある豊沢ダムに向かい、中ノ股沢沿いの県道を進む。途中までは大空滝沢/小空滝沢に行った時の道なので馴染みがある。ようやくナメトコ山に来たのだと早くも気持ちが高まる。西ノ股沢出合い手前の広場に駐車して沢支度。出発時間が遅いのですぐに入渓せずしばらくは沢沿いの林道を進む。途中で間伐作業の車が止まっていたのでそそくさと通過。しばらくして林道が沢に近づくとナメ小滝がかかる二俣が見える。きれいなナメ滝なので斜面から出合いへ下った。ナメトコ沢に架かる橋の下はナメ滝の上が土管のトンネルになっている。

腹ごしらえを兼ねてちょっとナメ滝で遊んでからトンネルに入る。まるでナメトコ山の世界にワープする感覚で面白い。トンネルを越えると穏やかな平瀬が続く。小さく可愛い沢だ。所々ナメが続いたり小さなナメ滝を落としたり。でも一般の沢登りの対象になるような沢ではない。ナメトコ山に登るバリエーションハイキングという印象だ。何もないけれど、周りの森は素朴な佇まいで雰囲気がいい。けっしてきれいな沢というわけでもないが、あれもこれも、すべて気持ちがこの世界に入り込んでいるから感じられるのかもしれない。

570mあたりの二俣を左に入る。出合いは7-8mほどのナメ滝となっている。登るとさらに森が広がりまるで登路のようなナメがつづく。後でわかったが、尾根に出てからの踏み跡程度の登山道よりはよほど歩きやすい。次第に細い水路となるが沢型は650m鞍部まではっきりしており、藪漕ぎはない。適当なところで斜面を登ると漠然としたブナの森が広がっていてどこに道があるのか一見判りにくい。あたりを見回すと前方に赤テープが見えた。以外と簡単に登山道に合流できてホッとする。

といっても一般的な登山道というよりは踏み跡といったほうがいいくらいで、テープがなければすぐに見失ってしまいそうだ。軽い藪をこぐ場面も多いが、テープに導かれて山頂にたどり着いた。ナメトコ山の山頂だけ切り開かれていて、周りの木には4箇所も「ナメトコ山」の手書き標識がかけられていた。登りにくい登山道で展望もないこの山にやって来る人は、みんなそれぞれの思い入れがあって自分の標識をかけたいと思うのだろうなどと、標識がたくさんあっても納得する。

 

 

 

 

 

 

さて下山をどうするか。当初は山頂西側の西ノ股沢源頭から直接沢を下降するつもりだったが、南尾根に道ができていてテープもある。どのように続いているのか不明だが、まずは尾根を下ってみることにした。しばらく明瞭だった道も次第に不明瞭になったので、沢筋が見えてきたところで沢に下ることにした。すると沢から少し上の木にテープが二ヶ所あり、どうも西ノ股沢沿いの道はここから尾根に上がるようだった。沢も最初は道路のようなナメで水量が少なければ登山靴でも歩ける。おおむねゴーロ沢で時々小さな滝がある、こちらも可愛い沢だ。一箇所ちょっと他とは違う大き目の斜度のあるナメ滝を巻いて降りた。ひょっとしてこれが奥田博氏の「東北ブナ紀行」に書かれていた「小十郎の滝」(小十郎は「ナメトコ山の熊」の主人公の熊撃ち)だろうか。

北ノ股沢出合いからは草に埋もれ廃道となった林道に上がりナメトコ沢出合いへ。行きは橋の下をくぐったが、橋の上には「ナメトコ沢」の標識が立っていた。多分名称は後年つけられたものではないかと思うが、ちゃんと認知されたナメトコ沢なのだった。出合いから下流の西ノ股沢の様子が気になって時々覗きながら歩くと、これまでになかった段差のある沢幅いっぱいのナメが続いている。通りすぎるうちにだんだん後ろ髪を惹かれる思いにかられ、仲間を説得して沢に下ってみることにした。内心渋々だったと思うけれど、言い出したら引かないと諦めたのかもしれない。

下るところは最後が垂直に近い急斜面で一瞬無理だと諦めかけたが、気持ちが通じたのか岩窪に間伐作業のためにつけられた階段状の踏み跡を見つけ無事に沢に降りた。ヘツリながら沢を登る。今頃になってこんなことをと、少し自分に呆れながらアドレナリン全開模様でどんどん進み待望のナメへ。これで最後のご褒美をもらった気分になって広場にもどった。

 

 

 

 

駐車広場10:45ーナメトコ沢出合11:05/11:15ー650m鞍部13:10ーナメトコ山13:50/14:10ー西ノ股沢14:50ー駐車広場16:30