ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2021.06.01
大嵐山〜湯ノ花温泉〜大博多山〜駒止湿原
カテゴリー:山歩き

2021年5月31日~6月1日

会津高原尾瀬口駅から檜枝岐方面に向かうバスに乗ると上り下とも1日1便ずつバスが湯ノ花温泉経由となる。時間帯によってこのバスに乗ると湯ノ花温泉で大嵐山登山口の大きな標識が目にはいる。なんとなく地味な山の雰囲気を感じていたが、古い南会津の山の本を手に取ると必ずと言っていいほど大嵐山が登場する。そんなことでいつか登ってみたかったが、登るならば積雪期の方が面白そうだと思っていた。

3月に登った枯木山からは、ゆったりとした尾根をたどって岩峰を超えると大嵐山に続いていることが手に取るようにみえた。残雪期につなげたら面白そうだ。そのためにも一度無雪期に大嵐山に登ってみるのも悪くない。ということで、季節は違うけれど一度は泊まってみたかった湯ノ花温泉とあわせ新緑の山歩きを楽しむことにした。

新白河駅からレンタカーで湯ノ花温泉へ。宿泊先の民宿に挨拶をして大嵐山登山口へ向かう。ハルゼミの合唱が初夏の爽やかな山歩きを期待させる。しばらくは沢沿いを歩く。天に届けとばかり背伸びをしたサワグルミ。時々カツラの大木があらわれプリミティブな会津の山の雰囲気を感じさせる。

湯ノ倉山分岐をすぎて沢が枯れるとブナが多くなる。登山道がないときは涸れ沢を詰めて尾根に上がったようだけれど、登山道は小尾根を巻くようにしてつけられ急斜面を登る。伐採二次林のようだがブナ林が広がる。尾根に出ると東側の展望が開ける。シャクナゲとタムシバが点在し素朴で無骨な山に控えめな華を添えている。

山頂は明るく切り開かれている。古い紀行文には会津駒から丸山岳方面の展望が素晴らしいとあったけれど、雑木が成長したせいか山頂から北西方面の展望はあまり得られない。南側の穏やかにうねった尾根を追うと枯木山が正面に横たわっている。冬に湯西川温泉から登った時は山の全容が見渡せなかったので初対面の気分だ。荒海山は雪山で見る方が迫力がある。土倉山はまさに指呼の間で後ろに七ガ岳と穏やかな高原台地が広がっている。

帰路は湯ノ倉山を経由する。山頂から少し下ったところにかろうじて会津駒から三岩岳の稜線が見渡せる展望地がある。行きは山頂でゆっくり楽しめるだろうと足をとめなかったが、ここぞとばかりに尾根筋を追う。頑張って奥の稜線の一番高そうなところを確認してあれが丸山岳だろうか、そう思うことにする。湯ノ倉山分岐からはずっとブナ林が続く。尾根筋には伐採されなかったブナが並んでいていい雰囲気を感じながら登山口にもどった。

宿は南会津山の会をはじめ川崎精雄さんらの常宿であったらしい「清滝」に泊まりたかったが、コロナ禍のために5月一杯は休業中の宿が多く、ようやくほそぼそと開いていた民宿に泊まることができた。ちょうど四箇所ある共同温泉の一つ弘法の湯の隣で都合が良かった。この宿のご主人は10代目とのことだが、6代目は田代山を開いた大山善八郎という方とのこと(猿倉登山口とは違うルートらしいが詳細を聞き逃して残念)。また枯木峠の歴史で知った湯西川との間に人の往来もあったことなどうかがうことができた。今年の5月からはバスの湯ノ花温泉経由が廃止されたとのこと。たしかにこれまで人の乗降をみたことがないので、仕方ないという思いと寂しいという思いが交錯する。

 

 

 

 

 

翌日も快晴に恵まれる。二日目は伊南川を北上して南郷村の大博多山へ向かう。大嵐山以上に地味な山だが積雪期には城郭朝日山に続くブナ街道から古町丸山とともに白い峰が目につく山だ。明治の岳人の山行録を読むと「行きがけ(帰りがけ)の駄賃の山」という表現に出くわすことがあるが、たぶん大博多山は率直に言えばそんな位置付け(ゴメンナサイ)で、こんな時ではないと登りそうもないのでいい機会と捉えたのだった。

実際登ってみると無理矢理に開いたような登山道は痩せ尾根の急登続き。トラロープが続いてあまり自然な山歩きの気分にはなれない。南会津を愛する先人たちの登山道のなかった時代の記録を読むとみな沢を詰めて最後に尾根に乗って登頂している。1062mの尾根に上がってようやく一息。南西側に古町丸山が近い。真っ白な姿しか見ていないので全山モコモコブナ林の丸山は別の山のようだ。その奥に残雪の三岩岳と奥に会津駒が見える。さらに登ると樹林越しに会津朝日岳が見えて色めき立つ。山頂からの展望が楽しみだ、とこの時は思う。けれどいざ着いてみると大嵐山と同じで、西側はのびた木々が展望を邪魔している。一方東側には真っ平らな台地状の山地が長く続いている。駒止湿原だ。

山頂標識の隣には大きな一等三角点の標識も立っている。これが大博多山の自慢らしい。南会津町で一等三角点の山は七ガ岳と大博多山だけなのだと観光パンフレットに書かれてあった。なんだかケチをつけているようなもの言いだけれど、南会津の山で大博多山は初めて登っのだからささやかながら嬉しかった。いつも冬に来て同じ山ばかり登っているのは本当に南会津の山が好きだと言えないと思う。もっと登って愛したい山がまだまだたくさんある。。。

 

 

 

昼前には下山する。帰路は山頂から近くに見えた駒止湿原の近くを通るので、これまたこんな時でないと訪れそうもない湿原に立ち寄ることにした。湿原に通じる林道がちょうど2日前に開通したばかりという情報を得たからだ。平日だというのにかなりの車が駐車しているのが意外だった。あまり事情を知らないだけかもしれないが、きっと思っている以上に人気のある湿原なのだろう。数年前の残雪期に舟鼻峠から七ガ岳に縦走した時の中間地点で、無雪期の様子を垣間見に来た次第。あの時も入口に季節ごとの花々を紹介した立派な看板に感心したものだった。

低地にあるように見えてここは1100〜1150mほどもある高層湿原。予想通りまだ春の目覚め間もない様子だったが、タテヤマリンドウが盛りでワタスゲがもうじき満開になりそうだ。所々にミズバショウが見られたが、すべてが尾瀬などとは比べようもない。まあそれが南会津の山らしくもある。3時間ほどかけてゆっくりと標準コースをまわり帰路に着いた。