ブナの沢旅ブナの沢旅
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2020.08.07
東黒沢〜ナルミズ沢〜朝日岳〜宝川温泉
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2020年8月2−4日

ようやく梅雨が明けたものの例年にない長雨で、沢はどこも増水が予想される。おだやかな沢が多い東北は天候がぱっとしない。谷川、会津方面がよさそうなので自粛中に計画を作っていた楢俣川のまだ入っていない沢へ行きたかったが、とにかく増水に弱い弱小パーティなので見送ることにした。

ということで、何度も入渓していて多少の増水でも対応できそうな東黒沢からナルミズ沢に落ち着いた。ただし沢を詰めてからの下山路は、朝日岳から白毛門を経て土合橋に下るのは、暑さと体力消耗が予想されるため宝川に下ることにした。

上毛高原駅から谷川ロープウェイ駅行のバスは臨時便も運行したが、それほどの人出はない。土合橋で下車して駐車場広場へ入ると満車状態で、新たに入ってきた車は駐車場所を探してうろうろしている。いつもの小道に入り、沢の横断点で沢装備。川原が水没していたため道端で支度をしているとさっそく若者パーティが通過していった。

水量は明らかに多いためできるだけ道をたどってから入渓。すぐにハナゲノ滝が見えてくる。これまであれこれ10回は通過しているが、これほどの水量は初めてだ。そそくさと巻き道に入って抜ける。いつもなら滑り台が楽しそうなナメも恐ろしげで恐々通過する。白毛門沢出合いから東黒沢に入ると少し落ち着いてほっとする。

最初に来た時に泳ぎを強いられた深い瀞は2年前には完全に消失して驚いたのだが、再び元に近い状態になっていた。やはり沢は生き物だなあと思う。仲間が通過を試みるが胸まで浸かっているのを見て私は巻き道へ。すぐにあらわれる顕著な滝には今までなかったトラロープがかかっていた。取り付きがシャワーになるのでロープに助けられる。

その後は長く美しいナメが続き、こちらは増水が美しさを増している。ナメが終わるとようやく緩やかに高度をあげ、つぎつぎと小滝を越えていく。丸山乗越近くまで水量が途切れることがなかった。とくに困難だったわけではないが、少しずつ時間がかかってしまい、枝沢を下降してウツボギ沢に降り立った時は2時間ほど予定をオーバーしていた。最初は大石沢出合いまで遡行して行動を終える予定だったが、心身ともに疲れてしまい、広河原手前のテン場でザックをおろした。

さっそく沢泊の楽しいルーチンに取り掛かる。ここはいつも薪木集めに苦労するところだが、今年はまだそれほど入渓者がいないのか何とか集まった。湿った薪木を相手に粘って火を熾し、持ち寄った食材を広げながら焚き火の側で安らぎのひと時を過ごして初日を終えた。

 

 

 

夜中に小雨がぱらついたが、朝には止んだ。2日目は長い行動時間となるので5時半に出発し、大石沢までは登山道をたどってからナルミズ沢に降りる。ナルミズ沢は今回で4回目だが、最初はゴーロが長かった記憶があるので水量のこともあり下をパスしたのだが、はたして時間節約になったかどうか。。

明るい岩盤が発達した小滝とナメ、ゴーロが交互に続き、ゆるい傾斜の両岸にはキスゲやシモツケソウなどの花が彩りを添えている。前方の視界が開けて越後烏帽子の頭が見えてくると好感度がさらにアップ。今回がナルミズ沢初めての仲間もいい沢だなあ〜とウキウキし始めどんどん先を進む。魚止の滝はいつも右壁を簡単に登るが、今回は花につられてさらに右斜面から登ってみた。

5年前に一人で来た時に泊まった草がフカフカのテン場を懐かしく振り返りながら、開放的で明るいナメをヒタヒタと進む。二俣は右俣へ入ると今度は8年前最初に一人で来た時のキャンプ場のようなテン場へ。ナルミズ沢は唯一単独で沢泊した沢なのでいろいろと思い出が尽きないのだ。太陽が昇り暑くなってきたのでクールダウンの休憩でくつろぐ。ここからが源頭部のいわばナルミズ沢の真骨頂。ゆったりとしたナメとちょっとした小滝を幾つか越えながら緑の草原へ。いつも草紅葉の季節に来ていたので、緑の季節の源頭も見てみたかった。

大烏帽子山鞍部に続く一筋の径をたどり笹原の鞍部へ乗り上がる。いつも感慨深い気持ちになる特別の場所だ。残雪期に歩いた時もほんとにステキなところだと思った。と、甘いセンチメンタルな気持ちの次はちょっとしんどい笹やぶ漕ぎの第二ラウンド。足元を見ればしっかり道型は付いているので藪漕ぎまではいかないが、登山道のあるジャンクションまでが意外と長い。

途中からガスが湧いて涼しくなったのがむしろ救いだった。這々の体で登山道に出ると雨が降り出した。コースタイムも下山予定時間から逆算してタイムリミットを超えている。すでに遡行中も相談はしていたが、翌日の予定がないことを幸いに延泊を決めた。雨具をきて朝日岳へ向かう。キンコウカに彩られた登山道をたどり池塘群を見下ろす。山頂直下で宝川の分岐標識。相談するまでもなく山頂はパスして木道を左に折れるとすぐに水場があらわれる。以前から朝日岳の水場を確認したいと思っていた。下山に備えてエネルギー補給していると雨がやんだ。

初めて歩く登山道はなかなか展望がよく、予想外のホソバヒナウスユキソウがたくさん咲いていてなんども足を止める。けれど楽しい気分は長続きせず、登山道は岩稜帯のトラバースが延々(と感じられた)続き、登山地図のコースタイムなんて嘘だと毒づく。すでに延泊を決めたので焦ることはなかったが、ブナ林の尾根を急降下して大石沢に降り立った時には心底ホッとした。

火照った顔を洗い一服して長い1日を振り返る。といってもさらにテン場まで小一時間。テントが見えた時には思わず大声で、ただいま〜やっと帰ってきたよ〜。焚き火ができなかったのは残念だったが、予定外とはいえそれ以外は特に不便もない。食欲がないため簡単に食事を済ませてシュラフにもぐると、文字通りあっというまに夢の中にいざなわれた。

 

 

 

 

 

予定外ながら想定内の3日目の朝。残りのアルファー米で作ってもらったお粥は胃にやさしく食欲がなくても食べることができた。何しろ前日からほとんど固形物は口にしていないのだ。宝川温泉を9時半過ぎのバスに乗るため余裕をもたせて6時前に出発する。渡渉や途中の泥道に備え沢靴のままとする。広河原から登山道にあがり渡渉点に下るが、水量が多いため登山靴での渡渉は無理そう。その後もいやらしいアップダウンと泥濘状の道をひたすら淡々と進んで林道終点。

やれやれだが、ここからさらに1時間ほど歩いて宝川温泉のバス停に到着したと思いきや、温泉のスタッフに今はバスは来ないといわれる。しっかりバス会社の時刻表を確認してきたのにと、泣きが入る。落胆した私たちを気の毒だと思ったのか、今は客がいないので(内緒だけれどというジェスチャーで)温泉入口のバス停まで車で送ってくれるという。ひれ伏すほどに喜び感謝したのはいうまでもない。

体力不足を思い知らされたナルミズ沢ではあったが、予定通りのコースを歩き通すことができたし、最後は凹んでからちょっとうれしいこともあった格別の山旅となった。

 

 

土合橋バス停8:45ー白毛門沢出合10:30ー丸山乗越14:50ー幕営地16:00//5:45ー大石沢出合6:50ー二俣9:00ー稜線11:00ージャンクション13:40ー宝川分岐14:20ー幕営地15:20//5:30ー宝川温泉9:10