ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.10.21
奥鬼怒コザ池沢北沢〜小北沢右俣中退
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2018年10月21-22日

そろそろ今シーズンの沢旅も終盤に近づいている。しっとりとした紅葉の森を穏やかに流れる沢を歩いて思いっきり焚き火がしたい。夏に鬼怒沼から手白沢温泉に下った時に好印象だった奥鬼怒のコザ池沢は、晩秋か初夏と思って取っておいた沢だった。一般には日帰りされているが上流のまだ歩かれていない北沢から小北沢を周回することで沢泊のプランを立てた。

まだ遡行していない沢は一般の評価がどうであれ、自分がどう受け止めるかと楽しみだ。とくに上流の北沢の記録はほとんどないのでなおさらのこと。紅葉のナメ沢とちょっとした冒険にレトロな雰囲気の山小屋日光沢温泉を加えた充実した沢旅となった。

東武線鬼怒川温泉駅からレンタカーで女夫渕へ向かう。8月上旬以来なのでまだ記憶に新しい。紅葉の季節の日曜なので駐車場は混雑しているかと思ったが、このあたりの紅葉の見頃は例年11月初旬ということで比較的すいていた。鬼怒川沿いの遊歩道を1時間ほど歩いてコザ池沢出合へ。ゴルジュの滝は台風の影響か、真新しい倒木がかかっていて景観を損ねていた。

沢靴に履き替え、右岸に張り出した尾根に取り付くと、釣り師のトラロープがかかっていた。小尾根を越えて沢に降りると滝上は倒木が散乱していたが、これから遡行する沢はそれほど荒れたふうでもなかった。しばらくは平凡な沢歩きだが、両岸は苔に覆われた広い河岸で雰囲気はいい。次第に沢にも日が当たるようになると紅葉がさえてくる。

しっとりとした森の沢旅の気分に浸りながら、のんびり歩いていく。こんな沢もいいよねーなどと言い合う。30分ほど歩くとゴーロの平瀬はナメとなる。コザ池の滝は幅広の2段ナメ滝で、名前がつくほどではないと思うけれど、左岸の水際を登る。ずっとナメを進んでいくと、前方に大きな滝が見えてきた。一見登れそうに見えず不安になるが、近づくと心配するほどでもなさそうだ。

1段目は左側を楽に登る。そこからトラバースして右側を登るのが一般的らしい。sugiさんは私が1段目を登っている間にさっさと渡ってしまった。いざ自分がトラバースしようとして躊躇する。下から見たよりも水量が多い。けれど行くしかないとシャワーを覚悟で横切るが、途中で手を探っている間に思いっきりシャワー。最後は手を貸してもらって這々の体で着地した。どうも渡る場所が少し高かったようだった。

滝上に続くきれいなナメ滝を越えると右手奥に2段滝が見え、北沢出合の二俣だった。ここでザックをおろし、テントを張れそうな平地を探す。右岸に良さそうな草地があったがちょっと湿っており、それに山側が岩壁で気持ちが悪い。二俣の中州台地をせっせと整地したら下が砂地の快適なテンバとなった。枯れ枝も豊富に集まり、前回不発に終わった焚き火が盛大にできたことを喜んで初日を終えた。

 

 

翌朝はテントをそのままにして2段滝で出合う北沢へ入る。「帝釈山脈の沢」で簡単に触れられているだけの沢だが、とくに悪場はなさそうだし、万一行き詰まったら戻ればいいというくらいの気持ちで入る。出合の滝は水際が滑っているので潅木沿いに小さく巻く。滝上は両岸が広がったゴーロ沢がしばらく続く。

二俣を左に入ると斜度がでて階段状のナメ滝となる。ようやく沢登りらしくなってきた。快適に登っていくと、途切れることなく続く。階段状滝はしだいにゴツゴツした斜度のあるナメとなるが手足があるので問題なく進める。予想外の渓相に思わずしてやったりの気持ちとなる。次第に両岸の側壁が低くなり、視界が開けてくる。

源頭部は地図にない小さな分岐がでてくるので コンパスとGPSで慎重に方向を確認しながら進む。入り口がヤブで塞がれた細い流れに入って進むと右岸に斜面が広がる。適当なところで沢を離れて斜面にあがると広々とした針葉樹の森となり、まるで別天地のようだ。下草もほとんどなく歩きやすい。最後の詰めもめずらしくうまくいったことに気をよくして森を歩く。大きな倒木のところでザックをおろし、ひだまりピクニック。ささやかなことなのだけれど、すぐ先には8月に尾瀬側から入って歩いた稜線の登山道があるなんて、ステキなことじゃないかと思う。

ひと休みしたあとは、尾根を挟んだ小北沢の源頭部へ向かう。小さな鞍部を越えるとすぐに窪があらわれ、下っていくと幾筋も小沢が集まってくる。下りは沢筋をたどればいい、源頭部とは思えないような穏やかな平瀬がしばらく続き、かえって不安になる。そしてその不安は的中した。突然先が途切れ滝上となる。目測だけれどかなりの高さのようだ。20mロープしかなく両岸は崖のようなヤブ急斜面。

この日は日光沢温泉の山小屋を予約してあり、4時には来るように言われていたので時間が気になった。そこでこの沢を下るのを諦めて中間尾根を下ることにした。少し戻って尾根にのるが、ヤブを避けながら下っているうちに登った北沢側に振られてしまう。ならばいっそのこと、勝手知ったる北沢に降りてしまおうということになる。そんな自分たちがおかしかったけれど、まあうまくいかないことも含めて楽しんだのだからよしとする。二俣まで下ればもうすぐだ。正面の山々の紅葉を愛でながらようやく気持ちにゆとりができる。

出合の滝を巻き降りてテントに戻ったのが12時半すぎ。テントを撤収して靴を履き替える。ここから対岸に張り出した小尾根に取付きスーパー林道に這い上がる。ちょうどカーブミラーのところにでた。こんな高いところに立派な道があるのが不思議な気がするが、あとは紅葉を楽しみながらダラダラ下っていけばいい。沢を横切るたびに林道整備のための不思議な水路と円形構造物があらわれ興味深い。

八丁の湯が近づいたところでトンネルとなり、抜けると鬼怒川を渡る鉄橋があらわれる。8月に道を間違えて渡りかけた鉄橋だ。なるほどスーパー林道の入り口だったのかと合点する。ここから日光沢温泉へ緩やかに登っていくと建物がみえ看板犬が出迎えてくれた。

 

 

 

女夫渕10:10ーコザ池沢出合11:00/11:30ー北沢出合15:20//6:50ー北沢周回ー北沢出合12:40/13:20ー林道14:00ー日光沢温泉15:50