ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.09.09
西沢本棚沢〜畦ヶ丸
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2018年9月9日

丹沢屈指の名瀑といわれる西沢本棚から本棚沢を遡行して静かなブナ林の畦ヶ丸へ。最近の天候不順で東北の沢計画がなかなか実現できないため、最近は丹沢の日帰り沢に回帰している感がある。登攀的な沢は無理としても、ここにはまだ遡行していない沢がたくさんある。

水量が多いことは織り込み済みだったので、むしろ迫力のある本棚を見ることができると思った。本棚は容易に巻くことができるし、その上は概ね穏やかな溪相らしいので、以前から一度行ってみたいと思っていたのだ。

西丹沢自然教室行きのバスからみた中川川は濁ってかなりの増水だったのでちょっと心配になったが、玄倉ダムの放流中であることがわかった。バスを降りて橋から見下ろす西沢は水量豊富できれいだった。最初の堰堤を越えて沢を渡渉するところで沢靴に履き替える。ちらほらハイカーがやってくるが、みな渡渉点をさがして一巡した後あきらめて裸足で渡渉していた。

登山道にかかる橋の幾つかは外れたままになっていた。こういう時は沢靴が断然歩き易い。本棚沢出合からは未知の領域となる。本棚までは道がついていた。さっそく樹林越しに白く長い筋が見えたので本棚かと思った。近づくとそれは枝沢の普段は涸れている多段の棚だった。やはり水量が多い。さすがに本棚のスケールは初めて見る者の度肝を抜く。今までどうして見に来なかったのだろうと思う。本棚から右に視線を向けると100m以上といわれる棚が立派な滝に変身し、両門の大瀑布となっている。予想以上のスケールに興奮気味となる。

 

本棚を堪能してから気分を本格的な沢モードに切り替える。といっても最初のアルバイトは本棚の大高巻きだ。いかにもこの尾根を登るんですよーと言わんばかりの小尾根が右岸に張り出している。取り付きには古い炭焼用の石積みがある。途中で単独の男性がすたすたと追い越して行った以外沢では誰にも会わなかったのが意外だった。

明瞭な踏み跡をたどって沢に降りる。本棚上の登れない滝二つも巻くルートだった。雰囲気は一変し、穏やかなナメの平瀬に木漏れ日が差し込む。とても平和な雰囲気で緊張感から解放される。すぐに倒木のかかった8m滝となる。ここで最初のおにぎりを頬張りながらゆったりとした景観に身を委ねる。四半世紀ほど前に書かれたガイドにもこの倒木のことがでているので、もうこの滝の主のようだ。邪魔というよりちょっとしたオブジェになっている。

さてと、右岸の高巻きへ。最初は取り付きの急斜面を嫌って隣脇の窪に取り付いたところ、足元がグズグズでかえって悪く仕切り直し。ここも踏み跡は明瞭だが、沢に降りるところがいやらしくピンソールを履いてもヘッピリ腰になってしまった。

その後はしばらく平凡なゴーロとなるが、900mあたりから傾斜の緩いナメ滝が次々とあらわれ、溪相ががぜん美しくなる。一帯は植林帯ではなく自然林なのが好ましい。ようやく登れる滝らしい5m滝が見えてきた。右の水流壁が手足豊富で快適に登る。気持ちがいい。すぐに左右の岩壁からの湧水に囲まれた5m滝となる。ここも右から登れそうだが完全なシャワーとなるので、さらに右の湧水壁をのぼってから滝上にトラバースした。足元がグズグズしていたが、左側から高巻くよりは簡単だと思う。

 

 

見せ場は概ね終わりだと、その後はあまり期待していなかったが、そこそこナメが続いた。沢筋は細くなり、次第に水が枯れる。1045mの三俣の真ん中を進むと源頭部は苔むした大岩が点在する日本庭園風となる。とても感じのいい源頭部だと思った。最後は壁になるので適当に左手の尾根に上がる。本棚沢と下棚沢の中間尾根だ。ここから下るという選択肢もあるが、畦ヶ丸の登山道へ向かう。

細尾根を100mほど登ると次第に傾斜が緩んでブナの原生林がひろがる。とても素敵な沢のフィナーレだ。登山道にでたところで最初は下るつもりだったが、仲間は畦ヶ丸に登ったことがないという。ならばともうひと登りして久しぶりの畦ヶ丸へ。こちらは檜洞丸とちがって展望もない地味な山のせいか、天気の良い休日でもひっそりとしている。ベンチでのんびり食事をして、とてもいい遡行ができたことを喜んだ。

 

西丹ビジターセンター8:40ー本棚9:40/10:00ー本棚上10:25ー枝尾根12:50ー畦ヶ丸13:20/14:00ービジターセンター16:10