ブナの沢旅ブナの沢旅
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2017.06.24
大血川ワレイワ沢
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2017年6月24日

 

奥武蔵には、それほど距離が長くもなく、それほど難しくもなさそうで、まだ遡行していない沢がいくつかあるが、意外と奥深く車がないと難しい。そんなわけでよほど魅力的な沢でないと行きたい沢リストにエントリーしづらい事情があった。

その意味でワレイワ沢は微妙な位置付けだった。けれど東横線が埼玉まで延びたり(もうだいぶ経つけれど)、車を出せる山友が地方赴任から東京に戻ってきたりでちょっと行きやすくなった。

多くの沢やは滝の多い沢を面白い沢だと評するが、彼らのワレイワ沢の評価を集約すると、何もない沢または歩く沢だけれども溪相はいい、というもの。ということは、高齢化が進むブナの沢旅にぴったりだ。あれこれ理屈をつけてようやく実現した。

どんな沢でも初めてのところはそれだけで楽しみなもの。誰が何を言おうと自分の目で確かめたい。当日の朝西武秩父駅で待ち合わせ、大血川へ向かう。太陽寺という有名な寺に向かう立派な道路を進み、林道に入って道が沢を横断してUカーブしたところに駐車する。

出発が遅めなので時間を節約するため、タカノス沢出合までは取水施設用の作業路を進む。踏み跡はさらにつづいており石楠花沢出合で沢に降りた。地図で予想していたよりも沢筋はひらけており、なるほど全体に苔に覆われた溪の雰囲気はたしかに悪くない。以前遡行した同じ奥武蔵の小持沢を少し大きくしたような印象を受ける。

午前中はまだ日もさしており、木漏れ日が日本庭園風の雰囲気を引き立てる。ワクワク、ドキドキしたりして滝を登るのもいいけれど、最近はゆったりした雰囲気を楽しむ沢歩きを好んでいる。ワレイワ沢の由来は定かでないが、巨岩が点在していることと関係していそうだ。

ちょっとした地形の変化や木々とイワのコラボレーションなどを面白がりながらしばし足がとまる。大きな滝はないけれど、岩滝や小滝が点在する。なかには頑張る滝だってある。一カ所5m滝は直登不可で右壁を登るが上部が泥壁でいやらしくロープを出してもらった。ロープを使ったのはここだけとなる。

 

 

1240m付近の二俣で足がとまる。実は正確にどの二俣が本流とイヌオテ沢の分岐なのか判然としないのだ。今回の遡行にあたり「奥秩父・両神の谷100ルート」と広田さんの「その空の下で。。。」を参考にしたのだが、ワレイワ沢本谷を紹介しているガイドと、「情報のない」イヌオテ沢に入ったという広田さんの記録が、結局同じだったので、ますますわからなくなる。「日本登山大系8」の大血川流域の沢では「その空の下で。。。」の「イヌオテ沢」はワレイワ谷本流と記述されてあり、本来のイヌオテ沢は1110m付近から芋ノ木ドッケと長沢山の中間に突き上げている。う〜ん。くどく書いたのは、最近のワレイワ沢遡行記録は私も含め多くが広田さんを参考にしていて、イヌオテ沢遡行としているからだ。

ちょっと脇にそれてしまったが、1100mあたりからはワレイワ沢の歩く沢の「汚名返上」で、すべて登れる小滝が連続して楽しい。そしてなかなかいい沢じゃないの、と思わせる。

 

それで終わればよかったのだが、1400m付近で地図では判然としない紛らわしい二俣があらわれ惑わされる。出合がくずれていなければわかりやすかったのかもしれない。30分ほどのロスタイム。その上空模様が怪しくなり、ガスが出始める。

軌道修正してからはガスでうら寂しい雰囲気になった上に、時間が気になり始め気持ちの余裕に陰りがでる。水も涸れだし、ひたすら急斜面の苔滝を越えていく。ガスの中から突然目の前に8m幅広の苔に覆われた涸滝があらわれた時には、その幻想的な姿にしばし見とれる。

どこも難しいことはないのだけれど、なにしろこの沢は標高差1000mなのに水平距離は1500m(ガイドによる)。体力がいることを今更ながら感じる。

ようやく傾斜がゆるむと、今度は冗長感がでてくる。頻繁になる分岐に注意しながら淡々と進む。最後は稜線鞍部を目指すと標識が見えてきて白石山と芋ノ木ドッケの鞍部にでた。やれやれ、だったが、目の前の標識が芋ノ木ドッケとなっていて、思わず違うところに抜けたのかと思ってしまった。ドッケとは小さな峰の意味なのだから鞍部がドッケのはずはなく、標識はおかしいなどとぶつくさ言うが、これは安堵感と相まった気持ちの余裕かもしれない。

靴を履き替え一服したのち、まずは白岩山へ。下ったところにある山小屋は廃屋となっていた。長いけれどよく整備された国道並みの登山道を下り、お清平と呼ばれる広場のような鞍部で一休みしたのち、太陽寺に抜ける山道へ入る。山腹を絡んでいくのだが、昔ながらの古道の雰囲気が好ましい。疲れたせいか、最後に車道で3月に捻挫した足をまたひねってしまい、しばらく道路にひっくり返ってしまったが、なんとか明るいうちに駐車地点にもどった。

 

林道西谷入口9:00ー石楠花沢出合9:40ー1240m二俣11:55ー稜線15:30/16:00ー白岩山ーお清平17:15/17:30ー西谷入口19:00