ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2017.05.04
三本山毛欅峠~坪入山~三岩岳~会津駒
カテゴリー:雪山

2017年5月2-4日

 

今年に入って4度目の南会津となった。これまでは、できるだけ未知の山、未知のルートを計画するようにしていたが、今年は少し趣向を変えた。同じ山域に少しずつ時期とコースを変えて1パーティ時差集中山行するのも悪くない。大好きなブナの山々へ、1月から残雪期にいたるまで毎月いろいろなアプローチで入ってみた。

1月末は巽沢山から窓明山を経て三岩岳の尾根を下り、2月末には山毛欅沢山から城郭朝日山を往復し、帰路は古町丸山から尾白山を下った。3月には三本山毛欅峠から坪入山を目指したが、思わぬ深雪で稲子山で中退して山毛欅沢山から下った。前回中退したルートを再度歩いてさらに会津駒まで縦走するというのが今回の計画となった。第一候補の山を諦めた次善の策ではあったけれど、こんな風に時差集中してブナロードをつなぐというのは、ブナの沢旅らしいと思えたからだ。

いつもの東武鉄道で会津高原尾瀬口駅へ向かうが、始発の快速列車にかわって新型車両の「リバティ会津」という名の特急になった。特急と言っても従来の快速とほとんど所要時間は変わらず、座席指定の特急料金1800円が上乗せとなった。下今市以降から乗車すれば特急料金はかからないという仕組みでややこしい。

スキーシーズンが終わった平日のせいかバスは閑散としていた。小立岩で降りて林道を歩くが1ヶ月半ほど前とは様変わり。麓の雪は完全に消えていたが新緑には少し早い様子だった。

1200m付近から雪が出てくるが順調に進んで稜線へあがり、予定通り小沢山を越えた稲子山鞍部手前の広尾根台地にテントを張る。窓明山と三岩岳を望む好展望の台地で今年初めての焚き火を楽しみ、初日を終えた。

 

最近は朝明るくなるのがとても早い。暖かい朝とはいえ雪は締まっているので最初からアイゼンをはく。すぐに稲子山への登りとなる。前回はラッセルで汗をかいたが今回は気温が高く暑さで汗をかく。稲子山よりかなり下でトラバースして隣の尾根に上がる。見上げると恐ろしく急斜面だ。亀裂が入って藪がでているが、雪をつないで急斜面を下ると待望の広くゆったりとしたブナロードとなる。

小さなポコを超えながら標高はほとんど変わらない台地状の尾根がつづく。もう十分と思う頃坪入山の真っ白な斜面が目の前にあらわれる。それ程の傾斜ではないが、無木立の雪の斜面を150m以上登るのは結構しんどい。最後は雪壁の一角を這い上がって坪入山につづく尾根にのる。

これまで歩いてきた尾根筋が一目で見渡せる。坪入山へ進むと明瞭なトレースがあらわれた。そう、ここは連休どきに人気がある丸山岳へのいわば入口のようなところなのだ。4年前の丸山岳を思う。あの年から4年もたった。思い出が尽きることはない。

 

窓明山へ向かって尾根を下ると初めてショートスキーの単独者とすれ違う。挨拶をして軽く立ち話。やはり丸山岳へ向かうようだ。その後も窓明山手前で丸山岳をめざすパーティ2組に会い、それぞれ言葉を交わす。4年前は連休の最中だったのに一組も出会わなかったが、今年はたくさんのパーティが目指すようだった。

暑さでばて気味となり、足取りが重い。窓明山が遠かった。360度の展望はいつ来ても素晴らしい。山頂付近はやはり例年より雪が多いようだ。2年前は積雪が少なかったのかシラビソ林が邪魔して山頂からの展望が遮られたり、一部地面が出ていたりしたことを思い出す。昨日から歩いてきた尾根を見下ろせば、これでもずいぶん歩いてきたなと思う。

 

あいかわらずノロノロとした足取りで三岩岳へ向かう。何度もいいたくなるほど暑さがこたえた。1840m付近の尾根の分岐手前に展望のいい平坦地があったので、少し予定よりは早いけれど行動を終えることにした。のんびりしたかった。テントを張る前にお湯を沸かしてコーヒータイム。歩いてきた山並みを見下ろしながらくつろぐと、じわじわ幸福感がしみ渡る。シニアの正しい山の楽しみ方だ。

 

翌朝はこれまでで一番早い3時起床で5時には出発。今の時期はこれくらいの方が気持ち良く歩ける。樹林帯をぬけるとメインストリートに躍り出たようにトレースが賑やかとなる。三岩岳山頂からは後半のハイライトとなるメジャーコースを気持ち良く歩く。

やはり早朝の稜線漫歩は清々しく足取りも軽い。会津駒ヶ岳に近づくと奥に燧ケ岳も見えてくる。山頂の標識はかなり埋まっていて、昨年4月下旬に来た時よりも1mくらい積雪が多い。

時間も早いので中門岳の往復も考えたが、見える景色は同じらしいし、もういいやという気持ちになる。山頂は人が次々と登って来て賑わっているので少し離れた見晴らしのいい窪地にマットを広げ、お茶をしながら小一時間ほどまったりとした時間を過ごす。今年の南会津山行は図らずも長時間行動の連続になったので、最後はこんな風にのんびりしたいという気持ちが勝ったのだった。

下山後は少し歩いて駒の湯に立ち寄り、バス停一つ先の蕎麦やでお腹を満たして、間に合わないと思っていた一本前のバスに飛び乗った。

 

 

(右上は2016年4月27日)

2日 小立岩10:50ー三本ブナ峠14:30ー小沢山15:30ー1430m幕営地15:50

3日 幕営地5:45ー稲子山7:00ー坪入山10:25/10:40ー窓明山13:15/13:30ー三岩岳1840m幕営地15:00

4日 幕営地5:00ー三岩岳5:50ー大戸沢岳8:20ー会津駒9:20/10:25ー滝沢登山口13:15

 

 

 

追記:
下山後に南紀の沢での死亡事故を知り愕然とした。そのわずか数日後には、丸山岳での遭難のニュースが飛び込んできた。公表されたコースと日程から判断すると私たちはすれ違っていないと思うが、入山地点が変更になっていたならば可能性があるなどと思うと心穏やかではない。同じ時期に沢と雪山という自分たちの山行のかたちで立て続けて事故が発生している。どちらも単独行であり、そのリスクを何度も突きつけられた気持ちだ。週明けから捜索が行われるようだが、1日も早い発見を願わずにはいられない。