ブナの沢旅ブナの沢旅
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2017.05.29
三岩岳~窓明山~家向山
カテゴリー:ハイキング

2017年5月28−29日

 

浅草岳の残雪と新緑がとても気持ちよかったので、この冬にせっせと通った南会津の山の新緑も見たくなった。こうなったら同じ年の四季の追っかけ山行をするのも悪くないと思えてきた。慣れてくると気楽なのもいい。と、すこし現実的な妥協の気持ちもなくはないのだけれど……

4月から運行が始まった東武の「特急」リバティに合わせ、会津高原尾瀬口駅では5月中旬から御池行のバスが週末だけ9時台が2本に増便になっていた。リバティで到着した登山者へのサービスなのか、1本目は檜枝岐までノンストップの急行便、ただし300円増しとのこと。小豆温泉手前で下車予定の我々は当然乗ることができず、10分後の普通便に乗車する。普通便といっても他に乗客はおらず、結局小豆温泉までノンストップだった。(リバティといい急行バスといい、2100円の値上げに値するほどの時間短縮にはならないと、ふたたび不満の声)

三岩岳の登山道はすでに新緑の盛りを過ぎた濃い緑で覆われていた。点在するヤマツツジがブナ林にアクセントを添えている。無雪期の登山道なので順調に進んで行くが、予想以上に早い1000mを過ぎたあたりから残雪があらわれる。黒檜沢コースとの分岐付近は広い雪原となっており、ブナの新緑もまだ初々しくうつくしい。空模様はガスったり晴れたりと不安定なのがちょっと残念。

日曜日なので登山者はもっと多いと思っていたが、単独者とご夫婦の2組とすれ違っただけで、どちらもガスのため途中で引き返してきたとのこと。今晩避難小屋に泊まるのは我々だけのようだった。

ブナ林から針葉樹林帯に変わる頃から天候はますます悪くなり、残雪も多くてまるで冬山の雰囲気となる。避難小屋はあっけなく見つかった。一階から入ることができたが、周りはまだ2mほどの雪壁となっていた。真っ暗な中にはいり、まずは窓を開けて光を入れる。使うのは初めてだが、こじんまりしたログハウス風の小屋で小人数だと広すぎずに心地いい。

まだ時間も早い。一通りの店びらきをして水作りなどしているうちに窓に陽の光が差し込んできた。雲が早い勢いで流れており晴れてきた。全く何も見えなかった景色が突然あらわれて喜ぶ。ならばと、散歩に出かける。5月初旬に幕を張った見晴らしのよい広尾根へ。雲が滝のように流れ窓明山から坪入山、その奥の山並みがみえてくる。そのダイナミックな景色の展開にしばしみとれる。

暗くなると外は満天の星空。翌日の好天を確信して初日を終えた。

 

翌朝は窓から差し込む陽に誘われて起床。朝食後、荷物はそのままにして三岩岳を往復する。登るにつれて丸山岳方面の山並みがあらわれる。何度見ても見飽きることがない。高幽山手前の鞍部はもはや真っ黒だが、その先はまだ残雪豊富だ。標高の低い山毛欅沢山方面のブナロードは緑一色で、その終着点である城郭朝日山にわずかに白い線がみえる。このブナ街道が緑に覆われている光景を目にしたのは初めてなのでとても新鮮だった。もう少し早い時期ならなんとか雪をつないであの尾根のブナの芽生えを見ることができるのかな、見たいなあと思う。

前回も山頂には雪がなかったが、会津駒ケ岳方向の尾根は藪になっていた。この藪を巻きさえすればまだまだその先の稜線は残雪豊富で、縦走も可能だろう。

小屋に戻りザックを回収して窓明山へ。3分の1位は夏道が出ており、イワウチワやショウジョウバカマが咲いていた。なかでもただ一輪、シラネアオイが咲いていたのには足を止めずにいられなかった。

窓明山には真新しい山頂標識があって大喜びする。雪山でしか登ったことがないので、標識があるなんて思いもしなかったからだ。今年は1月と3月に登っているので、雪の状態の変化が手に取るように感じられる。山頂は樹林の中だったのだ。積雪は数メートルだと実感した。

快適な雪面下りは名残をとどめていたが、一部夏道もでていた。眼下に初々しいブナの新緑が広がり気持ちがはやる。ここのブナ林を見に来たようなものだから。いつも印象に残る孤高のダケカンバはその形状からすぐにわかった。孤高ではなく、背の低いブナやタムシバ、ミツバツツジなどにかこまれていたのが好ましい気持ちにさせてくれた。

あらわれたり消えたりする登山道をたどりながらブナの楽園へ。積雪が少ないので、いつもの印象よりずっと背が高い。なんてステキな光景だろうと夢見心地。過ぎ去るのがもったいなく、ザックを降ろしてガスをだし、コーヒーを入れてくつろぐ。JRのあの豪華列車「四季島」がニュースをにぎわしていたけど、この贅沢な空間はお金では買えないよね〜と、負け惜しみなく心から思う。

家向山鞍部からの登りで汗をかく。ここにも家向山頂尾根の新しい標識があったが、こちらの形状はちょっと立派すぎて場違いな感あり。下るにつれハルゼミの合唱が顕著になり暑さも加わって初夏の雰囲気となる。

昨日の冬山から残雪期、早春の芽吹きから初夏の木漏れ日・・と、ほんの1日で四季の変化が体を通り過ぎていった気持ちに満たされた贅沢な山旅となった。

 

三岩岳登山口11:00-避難小屋15:05//5:55-山頂-避難小屋7:25/7:50-窓明山8:55-家向山10:55-巽沢山12:00-登山口13:00