ブナの沢旅ブナの沢旅
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2017.01.31
巽沢山〜家向山〜窓明山
カテゴリー:雪山

2017年1月31日-2月1日

 

JRフリー切符を使って東北の山へ行くつもりだったが、悪天続きで断念。フリー切符にこだわらず、悪天でもいいから雪のブナ林に泊まりたいと思い、馴染みのある南会津の山へ向かった。

いくつかある候補から、窓明山周回コースに決める。5年前(もう5年もたった)に日帰りしたコースだ。雪ならブナの森を散策して戻る、展望が期待できるなら窓明山へと、あまりきっちり決めずに出発した。直前の予報では少しばかりお日様が期待できそうな予感。

東武野岩鉄道で会津高原尾瀬口駅へ。これまでは冬季のバス運行は9時台がなかったけれど、今回調べたら夏の時刻表と同じで9時36分があった。バスの切符を買うときに、前日大戸沢岳でスキーヤーが遭難したことを知らされ、気をつけるようにと言われる。

平日ながらスキー客もチラホラ。みな高杖スキー場で下車した。高畑スキー場は開店休業状態の雰囲気だった。小豆温泉手前の保太橋で降ろしてもらう。昨年の9月に遡行した沢なので記憶に新しい。

この冬はずっと降雪がなかったところ、今年に入ってドカ雪があり、かなりの積雪だ。取り付きも高い雪壁をくずして雪堤に乗る。下部は尾根から外れてジグザグに道が付いていたことにとらわれすぎて取り付きを間違ってしまい、正規の登山道に戻るのに急斜面のラッセルを強いられる。もっとも登山道もかなりの急斜面なのであまり違いはなかったかもしれない。久しぶりの腰ラッセルだったが、それほど長い時間ではなかったので、なかなか楽しめた。

ブナ林が広がり始めればしめたもの。やっぱり会津のブナは樹肌がきれいだなどと、かなりひいき目の感想を言い合いながら進む。時折吹雪のような空模様だったが、久しぶりの南会津の雪山にいると思うだけでウキウキ気分だった。

巽沢山から家向山に続く尾根はさらにブナ林が端正となる。1300mを越えたあたりから尾根が広がって緩やかになり、ここに泊まりなさいと手招きしているよう。風も強く先に進むとまた急斜面となるので、少し早めだが1340mの平坦地で行動を終える。

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雪が柔らかいため念入りに整地をし、風に飛ばされそうになりながらテントを張る。中に入れば暖かく快適だ。今回はそれほど歩く距離もないので、食材はたっぷり担いできた。久しぶりのテント泊だが、「山で寝る」というのは捨てがたい魅力だ。

夜中には星が見えた。午前中は晴れる気配を感じたので、予定通り窓明山まで進むことに。明るくなり始めた6時半に出発する。すぐに東の空から太陽が昇り始め、山を赤く染めている。時々そんな景色を振り返りながら、美しいブナの尾根を登っていく。

いつものように家向山の西の肩をかすめて鞍部に下る。すると再びゆったりと広がるブナの尾根となる。左手には窓明山から三岩岳がどっしりと真っ白くたたずむ。期待以上の好天に恵まれた。これまでは、ここを歩くのはいつも残雪期だった。そしていつも、いつか厳冬期の真っ白な姿も見てみたいと思うのだった。

一番大きな違いを感じたのは窓明山山頂だ。残雪期は広い平坦な雪面の山頂だが、今回は北側が雪庇の穂先のようになっていて狭くなっていた。空気が澄んでいたために山毛欅沢山から城郭朝日山に続くブナ街道もはっきり見えたし、いつも憧れている丸山岳が近く感じられた。会津朝日岳の岩壁もたっぷり雪を付けており、今の時期に天候が安定していれば、藪に悩まされることなく縦走できそうな印象を受けた。

越後の山並みを舐めるように見入る。さすがに白さが違う。最高の展望に、山座同定がはずむ。幸い前日の強風も収まり、快晴無風状態だ。三岩岳から伸びる尾根はどれもクリミーに長い尾を引き、スキーをやらなくてもそそられる。

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窓明山から三岩岳手前の1840m付近の尾根分岐を目指す。見下ろした印象では、概ね緩やかな稜線漫歩だと思っていた。ところが、思いもしない所でヒドンクレパスにはまり、2mほど雪の中に叩き落とされたのだった。これまでも腰くらいまではハマってしまったことはあったが、足元が崩れてあっと思う間もなく、穴を見上げるほど深い雪の割れ目に滑り落ちた。同行者を呼ぼうとする間もなく、今度はsugiさんも落ちてきた。

シューが雪に埋まって這いずり上がるのに一苦労したが、なんとか穴から抜け出る。こんな経験は初めてだ。雪庇には気をつけてかなり樹林側を歩いていたつもりだったが、危なかったと言い合う。少し腰が引けてしまい、その後しばらくは樹林の中を通る。

地図で池塘マークがあるところまで来て、ようやく安全地帯だと一息つく。1840mで、三岩岳から伸びる尾根にトラバース。一筋のトレースもないまっさらな雪面を(雪煙を出しながら蹴散らす気分で)気持ち良く下っていく。この尾根は昨年の4月末に御池まで縦走した時に歩いたばかりだが、雪が多くて景色が違う。

あまり時間を気にしなかったため、途中から3時20分の最終バスに間に合わないことがわかった。トレースのない下りは小さな尾根が派生しているところで間違いやすく、一度違う尾根に下りかけた。そういえば、5年前も同じ場所で同じ間違った尾根に下ってしまったことを思い出す。

予報通り午後からは雲が広がり、小豆温泉スノーシェッドの入り口に降り立つ頃には雪が降ってきた。タクシーを待つ間、降雪はさらに本格的になり、いいタイミングで下山したことを喜んだ。

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巽沢山登山口11:15ー巽沢山ー1360mテン場15:30/6:30ー家向山ー窓明山ー三岩岳1840m分岐ー小豆温泉スノーシェッド3:45