ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.06.14
石筵川〜船明神山
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2015年6月14-15日

 

杉田川を遡行後、次回は沢に泊まって焚火を楽しみたいと、石筵川を提案した。スケジュールを擦り合せて決めた日程は、偶然にも7年前に遡行したときと同じになった。

この7年という歳月は人生最大の激動期だった。山への想いを強め突き進んだ時期でもあった。けれど今は、思い出の沢にもう一度行きたいという回帰の気持ちが芽生えている。そんな気持ちで石筵川へ向かった。

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磐越西線の磐梯熱海駅でピックアップしてもらい、母成グリーンラインを銚子ヶ滝方面へ向かう。前回来たときは入渓点に近い牧場を通る道がわからず、銚子ヶ滝駐車場から小一時間歩いたが、今回は牧場最奥のあずまやまで車で入る。

沢支度をして樹林の登山道を進むとすぐに銚子ヶ滝との分岐になる。前回は立ち寄らなかったが、一度は見る価値があるというのでザックを置いて往復する。見応えのある立派な滝だ。両側に岸壁をしたがえ二段滝となって落ちている姿は優雅で美しい。せっかく滝で涼んだのに復路の急登で大汗をかく。

登山道を進んで石筵川に下る。しばらくはゴーロ川原がつづくが、どんよりとした空に日差しがではじめると沢の景観が一変する。みずみずしい苔の間をぬって流れる水が陽の光で輝いている。

大岩のゴーロ歩きに飽きる頃、沢が少し変化し始め、小滝やチョックストーン、岩室があらわれる。しだいに両岸が狭まり、前方に2段15m滝が見えてきた。水量豊富な豪快な滝だがそれほど威圧感はない。

下段は残置のある右壁を空身で登りザックを引き上げるが、確保体勢に手間取り、もたついてしまう。上段は右の水際を直登する。大滝を越えると渓相は一変し、石筵川たる所以の筵のようなナメが始まる。

一服後、幸福感に包まれながら待望のナメを進む。新緑の木々や苔の鮮やかさと白い水流が互いを引き立てている。二人できれいだね〜を連発しあう。前回は9月末に遡行したというyukiさんは、こんなにきれいだったかなあと言う。苔美人の石筵川、新緑の時期がきっと一番美しいのだ。

沢床の岩盤には可憐なオオバミゾホオズキがたくさん咲いていた。穏やかな流れがつづくが、飽きることはない。大きな釜を持つ7m滝は左岸を快適に越える。

苔に縁取りされた緩いトイ状小滝や2段8mナメ滝を快適に越えて行くと右岸の奥に平坦地の気配。沢から上がって様子を見ると整地不要の優良物件だ。予定のテンバよりはかなり手前だが、時間も押しているのでザックをおろすことにした。

今年初めての沢泊まり。小さな川原に枯木を集めて火を熾し、まずは沢で冷やしたビールで乾杯。やはり山は寝るに限る・・・というようなことを明治の岳人もどこかで書いていた。最近はとくに山旅指向が強くなっているが、これも歳のせいだろうか。

yukiさんは数日分ほどもありそうな食料やら何やらを丸ごとザックに詰め込んできた。担げるのだからいいけれど、やり過ぎだと半ば呆れる。おまけに途中で収穫したイタドリやタケノコ、ウドもある。食べきれずに夜が更けて行った。

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翌朝は目覚めた時間が起床時間。起きたら川原から焚火の煙がたなびいていた。急ぐ旅ではないからと、焚火をかこんでゆったりとした時間を過ごす。

断続的につづくナメを気楽に進んで行くと1240m附近で川原が広がり、右岸に少し小振りなテンバ適地があらわれる。前回泊まった場所だ。

最後の顕著な滝となる10m幅広滝はとても美しい。沢に陽がさし、透き通った水に映る自分の影で遊んだりしながら進む。1280m附近で当初予定していたテンバを確認する。興味がてら奥に入ってみるとよく整地された広場があり、焚火場も作られていた。

さすがにきれいなナメは終わり、1380mの二俣までが長く感じられた。前回は右俣に入って最後は薮をこいで安達太良山と和尚山の鞍部にでた。今回は、行程は長いけれど最後はすっきりと稜線に抜けられる本流の左俣へ進む。

渓相は一挙に変わってボサがうるさくなるが、歩行に支障をきたすほどではない。沢が右に緩やかにカーブすると樹林越しに前方の稜線が見えてきた。と同時に雪渓があらわれ、しばらくの間断続的につづく。

しだいに前方の展望が開け、左右に安達太良山と船明神山が見える。とくに一般登山道の裏側から見る緑豊かな安達太良山は新鮮だった。というのも、山頂付近は赤や黄色のペンキ印が多い殺伐とした印象が強かったからだ。

登るにつれ開放的な景観となり、ボサも消えて赤茶けた岩盤のナメとなる。1530mの開けた小さな二俣でザックをおろし登山靴に履き替える。稜線まではあと一息の距離だ。水涸れした沢筋を進むと、突然上流から水が流れて沢が復活するという面白い現象を目撃する。

源頭部は明るく開けた地形となり、沢旅のフィナーレにふさわしい詰めに感じられた。最後は左手の小尾根に上がり、イワカガミの群生に目をやりながら稜線に抜けた。

山頂標識の前にザックを置き、沼ノ平を一望できる所まで進んでみた。障子ヶ岩の岩峰群や巨大な火口とその周囲を間近に見るのは初めてで、別世界をのぞいているようだ。

下山路も初めて歩く道だ。しばらくは緑豊かな赤留川源頭部を見下ろしながら緩やかに下る。ナナカマドやサラサドウダンが満開だ。沿道にはゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、チゴユリが多く咲いていた。少しずつ花を覚え始めている。

中腹までくだると気持ちのいい木漏れ日のブナ林となる。母成峠の分岐点に古い標識があるが、峠への道は薮で覆われ廃道化している様子。左手の登山道をひと下りすると朝通った銚子ヶ滝分岐に合流し、車をとめたあずまやに戻った。(yuki、ako)

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6月に入り2週続けて安達太良の沢を歩いた。杉田川も石筵川も好天に恵まれ、幸先のいい沢シーズンの到来を感じる気持ちのいい遡行を楽しむことができた。

石筵川登山口11:00−銚子ヶ滝11:20−入渓点11:45−(ソーメンタイム12:45/13:15)−大滝13:40−1200m幕営地15:55//7:00−二俣8:55−奥の二俣10:20/10:40−船明神山11:20−登山口13:35