ブナの沢旅ブナの沢旅
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2015.05.02
三本山毛欅峠〜小沢山〜稲子山〜坪入山〜窓明山〜家向山〜巽沢山
カテゴリー:備忘録

2015年5月2−3日

 

5月の連休を前倒ししたように4月の後半に2週続けて2泊3日の山旅をした。例年ならばこれで十分のはずなのだが、いざ世間の連休がはじまると、落ち着かない。連日好天が続いているのでなおさらだ。体の疲労感は残っているのに気持ちが山へ行きたがっている。

ならばと、自分の中の折衷案としてブナの森でまったりと焚火を楽しむ計画を立て、少し強引に出かけた。今回はのんびり山行にしたかったので気分的に楽なお馴染みのコースを歩くことにした。一度歩いた安心感と7年ぶりなので新鮮でもある。城郭朝日山から坪入山までのゆるやかにうねったブナ街道がつながるというちょっとした達成感も得られる。(ほんとは少しギャップがあるのだけれど、山毛欅沢山経由にすると2日で坪入山をまわるのは厳しいため妥協)

浅草から会津高原尾瀬口駅へ。2週間前は一人だった檜枝岐行きのバスには十数人の登山者が乗った。5月からはバスのダイヤ改正で4月よりも始発が1時間早くて9時50分。小立岩で降りたのは当然私だけで、他の登山者から、こんな所で降りるのかという視線がちらり。当然みなさん会津駒ヶ岳方面の縦走なのだろう。

2週間前はまだ沿道に雪が残り木々の蕾は開いていなかったが、小立岩集落は新緑と花々に包まれていた。所々雪で覆われた安越又川林道を進むと新しく立派な橋が見えてきた。あらっ、もう着いたのかしら。3年前に初めて一人で歩いたときは、まだ大洪水の爪痕が生々しく橋は半分倒壊していた。

橋を渡った広場は殺伐としているが、2007年の春に最初に来た時は養殖場のような施設があって山毛欅沢には小さな橋もあったと記憶している。

ちょうど昼時で陽は高く、周囲の山々は新緑に包まれている。残雪期にこの辺りの山を何度か歩いているが、これだけ鮮やかな新緑に包まれた山を見るのは初めてではないだろうか。今年は融雪が急速に進み春の訪れが早いのだろう。

もちろん尾根に雪はなく、しばらくは踏み跡も明瞭で登山道のようだ。少し登るとブナ林が卓越するようになり、みずみずしい新緑に心がはずむ。右手にいまだ真っ白な山毛欅沢山が見える。青空と雪と新緑は私にとって残雪期の「三種の神器」。今回はみんなそろって完璧だ。

所々ヤブになるがたいしたことはない。1000mを越えると雪がつき始める。1200mまでの急登をやりすごすと、穏やかに広がるブナ林の台地尾根となる。新緑前線は1200mを越えても続いている。

文字通り3本のブナが立つ三本山毛欅峠の稜線へ。ついこの間歩いた山毛欅沢山を見渡す。さあと、ブナの回廊パート2の山旅へと向かう。小沢山に続く尾根筋はかなりの部分雪がなくなっているが、南側に張り出した雪庇の雪堤がまだ堅牢だ。

小沢山は山とはいえないくらいの凡庸なポコだが、ブナの大木におおわれ雰囲気がある。2008年に歩いたときはここにテントを張った。今回はもう少し進むことにする。鞍部に下る途中、窓明山と三岩岳の展望がいい台地状の尾根が広がる。思わずここに決めたと立ち止まり、ザックをおろす。

整地の必要がほとんどないのでさっそくツェルトを張り、焚火の準備に取りかかる。まずは枯れ木集めだが、連日の晴天で焚き木はカラカラに乾燥している。無心に枝集めをしていると一人でいることを忘れる。念入りに仕分けをするが面白いくらいにポキポキ折れる。火床をつくり、駅でくすめてきた時刻表の紙に着火するとすぐに細い枝がメラメラと燃え始め、あとは難なく燃え続けた。

以前は残雪期によく焚火をしたが、ここ2、3年は遠ざかっていた。だから雪の焚火への憧れがつのっていた。一人でも楽しめたけれど、やはり誰かと一緒の方が焚火はもっと楽しいはずだ。

焚火は盛大にできたのだけれど、気温が高くて夜でも外にいて寒くない。あったかいんだから〜♩という実益はあまりなく、火を熾すというプロセスを楽しんだという感じかな。

先週の上越国境稜線では震えながら飲んだビールだったが、今回は雪に埋めてたっぷり冷やしたビールがとても美味しい。もっと持ってくれば良かった。焚火にあたるというより、眺めながら、外で食事をした。稲子山に夕陽が沈むまでまったりとした時を過ごす。こんな時間に鶯がしきりに鳴いている。なんだかとても贅沢な遊びをしているなあと、現世とのギャップを小気味よく思う。

翌日も早出を心がける。寒くないのでテキパキと行動できる。早朝に鳥の鳴き声が聞こえると山は穏やかでいい天気なのだと安心するのだが、なかなか鳴き声が聞こえない。朝食を済ませてパッキングの支度を始める頃ようやく、ホーホケキョ〜の連呼が始まる。なんか宵っ張りの鶯だな、私はとっくに起きているのに遅いよー、と一人でブツブツ。

朝一番のお仕事は、稲子山の急斜面を登ること。地図でみても1400mからしばらくは等高線がえらく密だ。昼間の気温上昇でよくわからなかったトレースだったが、急斜面では雪が変色して窪んでいた。その古いトレースに沿って登る。山頂直下は雪庇の壁になっていたので最後は南西尾根にトラバースして1mほどの壁を崩して登った。

稲子山の山頂はパスして南西尾根を下る。これからたどる尾根を見下ろすと至る所で雪庇が割れて薮がでている。う〜ん、これはちょっと予想外。1467mポコとの鞍部までの傾斜が急な尾根では何度が割れた雪堤と薮の間を登ったり降りたり。

その後はイメージ通りの緩やかな雪尾根を気持ちよく進む。坪入山から窓明山の絵になる景観が近づく。二つの山の稜線から緩やかに尾を引く幾筋もの尾根はどれも気持ち良さそうなブナ林に包まれて安越又川源頭に落ちている。

尾根が西に向きを変える辺りでは、窓明山手前の1775m峰からゆったりと延びる尾根に目を奪われる。ここからちょっと下って沢を越えればすぐにこの尾根の取りつきだ。雪がたっぷりついたブナの尾根がずっと上まで続いている。いっそのことショートカットしようかと思ったりもしたが、やはり坪入山でブナ回廊を完結させたい。また来る機会があれば、トライする価値がありそうだ。

坪入山が近づき、気持ちよい尾根歩きもいよいよ最後となる。1600mからは無木立の雪稜を延々と登る。かなりの急斜面だがピッケルとアイゼンがあれば問題ない程度。けれど長かった。暑かった。もうヘトヘトになった。

坪入山の北尾根の一角に乗り上げたときには声が出るくらいの荒い息がなかなか止まらなかった。けれど高峰に登り詰めたような展望は素晴らしく、一挙に歩いてきた尾根筋をすべて見渡す。さらに前回歩いた城郭朝日山が存在感を示して見える。なかなかの達成感だ。

丸山岳に続く稜線を目で追う。ここからは一段と近く見える。梵天山は白いのに、丸山岳の山頂は2週間前に比べると黒々として見える。これだけ安定した天候がつづけば一人でもいけるかな。また行きたい。いつも心を惹き付けられる。

ここまでくれば気分は帰り道なのだが、そう甘くはなかった。全体に雪の状態が悪い。坪入山直下の急斜面も雪が割れて薮がでていた。傾斜が緩むと広い尾根歩きでしばらくは順調。2年前、丸山岳から坪入山にもどってきたときは急にスキーや何やらのトレースが増えていたのだが、今回はツボ足のトレースがわずか2人ほど。最初は連休最中なのに少ないと思ったが、窓明山に近づくにつれ納得がいった。山頂付近は尾根の両サイドとも薮が多く、かなりの薮こぎをしいられた。

そんなわけで窓明山に着いたときにはかなり疲れてしまった。のんびり快適な雪尾根歩きのはずだったのに、いつも気持ちが先行して見通しが甘いのだ。これまではもっとすっきりと三岩岳が見えたはずなのに、積雪量が少ないせいかシラビソ林が下半分を隠している。展望を得ようと山頂の端へいくと直下に薮がでていて驚く。

山頂にはたくさんのトレースがあったが今は誰もいない。西側のすこしくだった樹林が切れた展望地に腰をおろし、越後の山並みを眺めながらしばらく休憩。

5月からは増便となって最終バスが5時台になったので時間はある。三岩岳をまわって下山することも可能だ。けれどすっかり疲れてしまい、目の前の斜面を登る気力がわかなかった。何度も歩いている家向山経由で下ることにした。

窓明山からの下りはあっという間で、所々夏道がでていた。1本前のバスに乗れそうだったが、今更急ぎたくない。途中のすてきなブナ林帯で時間調整の大休憩。暑さでいつもより水分消費が多く水がなくなった。水をつくり、ついでにお茶とケーキでくつろぐことにしたのだ。

一人だとどうしてもあくせくしてしまうので、ゆったりとするキッカケができて良かった。途中心身ともに疲れてしまったので、ここで「焚火でまったり山行」のイメージを挽回したい。

いつものように家向山の山頂下をトラバース気味に進んで巽沢山への尾根に乗る。一ヶ所いつも間違いそうになる尾根に性懲りもなく引き込まれて軌道修正。あとは気持ちのいいブナ林の尾根をどんどん下る。1250mからは登山道があらわれイワウチワの道となる。

アイゼンを外し、巽沢山からは苦手な急斜面の登山道をこわごわ下って車道に降り立った。途中で時間調整したがバスの時間まで1時間近くある。何もない車道で待つのも所在なかったので、なんとなく歩き始めた。

しばらく歩いていると車が止まり、駅まで送ってくれるという。女性の単独行に敬意を表して車を止めたと言ってくれた。最初は会津高原駅までのつもりだったが、最近まで山登りをしていたという男性と山の話をしているうちに、帰り道だからと新白河まで送ってもらうことになった。どうもありがとうございました。また山歩きができて、いい写真がとれるといいですね。

小立岩11:00−安越又川橋11:30−三本山毛欅峠14:45−小沢山15:40−1410m幕営地15:55/5:00−稲子山6:20−坪入山10:00−窓明山12:05−1460m台地13:00/13:50−家向山−巽沢山15:30−登山口16:15