ヒロシマ・ナガサキのまえに

今年も8月15日がめぐって来た。そして明日は8月16日。

日々の平和を願うものにとって、その意味にあらためて思い至る大切な日。そして去年の今日、明日を想う。

引っ越しの荷解きで、段ボール箱に詰めた本を本棚に並べる中で一つの作品に目が留った。それは『ヒロシマ・ナガサキのまえに』というタイトルの、原爆に関するドキュメンタリー映画をもとにした電子出版物。私が初めて夫と一緒に仕事をした思い出深い作品だ。

 

米国のドキュメンタリー映画 The Day After Trinity をベースに、「原爆の父」といわれるオッペンハイマーの思想と生涯を柱に、多くの関係者のインタビューや政治的社会的背景の資料が数多く含まれている質量ともに重い作品だ。私が担当した翻訳の分量は膨大で、400字詰め原稿用紙で有に1000枚を越えた。その翻訳の全てに夫は目を通し、わからない所を一緒に考えてくれた。当時はビデオに字幕をつけることも大変だったが、そうした技術的な問題はすべて夫が担当した。作品の意味を問う重要な前書きも夫が書いた。

タイトルが日本のコンテキストに合わせ「ヒロシマ・ナガサキのまえに」と決まった所で、作品に被爆国のメッセージもいれたいと思い、付録に広島平和宣言を掲載することに決めた。広島市に打診した所うまくいかなかったが、代替策としてインターネットでリンクを貼るアイディアが浮上。今では誰もがやっている「常識」のようなものだが、当時はまだネット環境も開発途上でハードルが高かった時のことだ。

分量だけではなく内容的にも日々学習のチャレンジングな作業だったが、共同作業で仕上げた作品には特別の愛着がある。また歴史的にも意味のある作品の翻訳の機会を与えられたことは、さまざまな思い出とともにずっと心の糧となるだろう。

青空の向こうに向かい、一緒にできてよかった、ありがとうと、あらためて感じる8月15日と16日。

発売元のボイジャージャパンが、この作品を新しいソフト「ロマンサー」でテキスト部分をよみがえらせ、8月31日まで無料公開をしている。

https://romancer.voyager.co.jp

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