ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.11.04
大洞川市ノ沢~和名倉山~仁田小屋尾根
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2011年11月4-5日

 

シーズンを終える前に沢に泊って焚火をしたいというのが今回の目的だった。そこから何処へ行こうか考えた。当日発でのんびり一泊で行けて、頑張らなくてもよくて、遠からず近からずの所にあって、紅葉が期待できて、天気がよくて、まだ行ったことがなくて・・・と、あれこれインプットしてでてきたのが市ノ沢だった。

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当日は、雁坂トンネルから秩父湖を通って大洞林道に入り、大洞ダム上の駐車スペースへ。モノレール沿いの山道を下り、ダムを渡って踏み跡を進むと眼下にバックウォーターが見えてくる。ここが市ノ沢出合だ。しばらく踏み跡をたどって斜面を登っていくが、途中から踏み跡が判然としなくなったので、少し強引に急斜面を下って沢に降りた。

すぐに堰堤があらわれる。本来なら堰堤を越えたところから入渓するはずだったのに、初っ端から不要な冷や汗をかいてしまった。沢沿いの樹林はまだ紅葉しておらず、全体に薄暗さを感じる。これまで東北の紅葉したナメ沢を歩いて来たせいか、入渓後の雰囲気に戸惑う。おまけに久しぶりの重いザック。しばらくはよろよろしながら大岩ゴーロを進む。

小滝は多くが深い釜を持ち、濡れずに通過するのは難しい。膝以上は濡れたくない、だってのんびり焚火山行だもんと、ゴルジュをせっせと巻いていく。9月の台風の影響か、下流部は新しい倒木も目立つ。

何となく淡々と進み、ようやく岩穴沢出合へ。難しくないのにやけに時間がかかった。しだいに沢の雰囲気にも慣れてきて、奥秩父の沢の楽しみ方がよみがえってくる。ようやく二人の口からも、これはこれでいい感じだという言葉がでてくる。

岩穴沢を過ぎるときれいなナメ滝がつづくようになり、内心ようやく想像していた市ノ沢になってきたと思う。濡れたくないといいながら、登れる滝まで巻くのはつまらないので、少しシャワーを覚悟で取り付くと気持ちがいい。

ようやく調子がでて来ると、今度はどんどん登ろうよ~となって楽しい。ところが調子にのりすぎて、ナメ滝で思いっきり滑って転んでしまう。体全体でフリクションをきかせ、なんとか滝下に滑り落ちずにすんだが、起き上がることができない。Yさんに上からお助けロープを出してもらい、なんとか這い上がったが、油断とは恐ろしいものだ。

船久保沢出合を過ぎてもナメ滝は続き、いい雰囲気で進む。でもさすがにゴルジュは釜につかる気がなく巻いていく。一箇所2mもない小滝を越えるのに釜の深さを嫌って巻き上がったところ追い上げられてしまい、その先の連瀑帯を巻いてしまった。まっ、いいっか。夏に来てどんどん水につかれば楽しそうだ。

両岸が広がり、右手から芝沢が合流する。ようやくお目当てのテンバについた。右岸の台地が平らに整地されており、焚火の跡もある。市ノ沢唯一のテンバ適地のようで、みなここに泊る人気の宿だ。

さっそく枯木を大量に集め焚火の支度。乾いているのであっという間に火が熾きた。日も短くなっているので5時になると薄暗くなり、焚火の雰囲気が一段とアップ。けっこう濡れてしまったので衣類を乾かしながら暖を取る。焚火の楽しさ、ありがたさを感じられる一時だ。すでに一番の目的が達成できたので至極満足しながら就寝。

 

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朝は目覚めたときが起床タイム。ゆっくりしていると和名倉山に行けなくなるが、焚火を優先することにしてYさんがさっそく火を熾す。昨晩の熾火が残っていて朝からいい雰囲気だ。下流方向の沢筋に焚火の青白いけむりがたなびいていく。コーヒーをすすりながらぼっと一時をすごす。

のんびりしたけれど、思ったよりも早く出発。少し歩くと谷に朝日が射し始め、穏やかな日溜まりハイキングの雰囲気となる。今日は朝からいいねえ~の連発。谷全体が昨日と違う色調だ。陽の加減だけだろうか。自分の気持ちが色合いに反映されているのかもしれない。もうゴルジュはない。しばらくゴーロだが見上げれば木々は色づいている。よい天気に恵まれた。きれいなスダレ状ナメ滝が続き後半の見せ場となる。

1350mと1370mで右岸から枝沢がであう。日帰りの場合はこのあたりの枝沢から仁田小屋尾根に詰め上げた方が良さそうだ。さらに進むと苔蒸したゴーロとなり、いかにも奥秩父。1450mの奥の二俣を左に進み、次の二俣も左へ。ガイドではどれも右に進んでナシ尾根に抜けるようになっているが、ツメが短い左へ進んで仁田小屋尾根の1800m付近に抜けることにする。

1600mを越えると水が涸れる。出だしは急なガレ沢だが、上部は傾斜も緩み最後はすっきりと広くて開放的なカラマツ林の尾根にでた。時間的に多少の余裕があるのでザックをデポして和名倉山を往復する。

地図に登山道はないけれどしっかりとした踏み跡があり、テープも多くついていて迷うことはない。ナシ尾根と合流するところには和名倉山と仁田小屋尾根を示す標識板が二つ木に貼り付けてあった。シラビソの樹林帯を緩やかに登り、いつの間にか山頂へ。標識がなければ通過点にしか見えない山頂で、展望もない。けれど立派な標識が3つと白石山という古い標識もあり賑やかだ。

山岳会に入って2年目の春の集中が和名倉山だった。その時以来5年ぶりだ。因縁の和名倉山だからとYさんに写真を頼むと、旅立ちの和名倉山だと、きれいにまとめてくれた。二ノ瀬尾根から登ったという単独の男性が一足先に休んでいたので、二人の写真をとってもらった。

尾根が広がっているので下りはテープがないと迷いやすい。ザックのデポ地に戻って軽く昼食をとり下山開始。しばらくはゆったりとした疎林の道だが、松葉沢ノ頭を越えると背丈を超えるスズタケが覆い被さり視界がなくなる。

淡々と下ると仁田小屋ノ頭付近からは紅葉した樹林帯となり、イヌブナ平の広い台地へでる。調査チームの人たちが鹿の食害調査やブナのDNAを採取していた。ここで日本には五種類のブナがあるということを初めて聞いた。

紅葉の中を気分よく下って行くと植林帯となり、急に雰囲気が暗くなる。急斜面をジグザグに下って仁田小屋へ出ると二人の男性が作業中だった。鹿の食害対策ネットを張るために10人ほどが山に入っているとのこと。沢を横断して沢沿いを下り、30分ほどで林道に降り立った。

雲取林道は落ち葉で覆われ広い登山道のようだ。所々瓦礫の押し出しがひどいが、大洞川沿いの紅葉は格別に美しかった。大洞川橋手前のゲートを越えると広場になっていて、ちょうど沢遡行を終えた若者が休んでいた。話をきくと荒沢谷を遡行してアシ沢を下降してきたとのこと。

長い林道を淡々と歩いて行く。目標の4時には戻れそうもないが、気楽にのらりくらりとザックに腰掛け休んでいると、先ほどの若者の車が通り、乗りますかと声をかけてくれた。もう待ってました!とばかり、乗りま~す、ありがと!と大喜び。車中で話をきいたところ、JCC気鋭のクライマーのようで、アルパインはほとんどやり尽くしたとのこと。よくわからなかったが、とても感じのよい若者だった。

おかげで4時ぴったりにダム上の駐車地点に戻ることができた。どうもありがとうございました。最近は長い林道歩きのときはいつも車に拾ってもらえて運がいい。これも山の神様の思し召しだろうか。

 

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4日 林道下降点10:15-休憩12:30/13:10-岩穴沢出合14:15-芝沢出合幕営16:00

5日  幕営地7:10-奥の二俣9:12-尾根1790m10:44/11:05-和名倉山11:45-仁田小屋ノ頭13:33-仁田小屋14:30-林道15:00-途中ヒッチハイク-下降点16:00