ブナの沢旅ブナの沢旅
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2011.05.16
日原川鷹ノ巣谷
カテゴリー:備忘録

2011年5月16日

 

連休の矢筈岳で雪山を締めくくり、いよいよ沢シーズンの本格的な到来となった。

雪山の美しさに魅せられて以来、シーズンが終わりに近づくといつも寂しさを感じる。けれどひとたび沢水に足を浸し、新緑のシャワーを浴びると気持ちのスイッチが切り替わり、沢を楽しむ季節の到来を心からうれしく思う。白い恋人から緑の恋人へ・・・

足慣らしの第二弾として、鷹ノ巣谷で新緑のシャワーを浴びながら沢ハイキングを楽しんだ。前回のシダクラ沢と同様、公共の交通機関でアクセスがよく、比較的短時間で遡行できる初級の沢は単独山行が可能な貴重な沢。

今回も当初は一人でも行くつもりだったが、直前になってKさんが同行してくれた。3月初旬の獅子ケ鼻山以来だ。あれから世界は大きく変わってしまったが、ふたたび一緒に山に行けることを喜び合う。

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平日でも登山者で賑わう奥多摩駅でピックアップしてもらい、東日原の駐車場から歩き始める。ランドマークのように顕著な稲村岩を見ながら登山道入り口の階段を下る。山復のトラバース道をたどって巳ノ戸橋を渡り、日原川に下るとすぐに丸太橋のかかる鷹ノ巣谷出合となる。気持ちのいい川原で沢装備をつけるが、最初からのんびりムードがただよう。

小滝をいくつか越えると見栄えのする多段10mの地蔵ノ滝があらわれる。右から取り付き上段は左の階段状をのぼる。滝上で右から巳ノ戸沢をわけると、ダイナミックに水を落とす石積堰堤となる。古い苔むした堰堤なので、一見大滝のようだ。右側から巻くが、kukenさんは水流側の石積をクライミング。

しばらくは小滝とゴーロと古い堰堤が交互に出てくる沢歩きがつづく。取り立てて特長がある訳ではないが、新緑の美しさが際立っている。軽い足慣らしにはちょうどいい。右岸の岩壁のような枝沢が鮮やかな緑の苔に覆われ、苔の間から水をしたたり落としている。とても美しい光景だ。

さらに進むとワサビ田跡や岩なのか石積なのか一見わからないような古い堰堤があらわれる。これらはすべて人の手になる人工物だが、歳月の経過により自然に同化しつつあるようだ。奥多摩の沢にはかなり奥深いところにまでワサビ田跡が多く見られる。昔の人々の厳しい暮らしぶりと苦労を感じないではいられないが、同時に自然との調和の見事さに感心させられる。

小滝ながら水量が豊かだ。沢水の白さと明るい新緑のコントラストが美しい。先頭を行くKさんはけっこうハイピッチで、どんどん水流沿いを直登して進んでいく。同じルートでついていこうとすると身長や技量の違いが出て、すんなりといかないところもあったが、簡単なルートに日和るのもくやしいので、エイヤッ、どっこいしょと踏ん張る。

ゴルジュ帯に入り、3段のくの字滝となる。この滝も右側から取り付き、上段で水流をまたいで左から越えた。これ以上の水量だと怖い思いをしそうだ。滝上もさらに多段滝や小滝が続くが、すべて容易なので楽しく越えられる。

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そしていよいよ前方に大滝が見えてきた。これまでの渓相からは想像がつかない展開で、むしろ異質な存在だ。事前情報では手足が豊富とあったのでノーロープで登ろうと思っていたが、どんなに簡単でも高度感があるときはロープを出すというkukenさんの正論にしたがう。

リードはどちらがやってもかまわなかったが、暗にトレーニングという意味合いで私がロープを引いて登ることになった。右壁のルートはホールドもスタンスもしっかりしているので途中でランナーを取ることを忘れてしまう。中段あたりでkukenさんに言われるまで気づかなかった。ちょうど中程にテラスがあり、一息つくのにちょうどいい。

むしろ課題は、登ったあとのビレー態勢だった。残置ピンは見当たらなかったので、これまでさんざ酷使されたような灌木を束ねて支点としたが、かなり危うい感じだった。ビレー解除のコール後、kukenさんはあっという間に登って来てしまい、こちらのビレー態勢が追いつかずじまい。簡単なクライミングとはいえ、今回は二人ともロープワークに真剣でなかったと反省する。

二俣からは登山道に近い水ノ戸沢へ進む。小ぶりになるものの小滝が続き、ゴーロも苔むした雰囲気で悪くない。水量も予想以上にあって楽しめた。二俣からさらに奥に登ったところにまでワサビ田跡が見られ本当にに感心してしまう。どんどん高度を上げて1300mの二俣へ。左俣には水流があるが、ここは伏流となる右俣へすすむ。この先は涸棚登りとなるので早々と靴を履き替え、最後の水をくむ。

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最後の詰めが長いと書いてあるガイド本もあったが、今回は鷹ノ巣山にはこだわらず最短で登山道に抜けるルートを取ることにした。源頭部のスズタケの藪は枯れており、藪こぎも悪いグズグズ斜面もなくあっさりと登山道に出たので、二人で拍子抜けするほどだった。

藪が枯れていたので最後の詰めは楽だったが、辺り一帯のブナ林にとってはなんだか悪い兆候のようで気になることだった。

登山道一帯は長身のブナの大木が多く、丹沢のブナとは違う趣を感じた。標高1500mを越えたところではようやく芽吹きが始まったばかり。空が曇り始めたこともあって少し寂しい雰囲気だ。平日なので誰もいない静かな登山道を下る。下るにつれ新緑のグラデーションが鮮やかさをまし、とても美しい。奥多摩は谷川方面よりも遠いのだけれど、丹沢にはない雰囲気があるので今の時期はお気に入り。

稲村岩尾根はたるむところがなく一直線に下るが、道はジグザグに切ってあり歩きやすかった。1300mあたりを境にブナが急に細い二次林となる。上部だけ伐採をまぬがれて原生林が残ったのだろう。初めて歩いた尾根だったので興味深かった。

鷹ノ巣谷はどのガイドブックにもおすすめの初級沢となっているので以前から一度遡行したいと思っていたところ、ようやく実現した。きっと大滝の存在がこの沢の価値を底上げしているのだろうが、新緑や紅葉の時期におすすめの沢だと思った。

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東日原駐車場8:50-鷹ノ巣谷出合9:05/9:25-900m二俣11:30/11:45-水ノ戸沢-奥の二俣13:20/13:40-1560m登山道14:30-東日原駐車場16:30