ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.10.11
霧来沢鞍掛沢~本名御神楽
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2010年10月11日

 

人にはそれぞれ、ある山域への思い入れというものがあるはずだ。会越国境。越後meets会津。私の大好きな山域。XXアルプスのような華やかさは微塵もないマイナーな存在だが、豪雪に裏付けられた力強いブナの森と発達したスラブの山並は壮観で、その懐に小粒ながらきらりと光るステキな沢が眠っている。

3連休だというのに悪天続きで、結局1日だけの日帰り沢登りとなったが、終わってみれば充実感120%の山行だった。

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前日の午後東武線坂戸駅で集合し、kukenさんの車で只見の道の駅いりひろせでバイクのsamさんと合流。途中間断的に大雨となり、翌日の遡行が按じられる。Samさん持参のキャンプ用大型テントで小宴会をしながら雨の場合の代替案などを話し合うが、私が用意した軽井沢方面のプランはsamさんには遠すぎるとか、バイクのガス欠問題を抱えていたりで、結局当初の予定通りとして就寝。夜中ふたたび大雨となり、あれこれ気になって眠れずに朝を迎える。

まだ暗い朝、外を見ると星が出ており、雨はやんでいる。降らなければ良しとして出発。幸いなことに天候は予報よりも早く回復したようで、霧来林道を登山口に進むころには晴れてきた。今回はここに来るまでが二転三転の連続で疲れてしまい、ある意味出発までが核心だった。雨でも何でも決行すれば手っ取り早いのだけれど、ブナの沢旅ルール(雨の可能性があるところは避けて直前でも代替プランを取り入れる)を持ちこんだのが災いしたようだ。

と、長い前置きとなってしまった・・・

御神楽岳登山口手前に車をおいて出発。登山道が八乙女の滝を回り込んで沢に近づいたところで川におりて沢装備をつけ入渓する。すぐに八丁の洗板と呼ばれる、沢幅一杯に広がる美しいナメ床となり、みな思わず歓声をあげる。きれいだねーといいながらヒタヒタと歩いて鞍掛沢出合いへ。

鞍掛沢は森の中を流れる小川風情で始まる。すぐにきれいなナメ滝が連続するようになり、私好みの渓相に面相が緩みっぱなし。一方普段はさっさと先へ進んでしまう男性陣はキノコ探しに夢中のようだ。Kukenさんのキノコ袋は早くもナラタケでずしりと重くなっている。キノコをとったり滝を登ったりと忙しくも楽しい遡行が続く。

二俣は左へ進むのだが、右俣奥の大滝を見物に行ってみた。鞍掛沢で最初に目にした大滝なので、なかなかの迫力があり見応えたっぷり。めいめい写真を撮って左俣出合へ戻る。突撃隊長のsamさんは早々にロープをつけて登り始めるが、誰もビレーしていない。あわてて確保にまわるchieさんを横目に、kukenさんは早々に右から巻きはじめている。一見みなが好き勝手をしているようだが、これが自分には合っている。

左俣に進むとしだいに高度を上げ、なんとかノーロープで登れる面白い滝が続く。先頭を行く岩やのchieさんは楽しさあまってどんどん飛ばすので、昨晩ほとんど眠れなかった私はペースがあわず疲れ気味となる。

少しゴーロで平凡になったあと、前方に核心の30m大滝があらわれた。直登は不可能だが、両岸が切れ立っていて高巻きも容易ではない。右手前の逆くの字状ルンゼがルートのようだが、かなり悪そうなのでロープを出すことに。いつもはほとんどロープを使わない沢登りをしているので、こんなとき私は役立たず。良きに計らえと、3人にお任せモードとなる。

2ピッチ目の上部はルンゼが垂直で登れないため左の岩壁に回り込むのだが、空中に突き出た岩に乗り込むようで怖いよーの連発。上からchieさんの励ましを受けながらなんとか乗り越える。やっぱり岩やさんは違うなあ~。狭いバンドに上がると、確保の支点は、岩壁の残置ハーケンだった。やっぱりあるところにはあるものだと、妙に感心する。そこから草の斜面をトラバースすると滝の落ち口が見えてきて、灌木を頼りに3mほど滑り降りて着地。samさん、うまい具合の落ち口を見つけたものだ。

ヤレヤレなのだが、行く手には、またまたやっかいそうな2段15m滝が見える。突撃隊長の確保で続くが、岩が細かく、途中水流を横切るところでは緊張した。登り切ったときには思わず上で見ていたsamさんにやったあ~のvサイン。うれしかった。

続く10m滝。先行する女性陣は右の窪状から巻くが、抜けるところがいやらしく、chieさんが渾身のムーブで突破。私はお助けを出してもらう。男性陣はsamさんが左からロープをひいて直登。その後も小難しい滝が続き、楽しませてくれる。けれどそのうちお腹一杯となり、これで最後、これで最後と期待しながらの遡行となる。滝が終わるとスラブ状の急斜面となり、どんどん高度を上げていき、最後は軽く藪をこいで登山道にぬけた。

ザックを置いて山頂へ向かうが、上部はガスで何も見えない。展望を期待していたので残念なのだが、遡行を終えた充実感に満たされていた。みんなで代わる代わる写真をとりあい、あらためて面白かったね、いい沢だったねと余韻を楽しみ、山頂をあとにした。

山頂付近は紅葉が始まっており、あと2週間くらいで全山が燃えるのだろう。少しくだった避難小屋で休憩し、濡れた上衣を着替えてさっぱりしてから、収穫したキノコ満載のスープをつくって温まりました。味わいのある鉄のストーブがある小屋は快適で、みんなで雪の季節に泊まりに来たいねと言い合う。

下山の途中、前ヶ岳南壁を見渡せるポイントで足を止め、スラブ群を見物。天気が良ければ1日はV字第二スラブか右スラブを登る予定だったのだ。一見あんな所登れるのかなと思う傾斜だ。ゼニイレ沢のときも同じように思ったが、近づくとけっこう登れるものだ。紅葉の山並を眺めながらの快適スラブ登り・・・きっと実現させたい。

下るにつれ、未だみずみずしいブナの木々が目に飛び込んできて立ち止まることしばし。やっぱり会越の森は違うなあ~と、一人悦に入るが、他のメンバーは相変わらずキノコに夢中だ。あっという間に沢に下ったが、ここからが結構長い道のりだった。途中八丁洗板ではふたたび沢に入り、最後のナメを楽しんで登山口に戻った。

鞍掛沢はあまり記録もなく知られていないが、前半のきれいなナメ小滝と、後半のエキサイティングな滝登りが楽しめるとても面白い沢というのがメンバーの一致した感想だ。けれどなにしろ遠い所。なかなか容易に行けるところではないので、今回は往復とも一人でずっと運転をしてくれたkukenさんに感謝!(kuken、sam、chie、ako)

 

 

 

 

kurakake2 

御神楽岳登山口7:30ー鞍掛沢出8:25ー登山道12:55ー本名御神楽岳13:00ー避難小屋13:15/13:45ー登山口16:15