ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.06.11
高森川中ノ沢~沼尻元湯
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2010年6月11日

 

安達太良には遡行対象となる沢が10本近くあり、そのほとんどがナメのきれいな易しい沢。すでに杉田川、石筵川、湯川を遡行し、どの沢もとてもよかったので今年も訪れてみることにした。

当初、週末に向け天候が悪化する予報だったので、展望の期待できる初日に仏沢から箕輪山、翌日は赤留川~中ノ沢下降を計画。ところが、車で現地に向かう途中、安達太良の野湯、沼尻湯元に是非行ってみたいと話が盛り上がる。時間の関係で赤留川をやめて赤ナメの沢である中ノ沢を簡単にピストンして沼尻湯元に向かうことにした。しかも天候は土曜日の方がいいらしいということで、仏沢は翌日に。いつもながらの土壇場の予定変更だ。

中ノ沢温泉から林道に入り、地図で見当をつけたあたりの空地に車をとめる。しばらく林道を進むとちょっとした広場となり、その先は藪となっている。適当に沢に下りてしばらくはゴーロを進むと、赤茶けたきれいなナメがでてきた。

ここからナメが続けばよかったのだが、しだいに大岩のゴーロとなり、倒木も出てきて歩きにくくなる。どうも早く沢に降りすぎたらしいので、両岸が下りてきたところでふたたび林道にでる。途中タケノコを取りながらしばらく進むと土管が出てきた。ふたたび藪となったので沢にくだる。変則的な遡行だけれど、中ノ沢はおまけ遡行だから、まあ、いいっか。

ここからはゴルジュ、ナメ、小滝と、沢登りらしくなり、赤ナメが顕著となる。倒木が無ければもっときれいなのに残念だ。途中頭上に土管が通る。きっと林道はこのあたりまで続いているのだろう。水中の赤ナメ床には緑色の苔が生えており、あたりの新緑と相まって、コントラストがきれい。

平ナメがつづいたあと、ようやくすこし傾斜のあるナメがあらわれる。何もない沢では、これくらいのナメ滝にも感激してしまう。水流沿いを快適に登るとナメはさらにずっと続いており、歓声をあげて喜ぶ。途中のゴーロや倒木で少しうんざりするところもあったが、やっぱり来てよかった。なかなかの美しさに満足しながら進んでいくと、沢幅は狭くなるものの赤ナメはさらに赤みを増していく。どうしてこんなに赤いのだろうと不思議に思っていると、1270mあたりで沢の横が赤土の泥沼となり、ボコボコと赤い泥が噴出している。濃い鉄分を含んだ泥がここから沢に流れ込み、沢床を赤く染めていたのだ。

ここから先、沢床は普通の色になっている。なるほどと、赤ナメの由来を納得し、引き返すことにした。帰りは土管の橋のところから踏み跡をたどるとしだいに立派な道となり、すぐに駐車地点に戻ることができた。

中ノ沢はこれだけのためにわざわざ出向くほどではないが、見ごたえのある美しい赤ナメ帯があり、この沢のハイライトとなっている。写真では茶色がかってしまうが、本当に赤い沢床のナメが珍しい沢だった。前半に倒木が多くて残念なのだが、これがなければ小ぶりながら本当にきれいで、隠れた美渓といえるだろう。

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沢靴を履き替え、中の沢温泉へもどって沼尻スキー場へ向かう。スキー場からゲレンデトップにある沼尻登山口までは林道が続いており、どんどん標高をあげる。林道終点は広い駐車場となっていて登山口の標識がある。ここから元湯へは尾根道をたどってから分岐する実線の登山道と、破線のトラバース道がある。様子がわからないので、行きは遠回りの尾根道をたどる。

5分ほどで白糸の滝の展望台となる。なかなか圧巻の景観だ。尾根道の分岐からは元湯の全景を見渡すことができ、その異様な光景を唖然と見つめる。殺伐とした山肌を見ながら下って沢に下りると、あちこちから煙がでていてあたりに硫黄の匂いが立ち込めている。縦横にパイプが張られ、木の足場が組まれている。真ん中に白濁した水流があり、手をつけてみるとそれほど熱いわけではない。

すこし上流に向かうと流れの所々がちょうどいい按配の湯場となっており、よさそうなところで水着に着替えて湯につかる。これこそ正真正銘の露天風呂だ。広大な眺めを楽しみながらつかる湯は、この上なく気持ちがいい。つぎに入った露天は岩から熱湯が染み出しており、湯が適度に温かくこちらの方が快適だった。

平日の夕方なのであたりには誰もいない。温泉好きの人にはたまらないはずだ。すでに愛好家の間ではけっこう人気のあるスポットらしい。確かにアクセスは意外と簡単なので、休日にはもっと人出があるのかもしれない。新緑と赤ナメの自然を楽しんだ後の光景としては異様だが、そのギャップが新鮮だった。

帰りはショートカットのトラバース道をたどる。途中とてもきれいなコバルトブルーのスポットがあり、別の場所を見下ろすと、岩場の陰に隠れるようなところで男性が一人気持ちよさそうに湯につかっているのが見えた。きっとお気に入りの場所なのだろう。また来る機会があったら、いってみようかな。ということで、赤ナメを楽しんだ後は雄大な景色の野湯につかり、安達太良遠征の初日を終えた。

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高森川中ノ沢  中ノ沢温泉林道10:00~中ノ沢1250m鉄分噴出地13:00~土管橋14:45~林道駐車地点15:20
沼尻元湯    沼尻登山口16:00~沼尻元湯16:40/17:30~登山口17:50