ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.02.22
船形山
カテゴリー:雪山

2009年2月22-23日

 

朝一番の新幹線で古川駅へ向かい、レンタカーで登山口手前にある内水面水産試験場をめざす。試験場までは除雪されているので、冬でも人が多く入っているようだ。すでにたくさんの車が駐車していたのでおどろいたが、半数はふもとの森へ入る写真教室の人たちだった。

スノーシューをはいて歩き出すと、さっそくあたりはブナの森となる。雪国のブナは樹肌が白くてきれいだ。升沢コースは全体が緩やかな広い尾根筋の登りで、かつては信仰登山の道だったらしい。初めての入山が積雪期なので、踏み跡がないと難しそうなルートなのだけれど、案の定しっかりした踏み跡があった。

その上、ところどころに番号の付いた赤い標識があり、かなりの積雪があっても埋もれないように配慮されている。これで安心して歩けそうだ。これだけまとまったブナ林の登山道が続くコースを歩くのは初めてではないだろうか。期待通りのすてきな森のコースを歩くだけでも、はるばるやって来た甲斐があったねーと、満足、満足。

三光の宮が近づくとブナがしだいに矮小化し、ヒメコマツがあらわれる。前方には前船形山の展望がひらけてきた。ここでスキーの二人組とすれ違い、ベテラン風情の男性が行く先のコースについていろいろアドバイスしてくれた。

このあたりで多くの人が迷っているとのこと。船形山まで行くのは難しいだろうともいわれた。ほとんどの登山者は三光の宮で引き返すらしく、この先は地図で予想していた通り、われわれの力量ではほとんど読図不能な地形で踏み跡もない。茫漠とした広い尾根で現在地の特定がむずかしいのだ。頼りの標識も見つけるのに一苦労である。

翌日は悪天候の予報。当初は升沢小屋に泊る予定だったけれど、どうしようかと相談した結果、明瞭な尾根をのばしている蛇ヶ岳に登って地形を確認しようということになった。少し進むと前方左手に船形山と山頂の避難小屋が見えてきた。

予想以上に早い時間に山の全容を見渡すことができて意外だった。目の前に真っ白なその姿を見れば、当然行ってみたくなるのが人情というもの。左手南側には北泉ヶ岳からのびている尾根を見渡し、谷を挟んだ向かいに三峰山が近い。

いよいよ本格的な雪山の雰囲気になってきた。と同時に、尾根を登るにつれ強風に見舞われるようになる。ときどき突風に飛ばされそうになるためピッケルを取り出すが、山頂近くなると雪面がクラストしていてピッケルが刺さらない。

いくどか耐風姿勢で動けなくなり怖くなる。ほうほうの体で蛇ケ岳手前の1380mピークにたどり着き、もうここまでと観念。強風さえ収まれば船形山頂もいけそうだけれど無理はできない。年末に大朝日岳で突風による滑落死亡事故が起きていることが頭をよぎった。

なんとか写真を撮り、引き返すことにした。樹林帯まで下るとうそのように風は収まり、遠くからゴーゴーという音だけが聞こえる。三光の宮に戻ったあたりで単独の男性が追いついてきた。なんと早朝に出発して船形山から蛇ヶ岳を縦走してきたという!

事情を話すと、ここでも初めてなら迷うかもしれないといわれた。これで気持ちは決まり。小屋はあきらめる。下山することもできたが、いい機会なのでブナの森にテントを張ることにした。なんだかそれも素敵だなと思えて、気持ちが楽になる。

どこでもいいテンバなのだけれど、さらに贅沢物件を求めて森に分け入り、大きなブナに囲まれたところにねぐらを確保。食料はあまり重量制限せずにスープやごはんをそのまま持ってきて呆れられるが、これくらいの重量に慣れていれば軽量化した2-3泊分の食料も負担なく持てるというのがこちらの理屈。翌日はせめて雨にならないことを祈りながら、早々にシュラフにもぐりこんだ。

目覚めるとテントをたたく音がする。朝方からみぞれまじりの雪が降り出したようだ。下山するだけなのでよしとしていたところ、出かけるころには小雪となる。ガスも出始め、森は幻想的な雰囲気だ。

すでに安全圏にいるので、むしろ大歓迎。早く下るのはもったいないから森をさまよいながら帰ろうねーなどと、はしゃいでしまう。けれど、雪の降る美しい森の光景を目に焼きつけようと何度も立ち止まり、のんびり歩いても、あっという間に登山口に降り立ってしまった。

このまま帰るのはもったいない。とはいえ、どこかに行くほどの時間もないし、車を古川駅に戻さなければいけない。そこで登山口の隣にある「自然とブナの薫る道」の散策路をめぐってみることにした。

途中に沼や伏流水を豪快に落とす滝もあって楽しそうなコースだ。けれどこのファミリーコースはあくまでも無雪期のコースで、あっという間に現在地が不明となってしまった。散歩だと思えばそれも楽しいことだと、しばらく歩き回り、昼前に車に戻った。

山頂を踏むことはできなかったし、升沢小屋もスキップしてしまい心残りとなったけれど、船形山を選んだ最大の理由である、雪のブナ森にどっぷりつかることができ満足だった。船形山には笹木沢という美しい沢があるので、次回はぜひ沢を遡行して再訪してみたいと思う。

2月22日 升沢コース登山口10:00-三光の宮12:50-1380m蛇ヶ岳前ピーク14:10-850mテンバ15:50

2月23日 テンバ8:20-登山口9:10-散策路周遊-登山口11:30