ブナの沢旅ブナの沢旅
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2009.02.08
粟ヶ岳
カテゴリー:雪山

2009年2月8-9日

 

12月に新潟の大蔵山~菅名岳の山頂で、ひときわ際立って凛々しい姿の山が目に飛び込んできました。それが粟ヶ岳でした。カッコいいなぁ、行きたいなぁという想いをつのらせていたものの、厳冬期の粟ケ岳というとやはり敷居が高い。けれど調べてみると、冬季でも避難小屋のある八合目までは地元の人たちが日帰りで入っているようでした。行けそうだな・・・

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長岡駅でsamさんと待ち合わせ、登山口となる加茂水源池へむかう。加茂は懐かしい町名だ。幼いころ住んでいた家の前を加茂行きのバスが通っており、たぶん3~4歳のころに認識した最初の「知らない街」だと思う。そこに半世紀たって山登りに来るなんて、何かの因果を感ぜずにはいられない。などと、おセンチな前置きになってしまった。

豪雪地帯のはずだが、今年は異常に雪が少ないらしい。除雪終了地点からワカンをつけて杉林の林道を第二貯水池の登山口へ。一帯はキャンプ場が整備されていたりで、リクリエーションセンターのようだ。堰堤を渡り植林地の斜面に取り付いて緩やかな尾根を登る。

時折小雪がちらつくが、天気は回復しつつある様子。踏み後はしっかりしており、前日に人が入った気配がうかがえる。傾斜が急になり時々四つんばいになりながら登りきると三合目で、長瀬神社からの登山道と合流する。展望も開けてきた。

ここからは一本調子の登りとなり高度を稼ぐが、急坂が多く私だけアイゼンに履き替える。自分のアイゼンを車に置いてきてしまい、Yさんから借りる羽目に。僕はどうなるのといわれ、ワカンで頑張るのもトレーニングのうちと、身勝手な理屈でその場をしのいだものの、自分できちんと判断しなかったことを後悔し、教訓とした。

こぶを登るたびにますます展望が開け、振り向けばたどってきた尾根が見渡せる。まるで円形劇場の真ん中にいるような光景だ。梯子場を過ぎると絶壁のクサリ場だ。ロープが張ってあるがその先の数歩がいやらしく、samさんが上からロープを出してくれた。彼はこんなところをシューで簡単に登ってしまうのだからすごい。でも、あまり頼ってはいけないなとも思った。

さらに急登は続き粟庭ノ頭へ。展望は抜群だけれど、転がり落ちそうな急降下がまっていた。まだまだヘッピリ腰だが、なかなか楽しいところだった。砥沢側が切れ落ちたナイフエッジの稜線は右側をピッケルを刺しながら慎重にトラバース。ようやく難所を越え、ホッとしながら緩やかに登っていくと開けた雪原の上に避難小屋の屋根が見えてきた。空を見上げると青空も出てきた。

なんだか山頂についたような心地だ。雪原の向こうには粟の北峰と中峰が双子峰のように白く聳えている。かっこいいなぁー。小屋は半分雪に埋もれていたが正面入り口はしっかり除雪されていた。こじんまりとして快適そうだ。毛布もたくさん置いてあった。

 

 

 

お茶を沸かして一休みしたあとは、sam先生による雪崩遭難者救出トレーニング。もともと冬山登山をするつもりはなかったので、ビーコンは買わずに必要に応じ借り物ですませていた。けれど今回の山行でsamさんからビーコン必携というお達しがあり、ようやく購入したのだった。

山岳会に在籍していたときに何度かトレーニングは経験していたが、正直なところあまり真剣ではなかった。これからは積雪期の山にも行きたいので、心を入れ替えなければいけない。

ビーコン操作を一通り実習したあとは小屋にもどって3分の1分散法などのロープワークの説明をしてもらう。とても熱心な指導にだんだんついていけなくなったところで、さあ宴会の準備。今夜は貸しきり状態だ。カクテルタイムからメインコースと、静かな宴を楽しみながら7時くらいまでおしゃべり。

外にでてみると月明かりと町の灯が素晴らしい。ヘッドランプを消すと月光の明るさが美しさを増し、粟の北峰が月光を浴びて妖艶な姿にみえる。このまま登っていけそうだ。みなでその美しさに息を呑み、見とれてたたずむことしばし・・・

翌朝はのんびりと8時過ぎに出発。いよいよ登頂だ。臆病な私は北峰の急登にそなえアイゼンとワカンで完全武装。雪はしまっていて歩きやすく、雪原のような稜線漫歩を堪能する。もうたまらなく気持ちがいいっ。守門山塊が近い。12月に行った大岳から覗き込んだ絶壁が雪の屏風岩のようにみえる。

八十里越の鞍掛峠から歩いた中腹のトラバース道はあの辺りだよね。今目の前にしている雄大で真っ白な山稜がわずか1300mにも満たない標高だということが信じられない。さすが越後の山だなあ。一歩一歩をかみしめながらいよいよ山頂へ。

samさんは以前山岳会パーティーでトライしたけれど風雪で登頂できなかったという。今回も五分五分だと思っていたらしい。好天と寡雪、そしてもちろん、よき仲間に恵まれた結果なのだ。360度のパノラマにみな興奮する。

かなたには高くひときわ白い飯豊連峰がつらなり、眼下には幾重にも複雑に襞をくねらせたような川内山塊が広がっている。山座同定がつきない。川内山塊の雄といわれる矢筈岳も指呼の間だ。心の中では決まっているのだ。つぎは矢筈岳と。

もう一度この素晴らしい稜線漫歩を楽しみながら小屋にもどる途中で中年女性に出会う。小屋で休みながら下山の支度をしているとさらにもう一人単独の男性がやってきた。雪が少ないのでスパイク長靴で大丈夫なのだという。みな日帰りだ。越後のハイカーはレベルが高いなあと感心。

下山路は同じコースではつまらないし、緊張の絶壁を下るのもイヤなので、小屋から第二貯水池に伸びている北西尾根を下ることにした。下り初めに尾根が切れ落ちているところを巻いた以外は、ゆったりとした気持ちのいい尾根で快適だった。赤テープもたくさん出てきて、よく歩かれているらしい。

堰堤前に降り立つと、大俣登山道、加茂山岳会70周年記念という標識がでていた。2万5000分の1地図には出ていないが、後で調べたら山渓のアルペンガイドには砥沢尾根として薄い破線が引かれ、道悪いとあった。その道が整備されたのかもしれない。沢を渡渉して対岸の林道に上がり、車に戻った。

一目ぼれした粟ヶ岳。早くも想いがかない、幸せでした。みんな、ありがとう。

 

 

 

2月8日 水源貯水池9:05-登山口9:50-三合目分岐-砥沢避難小屋13:50

2月9日 避難小屋8:15-山頂10:00/10:30-避難小屋11:20/12:00-第二貯水池登山口13:55-水源貯水池15:00