ブナの沢旅ブナの沢旅
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2023.06.01
安達太良山麓 湯川
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2023年5月31日

15年ぶりに安達太良湯川へ。安達太良の沢はそれほど難しくなく美しい沢が多いのでこれまでに10本以上遡行したが、以来久しく訪れていなかった。ようやく身辺も落ち着いてきたので沢始めに日帰りでも余裕で行くことができる湯川を選んだ。

歩き始めのゴーロをやり過ごせば、短い行程の中に見栄えのする滝とナメが交互にあらわれる沢の良さが凝縮されたような沢だ。登山道が並行しているので途中から入渓して途中で切り上げることもできる。だからと言って東京周辺とは違い人出が気になることもない。

人生の黄昏期に入った者でも安心して遡行でき、あらためて湯川の美しさを感じ入ることができた沢始めとなった。

福島駅から登山口のある塩沢スキー場までは車で40分ほどなので9時には歩き始めることができる。谷川岳や安達太良山方面は朝出発しても9時には行動を始められる貴重な山域。湯川にかかる丸太橋から対岸に渡り、小さな川原で沢支度する。しばらくはゴーロが続くが、かえってウォーミングアップになるので苦にならない。

最近はストックが沢歩きの必須アイテムとなっているが、それでも時々よろける。新緑の空気を新鮮に感じながら最初の滝へ。一見通過できそうになく見えるが左壁が階段状なので容易に登れる。難しいところがないことがわかっているので気持ちに余裕がある。今はこの気持ちの余裕を大切にしている。

ここから三階滝までが多少冗長に感じられた。登山道からおりてくることもできるので、ここから入渓するのもありかもしれない。下段の滝も左壁から登れそうだが見るだけで巻道へあがる。中段の滝上から沢に降りてティータイムとする。巻道は登山道のようにしっかりしていて鉄梯子まで完備してある。

三階滝から上が湯川の美渓たる真骨頂で次々と見栄えのする滑滝や美しい平滑がつづく。最初に遡行してから15年も経っているので沢のスケール感はおぼろげで、相恋の滝は、こんなに大きな滝だったかな〜なんて思う。近年かわいい沢歩きが多いせいかもしれない。

最近は羊毛フェルトを使用しているので安心感が違う。湯川でも滑りを感じることがなかった。羊毛フェルトはすぐにすり減って張り替えも普通の沢靴が買えるほど高価なのだけれど、こんな歳でも沢歩きができるのだからと、納得している。

登山道が交差する八幡滝が見えてきた。登山道は左俣沿いだが、かつては右俣にも登山道があり、八幡滝の右壁沿いには古い鎖が今も残っていた。滝上は以前天の川のようだと思った傾斜のある滑が続いており湯川ハイライトの一つだ。15年前にあったナメ沿いの鎖はさすがになくなっていたが、ところどころにトラロープが張られていた。

気持ちのいいところなのだが、油断すると下まで滑り落ちてしまいそう。そう思ったとたんに気持ちが萎縮してしまい真ん中を堂々と歩くことができなかった。昔の写真をみると大胆だなと思うが、あの頃は沢を始めて間もなくのころで怖さに鈍かった気がする。

木漏れ日の中のナメ歩きほど気持ちのいいものはない。途中の平場でランチタイムをとり、久しぶりに東北の沢、安達太良の沢にこれたことを喜ぶ。中の滝は陽を浴びて黒光りしている。前回は果敢に中央から取り付き上部で緊張しながら越えた滝だ。今はとてもそんな勇気はないが、それなりのルートで楽しく登ることができた。

前方に見慣れた景色が広がる。まるで東黒沢のナメの一コマのようだと思う。右岸に一本の大きなブナが張り出している、この景色が好きで、いつも写真に収めていたところだ。ナメを越えると霧降の滝だ。滝壺手前が落石で少し雑然としていたが、以前と変わらない姿だった。前回はこの滝を高巻いてさらに奥へ進んでみたが、ナメがすぐに途切れたので引き返した。

無事に遡行できたことに安堵。最近は遡行を終えるたびに安堵の気持ちが先立つ。沢装備を解いて休憩後、僧悟台へ向かう。かつては登山道があった廃道をテープを頼りに登る。途中で道を外してしまい、少しご愛嬌の藪漕ぎを交えて最後は登山道並みの踏み跡から僧悟台の登山道に合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし次回があれば三階滝から入渓して僧悟台から安達太良山を回ってみたい。なにしろこれまでの数少ない山頂はいつもガスだったので、安達太良山の青い空を見たいと思う。

入渓点9:30ー八幡の滝ー霧降滝13:00/13:30ー僧悟台14:15ー入渓点15:15