ブナの沢旅ブナの沢旅
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2022.05.18
三岩岳〜会津駒〜中門岳
カテゴリー:雪山

2022年5月18-19日

沢シーズンに移行する前にもう一度南会津へ行きたいと、ブナの新緑と残雪の山を歩きながら丸山岳を遠望する短い山旅を楽しんだ。連休が終わると山は一斉に芽吹きの季節を迎える。5年前の5月下旬に三岩岳から窓明山を周回した時新緑の美しさが印象的だった。

芽吹いたブナの山を歩いて南会津の奥山を眺めるのも悪くない。今回は三岩岳から会津駒を経由して中門岳へ行ってみよう。昨年9月に中門沢を遡行して至った山だ。沢と雪山がつながる。いい(口実)ができたことで、最初は多少惰性感があった山旅に生気が加わった(とはちょっと大袈裟かな。。)

会津高原尾瀬口駅からのバスは御池まで開通していた。たかつえスキー場を経由しないため冬季より15分ほど早く登山口についた。バスは相変わらず行きも帰りも貸切状態で、それでも運行を続けてもらえることをいつもありがたく思う。

登山口付近はハルゼミが鳴き初夏の雰囲気だ。ジグザグに急斜面を登ると沿道にはイワイウチワやシャクナゲが新緑に彩りを添えている。1100mを超えると端正なブナの二次林の急登となる。積雪期には恐々と下る斜面だが、今は淡い緑の森が広がる。傾斜が緩むと突然のように雪に覆われた尾根となる。三岩岳や窓明山も姿をあらわすが、まだ雪がたっぷりついている。中腹まではブナの新緑におおわれ、青空と新緑と残雪のコントラストが美しい。

旧道分岐の鞍部でザックをおろす。南会津の山々は連休明けの今頃の方が新緑と残雪の両方が楽しめることをあらためて実感する。ほんと、来てよかったなと思う。さらにブナの雪尾根を登るが、まだ登山道はほとんど雪に埋もれている。ブナ林帯を過ぎるとダケカンバの疎林となり雪尾根をどんどん登っていく。シラビソ林があらわれる頃窓明山からの登山道分岐が近づき、樹林越しに坪入山奥の主稜線が見える。

避難小屋を見逃さないよう注意していくとシラビソ林の間に姿があらわれ、入り口は掘り起こされてステップが切ってあった。久しぶりの避難小屋泊まり。まずは三箇所ある窓を開けて光と風を通す。小さな小屋なのが心地よいと思うのは、いつも他に登山者がいないからだろう。2ヶ月前には風雪の中で苦労してテントを設営したことを思い出し、小屋泊まりは楽で快適だといいながら初日をおえた。

 

 

 

 

 

二日目は行程が長いのでこれまでで一番早い4時半に出発した。日が長く4時過ぎには明るい。山泊まりした朝はウグイスの鳴き声を聞くといい日になりそうだという気持ちになる。出発する頃陽が昇り始め、行く手の山頂方向には丸い月が出ている。まるで月と太陽が向かい合っているようで、真子さんと小室さんみたいだなんて言いながら山頂へ。

三岩岳からがいわばメインイベントなのだが、私にとって今回は中門岳に行くための通り道。山頂の藪を左手から巻くと連休の頃と変わらない残雪期の快適な稜線歩きとなる。スプーンカットの雪面は汚れもなくきれいなのが嬉しい。暖かさのせいか景色が霞みがちなのが厳冬期との違いだけれど、坪入山からの主稜線が違う角度からよく見える。やはり鞍部のブナ林帯はもう雪がなくなっているようだ。

大戸沢岳を越えた2088mポコは藪で覆われているためルートは手前の鞍部から北面をトラバースして次の鞍部に乗り上げる。会津駒の山頂に近づくと燧ヶ岳があらわれる。山頂標識はまだ数十センチほど雪に埋もれていた。9時前なので麓からの登山者はいなかった。山頂北側のシラビソの陰にザックをデポして空身で中門岳へ向かう。

 

 

 

 

中門岳へはなだらかな雪尾根が続いている。御神楽沢源頭部の雪庇は所々崩れ落ちているが、三岩岳からの稜線に比べはるかに雪が多い。残雪期に主稜線を歩くたびに中門岳の白さが引き立っているのを見てきた。二つ目のポコを越えると中門岳のま後ろに丸山岳が居座ってみえる。なんだかうれしい。無雪期には山頂手前の鞍部に2mほどもある「中門岳」標識と大きな池塘がある。標識の頭が出ているのではないかと思ったが見つからなかった。ということはまだ積雪が2mほどもあるということなのか。

山頂の西尾根に目をこらし中門沢から詰め上げた鞍部を確かめた。樹林に遮られ全容はわからなかったが、9月にあの鞍部に詰めたら草原にでて靴を履き替えた。それから藪を抜けてこのあたりの登山道に出たことをなぞった。背後には平ヶ岳から越後三山の山並みが広がり爽快だ。中門岳は平頂なので少し北側に下がってみると守門、浅草岳、村杉半島の山並から丸山岳をへて三岩岳までの尾根筋が手に取るように見える。今年は行かなかったけれど、周りのお友達の山々からいろんな角度で眺めてきた。こんな山歩きもいいものだ。

眼下の1998mはゆったりと気持ちがよさそう。さらに奥に雪尾根が続いている。つぎは途中まででいいからこの尾根を下った景色を見てみたいと思いながら山頂をあとにする。

 

 

 

 

燧ヶ岳の優美な姿を見ながら駒ヶ岳に戻る。御神楽沢源頭部も気持ちよさそうで、スキーヤーに人気があるのがよくわかる。駒ヶ岳からはトレースに沿って一気に下る。しだいにシラビソから芽吹いたばかりのブナの混合林となる。下るにつれ左手のゆるやかな尾根に新緑のブナが広がり、初めていい尾根だと思えた。無雪期の登山道と違いどこでも自由に歩ける雪尾根は快適だ。1450mあたりからブナの雪尾根を離れて登山道があらわれる。疲れが出始め飽きてきた頃ようやく登山口の階段が見えホッとする。ショートカットの山道を下り雪代で白く泡だつ沢沿いの林道からバス停に向かった。

短いながら快適な残雪期の山歩きとブナの新緑が印象的な山旅でシーズンを終えることができた。連休明け5月中旬頃の年中行事にしたいと思いながら、他に乗客のいないバスに揺られ電車を乗り継いで長い長い帰路についた。

 

 

 

 

三岩岳登山口11:00ー避難小屋15:30//4:35ー三岩岳5:25ー会津駒ヶ岳8:50/9:10ー中門岳10:00/10:20ー会津駒ヶ岳11:15/11:30ー滝沢登山口14:15