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2021.09.15
中門沢
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2021年9月13-15日

いつか中門沢へ、の想いがようやくかなった。当初は奥只見の袖沢林道からミノコクリ沢をへて中門沢という計画でいたが、林道からミノコクリ沢に入るのは崩壊が激しく苦労しそうだという思いにとらわれ月日がたった。それが今年になって再浮上した。最近は沢泊の旅ができるのもあとわずかだろうという思いが常につきまとっている。だから今のうちに、長らく心に留めていた沢に行きたいという思いがこれまた強くなっていたのだった。

でも、どうして中門沢なのか。尾根を隔てた隣には御神楽沢という名の知れた人気の沢がある。まずはこちらを遡行するのが順序では?そうなのだけれど、あまのじゃくな性格なのか有名沢の隣の沢というのが自分の性格に合っているような気がする。以前東北の戸立沢という沢に入った時も、有名な笹木沢の隣の沢というのがけっこう心地よかった。そして自分にとって、とてもいい沢だった。。。などというと、きれいな言葉になるけれど、実際には南会津の沢に憧れつつも体力技量的に行ける沢は限られていて、中門沢もそんな沢の一つだということ。

アプローチが難点なのだが、近年の数少ない記録を見ると皆さん大津岐側から山越えをして中門沢に入っていることがわかった。当日発なのでできるだけ時間を節約するために相当の料金は覚悟の上で小出からタクシーを利用した(ちょうど2万円だった)。銀山平からくねくねと樹海ラインを進むのは実に十数年ぶりのこと。沢の会に入会した年の秋の集中山行で恋ノ岐川に入った時以来だ。あの時は元気一杯で、リーダーに頼んで先頭を歩かせてくれと率先した。以来沢を続けてはいるけれど、ほとんど進歩がないなあなんて、あれこれ郷愁にふける。

途中、高齢の男性が二人なにやら作業をしており慰霊塔と書かれた石碑があった。興味をそそられ運転手さんに聞くと、昔このあたりにいくつか銀山の坑道があったが出水で大崩落する事故が発生し5000人もの人が犠牲になったという。初めて知る歴史だったので驚いたが、帰宅後調べると5000人というのは大げさだったが、ざっと史実を確認することができた。(Wikiでアンチョク検索)タクシーは鷹ノ巣手前の只見川を渡る橋のところまで。一般車は入ってもタクシーは大津岐林道には入らない方針らしい。

とぼとぼ歩き始め大津岐川沿いの林道を奥に入る。林道は随所に補修したあとがあり良好な道だった。さすがに9月中旬ともなればアブはいない。夏にアブが発生する所には、どんなにいい沢でも絶対に行きたくない。発電所を横目に見ながら滝沢沿いの林道に入る。途中工事作業者がいたりトラックが通過したりと結構ひと気がある。

林道が途切れるところで沢支度をしていよいよ入渓だ。しばらくは安穏としたゴーロ沢だが森の雰囲気がよく、ひいき目に以前遡行した大幽東の沢の下流部に似ているなあ、なんて思う。しばらく進むと突然あらわれる光景に唖然。ゆったりとした森の流れの先に巨大堰堤が立ちはだかる。堰堤があることは理解していたが、これはまるでダムのようだ。右岸の斜面から巻き上がるともとのゴーロ沢にもどり荒れた雰囲気となる。

その後は時々小滝がでてくるくらいで淡々と歩く。けれどとても歩きにくく、なにもないのに時間がかかる。初日の目標は尾根越えの枝沢の二俣1280m。けれど適当な幕営地があるかどうかは不明だ。一張りくらいなんとかなるだろうと軽く考えていたが二俣は岩がゴロゴロしていた。本流の方が開けて見えたので少し進んでみると一段上がったところに平坦な草地を見つけた。笹やシダを刈り取ると立派なテンバ適地になった。薪もそこそこ集まり、前回の教訓を生かして薪の丁寧な仕分けをするとすぐに火を熾すことができた。先行きは不確実な要素もあるが、まずは予定通りに初日を終えることができたことを喜んで乾杯。

 

 

 

 

翌朝は予定どおり6時に出発。尾根越えの枝沢に入るとさらに小振りになるが斜度があるのでかえって歩きやすい。1612m西の鞍部に近づくと沢型が消えるが藪は軽い。いったん小さな窪地にでてしまったがさらにひと登りで鞍部にいたると反対側に金山沢の切れ込みが認められる。下るとすぐに水が出てきた。下り易い沢だ。上部に幾つかナメ小滝があったが簡単に巻き降りる。シロウ沢と同様荒れた様子だが、下るにつれて金山沢の沢名の由来なのか赤茶けた岩盤のナメが続く。昨日から荒れ気味の平凡なアプローチの沢を遡下降してきたので、ようやくいい雰囲気になったとよろこぶ。

すぐに中門沢との出合いとなる。まる一日掛かりでようやく着いた。隣の沢にはかなわないかもしれないが、私には十分に大きな沢に見えた。ゴーロといってしまうのは不適切に感じられるほど森との調和全体で雰囲気がいい。これからこの沢をたどり、まだ登ったことのない中門岳と湿原にでるのだと思うと楽しみだ。悪場はないと予習してきているので気持ちにも余裕がある。さあ、行きましょか。

 

 

 

すぐに大きな釜をもつ水量豊富な岩滝がつづく。中門沢はアプローチが不便ながら釣師の方が多く入っている沢なのかもしれない。いかにもイワナがいそうな深い釜が多い。ウグイ沢を分けると沢幅が狭まる。傾斜もましてきて数メートル規模の滝やゴルジュっぽい廊下などもあらわれ変化に富む。どれも難しいことはなく通過できる。ちょっと首をかしげるようなところにはなんとなく巻き道もある。二、三回お助け紐をつかっただけで最後までロープの出番はなかった。

とはいえ、昨日同様時間が経つのが早い。自分では普通に歩いているつもりでも、やはり歩行ペースが遅いのだ。標高を上げないところはゴーロが多く倒木や枝の張り出しなどで途端にペースダウン。どこでもテンバ適地があれば予定を早めて行動を終えたかったが、なかなか見つからない。結局予定どおり1500m付近まで進んだ右岸に目当てにしていた平坦地を見つけザックを下ろした。

イタドリのような背の高い草や笹を刈って整地すると昨日以上にフカフカの寝床ができた。ただ問題は薪だった。あたりに薪が少なくなんとか集めたもののみな湿っていて火を熾すのが難しい。疲れていたので頑張る気力もなく途中で諦める。そのうえ食欲もなく、前菜を二、三口に入れただけで何も食べられないまま二日目を終えることになってしまった。

 

 

 

 

疲れていたので山では珍しくぐっすり眠り、目覚ましもかけ忘れたため寝過ごしてしまう。朝も依然食欲なく、昨夜仲間が食べたご飯の残りをお粥にして食べ、予定よりほぼ1時間遅れで出発する。食欲はないけれど体調が悪いわけでなく、さあ頑張ろうと声を出して元気を呼び寄せる。所々荒れているがダラダラのゴーロ歩きはなく、小気味好く滝が連続して高度を上げていく。どれも階段状で楽しい。1530m二俣はどちらも滝で出合い豪快だ。ようやくナメらしいナメもでてきた。中門沢はなかなかいい沢だと心浮き立つ。

ナメから一枚岩の岩盤を進むと前方に2条の幅広ナメ滝が見えてきた。楽しみにしていたところだ。傾斜はそれほどでなくスタスタと登る。中門沢の主のような滝だ。その後はさらに傾斜が増した小沢となる。振り返ると北側の山並みが見えてきた。ちょうど真北にみえる高い山は丸山岳に違いないと嬉しくなる。前方には稜線も見える。水流は1900mを越えても続いており予定の2018mコルよりも東に向いていた。沢型がきえネマガリダケや笹の藪漕ぎとなるが、シャクナゲや蔓類がないだけましだ。藪の薄そうなところをつなぎながら小一時間ほどすると笹の背が低くなりぽっかりと空いた稜線の草地に飛び出した。気持ちのいいところだ。ザックを下ろし沢装備をとく。

一休みしたのち再び軽い藪に入り湿原を横切って登山道に抜けた。ずいぶんと時間がかかったけれど、やり遂げた満足感。ザックをデポして中門岳へ向かう。池塘のある湿原は予想以上に規模が大きく感激する。仲間は以前中門岳に来たことがあり、記憶ではサクッと登ったという。そんな山に三日もかけてやってきたと、私とは別の意味で感慨深そうだった。南会津の山々の展望がよく、北西には今ではすっかり人気の片貝川の白石沢スラブまで見える。

沢を詰めて湿原へというテーマにも一応かなっているが、これで木道とベンチがなければススケ峰湿原みたいでもっとよかったのに、なんて思ってしまう。もう登山口の最終バスには間に合わないことがわかっているので急ぐこともなく心ゆくまで山頂湿原を散策。3月に登った丸山岳への坪入山、高幽山から梵天岳の尾根が目の前に横たわっている。あのときはあちら側から真っ白でクリーミィーな中門岳を眩しく眺めたことが思い出される。

山頂を後にして少し下ると中門大池に大きな山頂標識があった。ちょっと無粋だななんて思いながらもしっかり記念撮影。会津駒はいつも積雪、残雪期なので無雪期は実は初めてだ。駒の小屋のベンチには宿泊客がくつろいでいた。気楽な登山道ではあったが、疲労困憊の下山となった。再びタクシーを呼んで会津高原尾瀬口へ。最終便まで小一時間あるので近くの日帰り温泉夢の湯で誰もいない湯に浸かった。鈍行を乗り継ぎ帰宅したのはとうに午前零時をまわっていた。自分なりに精一杯だったけれど、今だからまだなんとか間に合ったのかもしれない。いい沢でいい山旅ができたことに感謝!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

只見川の橋9:45ーシロウ沢出合11:10ー入渓点11:45/12:10ー1280m二俣16:20//6:00ー1612m鞍部8:00ー金山沢下降ー中門沢11:20/11:45ー1490m幕営地16:30//6:45ー2038m鞍部11:40/12:10ー中門岳12:50/13:20ー駒ヶ岳避難小屋14:15/14:30ー登山口17:30