ブナの沢旅ブナの沢旅
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2018.02.02
船形山
カテゴリー:備忘録

2018年2月1〜2日

 

今年は新年早々から山は降雪がつづきなかなか予定が立たずにいた。エネルギーあふれる若者ならばラッセルに励むこともまた雪山の醍醐味だろうが、ブナの沢旅にはちょっと手に負えない。そんなわけで忸怩たる思いで天気予報とにらめっこしながらタイミングを見計らっていた。

船形山は2009年から隔年ごとに冬に訪れてたが最初の頃は山頂までたどりつけなかった。今回も雪の状態がわからないのでかなり余裕を持った計画をたて、前夜発とした。以前は冬でもテントで仮眠などとやっていたが、さすがに最近はつらいので仙台駅近くの格安ビジネスホテルを見つけて前泊した。

船形山は登山口の隣に県立の内水面水産試験場があるため道路は除雪され、冬でも無雪期と同じところから登れる。7時前に着くと他に車はなく、前日の降雪でまっさらな雪面となっている。

前回やってきたのは4年前の5月、新緑と残雪の季節だった。久しぶりで懐かしい。最初は新雪に覆われた古いトレースがうっすらと認められたが、すぐに消えた。そこからはまっさらな雪面にトレースをつけていく。シューをはいてスネ位の深さの軽いラッセルで気持ち良く進む。番号標識の位置からすると積雪は2m弱というところか。薮が隠れてすっきりとした雪面のブナ林だ。

三光の宮まではルートも明瞭なので順調に進むが、ここからは茫漠とした緩やかな山腹をひたすらトラバースしていく。最初に来た時はガスで見通しも聞かず、目印の番号標識を見失い迷ったところだ。方向の見当をつけて目印のテープとを探しながら進んでは番号を見つけてホッとするということの繰り返し。見つからなかった番号はどうも雪に埋もれてしまったようだった。

歩き始めて6時間半もかかって、ようやく升沢避難小屋へ着いた。当日発だったら初日はここまでしか進めなかっただろう。次第に木々に霧氷がつき始め、空もすっきり晴れてきたのでとても美しい光景が広がっている。避難小屋の入り口は雪で塞がれていたので入ることはせず、軒下で遅めの昼食をとる。

 

避難小屋からの登山道は谷筋についているので積雪期には歩けない。一旦小屋裏から沢に降りて対岸に張り出している尾根にとりつくが、おそろしく急斜面だ。けれど一苦労して登り上げるとそこには素敵なブナの森が広がっている。思い描いていた青空の下に輝くブナの霧氷の花にようやく出会うことができた。

ワクワクしながら雪を踏みしめて登っていくと、次第に低潅木帯となる。そして振り返った光景にふたたび息を呑む。緩やかに尾をひく山並みはブナの白い霧氷のモコモコに覆われ、その真ん中にちょこんと避難小屋がみえる。まるでおとぎ話の世界のような景色だ。

前方に広がる尾根に乗り上げると再び景色が一変し、いよいよ船形山が真っ白な姿を現わす。2012年3月に同じルートで登った時はガスで何も見えなかったので感激もひとしおだ。雪も締まってきてほとんど潜らない。シュカブラ状の斜面を登っていくと山頂小屋も見えてきた。見えてからが意外と遠く感じられたが、なんとか4時前に到着できた。

 

 

案の定入り口は雪が吹き込んで開けられず、一段高い小窓から滑り込む。開けられる窓の間口は30センチほどなので、体格の大きな人は入るのが大変だと思う。ザックを中に入れてから山頂標識へ。小屋の裏側は雪がべったり張り付いて文字通りのアイスハウスとなっている。標識も海老の尻尾が相当に発達していた。ここでは標識も社もすべてが雪と氷に覆われていた。これが厳冬期の姿なのだと思う。

太平洋側は晴れているが、日本海側の山々は雲海に覆われ頭だけを出している。その対象が面白く見応えのある景色だ。山頂小屋に泊まるのは3回目だが、いつもガスっていたり雲で覆われていたりだった。今の時期にこれほどの絶景が見られたのはほんとうに幸運だと思う。

 

それにしても寒い。小屋の中の温度計はマイナス10度。ストーブはあるが緊急時以外は使用禁止。そうでなくても本当に使えるのか疑わしいほどにガタがきていたが。寒さは想定内のことなので早速中でテントを張り、水づくりや食事も全てテントの中で行う。ここでは小屋内とはいえ戸外と変わらないのだ。

暗くなって窓から外を見て再び声をあげる。一面下界の灯りで囲まれていたのだ。そんなに街から近い山なのかと意外だったが、オレンジ色の灯りがチラチラと美しかった。外に出ればもっと良くもっと素晴らしい夜景が見られるのだろうけれど、寒さに負けて窓越しでよしとした。

寒いので早々とシュラフにもぐり遅い朝を迎えた。残念ながら外は一面のガス。予報では晴れなのでしばらく待つことにしたが、どうも太陽とガスのせめぎ合いがしばらく続きそうな模様。少し太陽が押し戻したところで出発する。晴れることを期待して当初の予定どおり蛇ヶ岳へ進む。

再びガスが濃くなり、時々ホワイトアウトに近い状態となる。尾根が広くて風もないため危険なことはないのだが、そんな時はとても不安な気持ちになる。コンパスとGPSで方向を慎重に確認しながら進むと次第にガスが薄くなっていった。蛇ヶ岳の棒が見えた時はホッとした。

蛇ヶ岳からは少し戻って北東に伸びる尾根を下る。ここも視界がないとわかりにくいところだ。一旦尾根に乗れば、あとは広く緩やかな尾根を気持ち良く下る。このころになってようやくガスも取れて再び青空が広がる。

 

三光の宮手前で前日の自分たちのトレースと合流したときはちょっとした冒険をして帰ってきた気分になる。二日とも天気が良かったので他に入山者がいると思いきや、かなり下る迄私たちのトレースしかなかった。東京だったら平日だろうが降雪後はそれ行けとばかり登山者が押しかけるのに、地元の人はいつでも登れるから欲がないなどと思う。

心地よい疲労を感じながらも、青空の下、まっさらな雪の美しいブナの森を歩くことができたことに心満たされながら登山口に降りたった。

登山口7:05ー三光の宮ー升沢避難小屋13:25/13:45ー山頂15:50//9:20ー蛇ヶ岳10:55ー登山道合流12:00ー登山口14:10