ブナの沢旅ブナの沢旅
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2017.07.07
斜里岳
カテゴリー:備忘録

2017年7月7日

 

数年前にモセカルベツ川を遡行した際、いつものように計画段階では欲張って3日目はさくっと斜里岳に登ろうなどと目論んだ。当然現実はそんなに甘くなく、斜里岳はいつになるかわからない「今度また」となった。

その「今度また」の機会がやってきた。利用期限が切れそうなマイルを使わなければならないという本末転倒した理由がきっかけだった。飛行機を使う山ならば北海道。北海道なら前回行きそびれた斜里岳へという具合。知床半島の観光でもいいという軽い動機だった。

夕方の最終便で女満別へ飛び、空港からレンタカーで斜里岳のある清里町の道の駅「パパスランド」へ向かった。ここは温泉もある施設で、すでに多くの車が駐車していた。とくにキャンピングカーの多さに驚く。しかも関東はもちろん大阪や広島、宮崎など遠方のナンバーが多い。みんな夏の北海道を満喫しているのだろう。

翌朝早朝に登山口のある清岳荘へ向かう。立派な山荘で、宿泊もできるらしい。まだ6時過ぎたばかりなのに、すでに多くの車が駐車していた。さすがに夏の北海道の百名山だと、感心することしきり。登山道をすすみ、沢を渡渉するところで沢靴に履き替える。登山靴でも大丈夫らしいが、せっかくなので沢登りの気分を味わいたい。しばらくはゴーロの沢で何度も渡渉を繰り返す。

登山地図をみると7−8本の滝があってそれぞれに名前がついている。最初の「水蓮の滝」が出てきたときは、なんだこんなものかと思ったが、以降はそれなりに見ごたえのある10m級のナメ滝がつづき俄然楽しくなる。この際名前などはどうでもいい。たくさん滝がでてくるが険悪なものはなく、そのまま登れるものや、ちょっと傾斜が急なナメ滝はどちら側かに登山道がついていて簡単に巻ける。

雰囲気としては那須の井戸沢に似ていると思った。超ミニ米子沢といったら言い過ぎかもしれないが、開放感のある階段状ナメ滝が続く。もちろん、これはれっきとした斜里岳の登山コースであることを忘れてはいけない。沢が登路になるケースは他にもあると思うけれど、本州にはないスケールだと思う。

 

こんな沢コースに登山靴のハイカーがどんどん登ってきている。中には苦労している人も見受けられたが地元の人は慣れている様子。楽しい沢登りを2時間ほどつづけると滝もなくなり、沢は早くも源頭の様相となる。次第に水が涸れ、そのまま登山道となって馬の背と呼ばれる稜線鞍部にでる。

沢歩きをしているうちは涼しくて快適だったが、水が涸れてからは暑さにばて気味となる。涼を求めてやってきた北海道だったが、なんとこの日は今季の最高気温を記録するほどの猛暑に見舞われたのだった。暑さで空気もかすみ、山頂からのオホーツク海や知床連山の展望もあまりはっきりしないほどだった。

山頂でくつろぎながら地元の女性と話をかわし、近くでオススメの山の情報などを得る。展望はすっきりしなかったが、予想以上に花が多く目を楽しませてくれた。沢沿いにもキンポウゲやウツギがたくさん咲いていたが、馬の背から山頂までの沿道ではチングルマや初めて見た濃い桃色のエゾツガザクラが見事だった。

 

帰路は上二股から分岐する尾根伝いの新道コースを下った。時間もあるので途中の竜神の池に立ち寄り、ゆるやかな尾根をたどって斜里岳の展望台である熊見峠へ。ここから急降下して下二股の渡渉点へ降り立ったが、すでに暑さでフラフラ状態だった。沢におりて顔を洗い水に浸かって精気を取り戻す。最後の渡渉点で靴を履き替え、駐車場にもどった。

今回斜里にやってきたのにはもう一つの目的があった。それは山の文芸誌「アルプ」の資料を展示する私設美術館「北のアルプ美術館」を訪ねることだった。数年前も空港に戻る途中で立ち寄ることもできたのだが、あのときは時間の都合からアルプよりも空腹を満たすことを優先させたため、ここも「今度また」になったのだった。

瀟洒な別荘風の建物の各部屋には1958年から25年間、300号続いた文芸誌「アルプ」の他に、各種の山の雑誌や単行本、山岳会の会報などが並ぶ。山岳絵画のコレクションも多い。編集責任者でもあった串田孫一の書斎をそっくりそのまま復元した部屋と蔵書も興味深かった。

「アルプ」の歴史をみていると、懐古趣味ではないけれど、昔と今の違いに愕然とする思いだ。そういう自分も気軽に手軽に山に向かい、適当に感想文的な記録を書いている。できれば先人のような洞察力と感性に満ちた紀行文を書きたいと思うが、なかなか力がおよばない。それでも昨今の写真とキャプション程度の「山行報告」にはしたくないと、「北のアルプ美術館」を訪れて気持ちを新たにした。あわせて記念にと、「アルプ」創刊号の表紙となった大谷一良の版画を求めて帰路に着いた。

 

清岳荘6:15ー下二股7:05ー馬の背9:20ー山頂9:45/10:20ー上二股ー竜神の池11:00ー下二股12:35ー清岳荘13:40