ブナの沢旅ブナの沢旅
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2012.01.26
西明寺入口〜綿向山
カテゴリー:雪山

2012年1月26日

 

就職した最初の配属先が名古屋支店だった。そこにはワンゲル部があり、若い男性が不足していたため有無を言わせず部員に組み込まれた。しかし、当時は低山に興味がなく、学生時代の仲間と南アルプスや八ヶ岳を歩いていた。それでも、年に1-2回は鈴鹿の御在所や藤原、霊仙といった名のある山を歩くことがあった。4年目に東京に転勤となり、鈴鹿との縁は切れ何十年かが過ぎた。

今回、たまたま名古屋での仕事が水曜と金曜に入り、間の一日が空白となったため、どこか手軽に歩けるところは無いかと調べ始めた。鈴鹿にもブナがあることがわかり、綿向山は雪山初心者コースとのこと、この時期もかなり人が入っている様子。雪の予報だがなんとかなりそうだと、でかけることにした。

鈴鹿山脈は三重県と滋賀県の県境に主脈があるが、綿向山は主脈から西に外れた滋賀県側にあり、そのため関西からの登山者が殆どのようだ。名古屋からだと鈴鹿山脈の南をぐるッと回り込んで行くことになる。

鈴鹿や亀山にある大工場のためか東名阪高速で通勤渋滞に巻き込まれ、登山口である西明寺入口まで3時間近くかかってしまった。積雪で4WDではないレンタカーでは駐車場には入れず、已む無く道路上に駐車した。1台駐車しており、平日で雪にもかかわらず登山者がいることがわかり、なんとなく安心した。

しばらくは林道を歩く。やがて、雪がなければそこまで車で進める登山口にいたり、登山道となる。車の主であろう先行者のトレースがある。3人パーティーが後ろから来ることもわかり、この山の人気に驚いた。

いったん林道に出た後、再び登山道に入るところには立派なヒミズ谷小屋があり休憩できるようになっている。ずっと杉の植林帯が続き、単調なジグザグ道を歩いていくと「一合目」という標識があり、まだ一合目かと先を思いやる。

雪は降り続いており、徐々に積雪量も増えてきた。でもまだツボ足で問題ない。1時間半ほどジグザグを繰り返すと「五合目小屋」に着く。視界が開け、ようやく一部自然林が現れる。でも雪のため遠くは見えない。

さらに植林帯を登るが、雪が深くなってきたためワカンを装着、30分ほどで七合目の「行者コバ」に。ここは昔、山伏が身なりを整えたと言われるところで、祠が奉られている。なにしろ、綿向山は1300年前から近江の人々の信仰の山として登られていたという。

ようやく七合目で植林帯は終わり、ブナが現れる。大きなものでも手で抱えられるくらいで、東北や会津には比べるべくもないが、こんなところにもブナがといとおしい気持ちになる。岩手の駒頭山では見られなかった樹氷がびっしりと付いている。こんなに南で標高も1000メートルに満たないところが雪に埋もれている姿は不思議であった。

しばらくすると登山道が閉鎖され、積雪期限定の「冬道」に導かれる。雪崩の危険があるため、冬期のみ稜線に突き上げる道を作っているようだ。急登でワカンがすべるのでアイゼンに切り替え、一踏ん張りで山頂に飛び出した。信仰の山だけあり、大きな鳥居がある。

可能であれば竜王山を周回してと思ったが、トレースは全くなく、膝上のラッセルになるため諦めて、すぐに展望のない山頂を後にした。

下りは早い。七合目、五合目と一気に下り、小屋で一休みしていると陽が射して来たではないか。あわてて小屋を出て写真を撮った。なにしろいつもリーダーから写真を撮れと言われているので。青空にブナが映え、湖東の平野も見渡せた。あとは淡々と植林帯を下り、西明寺口に戻った。下りでも二組に出会い、この日は私を入れて5組8人が入るという盛況。たしかに雪山気分を手軽に味わえる。

「綿向山を愛する会」が組織されており、五合目の小屋も会がボランティアで再建したようで、途中にいくつも休憩小屋があったり、道標がしっかり整備されていたり、地元の山としてブナを含めて保護されていることがわかった。わざわざ東京から行くほどではないが、このような機会に一人で雪山を歩くには手ごろであった。(sugi)

9:30西明寺入口登山口-10:00ヒミズ谷出合小屋-11:00五合目小屋-11:30行者コバ(七合目)-12:10山頂-12:45五合目小屋-13:45登山口