ブナの沢旅ブナの沢旅
▲トップページへ
2010.03.22
雨ヶ立山~布引山
カテゴリー:雪山

2010年3月22-23日

 

この三連休は南会津の山にどっぷり浸かろうと念入りに計画していたのだが、中日に低気圧の通過で山は大荒れの予報。よりによって真ん中に来るなんて意地が悪いなあーと憤慨しても始まらず、気を取り直して予定の建て直し。日程をずらした上に1泊に短縮し、かねてから気になっていた雨ヶ立山に行ってきた。

===============================================================

上毛高原駅からレンタカーで宝川温泉へ向かう。広い駐車場は雪で埋まっており、東京方面の車が1台駐車しているだけだった。ここから林道を歩くことになる。昨日はかなり雪が降ったようで雪景色がきれいなのだが、思わぬ新雪ラッセルに時間をとられる。宝川の清流を眺めながら進むとしだいに空も晴れ渡り、気持ちがいい。

トンネルを過ぎてしばらくすると5人パーティとすれ違う。20日に入山し、昨日は大荒れで停滞とのこと。朝に雨ケ立をピストンしてきた、バンユウサワ?の左を行ったけれど右がいい・・と、少し意味がわからないアドバイスをもらう。ともかくこれから先、林道ラッセルがなくなりホッとする。トレースは初沢出合から植林帯に入っていたが、予定通り板幽橋へ。ここまで2時間半近くもかかってしまったが、初日は8合目のブナ林までなので急ぐことはない。しっかりとエネルギー補給をしていざ出発。

板幽沢から離れないように茫漠とした植林帯の斜面を登っていくと、1000m付近でトレースと合流。けれど沢に近づく雪原で途切れている。不思議だったが、地図とコンパスでルートを探っていく。どこでも登れそうななだらかな斜面が続いているが、予想以上に距離がある。そこで谷筋から尾根に乗ろうとしたところ、最後の数mほどで雪壁に阻まれ、空身でピッケルを支点にクライミングもどきとなってしまった。ルート取りがまずかったようだけれど、トレーニングだと思うことに。あとはブナの斜面をひと登りで芦沢右岸尾根に乗った。

ここからが初日のハイライト。ブナの大木が点在する緩やかな尾根を、展望を楽しみながら快適に進む。すぐに二重山稜の尾根が広がり、まっさらな美しい雪の森となる。素晴らしい光景に感動しながらテンバ適地を求める。どこでもいいのだが、さらにベストをもとめ、武尊山と至仏山稜を間近に望むことができる三本ブナの平地をねぐらとする。

翌日は曇りの予報。視界が無いと山頂に行ってもつまらないので、天気のいいうちに山頂を往復する選択肢もあったが、焚き火を優先させる。焚木は前日の雪で湿っており、おき火を起こすのに苦労する。なかば諦めかけ、これが最後と再び火をつけたところようやく小枝が燃え始め、それからは順調に火が育って盛大に燃え上がった。気がつけば宵闇が迫りつつあったが、粘り勝ちだ。焚き火にあたりながら食事を取り、身も心も温まる。至福の時が過ぎていく。テントに入ってからも、火はいつまでもくすぶり続けてた。

夜中に目覚めるとテントをたたく音。雪が降っている。翌朝も小雪模様。しばらく様子を見ることにした。6時すぎに外をのぞくと曇りながら視界は良好。ガスはない。これならば山頂へ行けると、急いで起床、食事をとる。テントはそのままにして8時過ぎに出発。山頂までは1時間ほど。

山頂近くの斜面はクラスト気味になってきたのでアイゼンに履き替える。安心感がちがう。山頂へ。ひとまず目標達成。風もなく穏やかだ。目の前に布引山への稜線が魅力的に迫っている。行かない手はない。広くなだらかな稜線歩きはこの上なく快適なり。眺望もすばらしく、思わず笑みがこぼれる。

布引山の展望は360度のパノラマで素晴らしいのひとこと。この山域を歩きつくしている人の記録では谷川連峰屈指の展望とのこと。吾妻山から一の倉の山稜、笠ケ岳から朝日岳、さらに巻機へと続く上越国境稜線はとても魅力的だ。いつか歩いてみたいなあ。

さらに丹後山から平が岳~至仏山稜、武尊山。遥かかなたには赤木山がたおやかな尾を引いている。文字通り、ぐるりと巡る展望台。そして眼下にはナルミズ沢の源頭部。緩やかに落ちる尾根を駆け下りて行きたい衝動にかられる。昨年9月に遡行した沢の冬の姿が俯瞰できる。そう、こうして沢と雪山をつなぐ山行が自分のスタイルなのだ。また一つ繋がってうれしい。

山座同定が尽きず、大烏帽子山への雪稜もとても魅力的だ。今度こそと、また課題がふえる。山頂を去りがたいが、お茶をして来た道をもどる。すると別の角度の展望がひろがる。上越方面の山並は真っ白だが、尾瀬方面は黒々している印象。雪が少ないのだろうか。

雨ヶ立の山頂直下を尾根へとトラバースして、すぐにテンバに戻った。ただいま~。時間はたっぷりあるので、のんびり昼食をとり、帰り支度。心の底から充実感を得ることができてとてもうれしい。

何度も振り返りながらブナ平をあとにする。往路は少し遠回りしたが、時間も視界もあるし別ルートを検討。途中で赤ペンキ印が続いている小尾根を下る。スキー用のマークのようだ。登りでは見えなかったマークがうるさいくらいに続いている。

尾根を下って沢近くの雪原に下りたあたりで昨日の自分達のトレースと合流。行きはこのルートに気づかなかったが、違うルートを歩けてよかったとする。昨日の5人パーティがどこを歩いたのか興味深いなどと世間話をしながら往路をたどり、途中から初沢出合へ続くトレースを行く。こちらの方が多少ショートカットになるようだった。

林道におりると昨日の新雪は腐れ雪になっていた。つぼ足先行者の踏み抜きが多くて歩きづらい林道を駐車広場に戻ると、昨日の雪はまったくなくなっていた。たった1日の様変わりに驚くとともに、昨日の新雪の僥倖を感じながら帰路についた。

22日 宝川温泉駐車場9:10-板幽橋11:30/12:00-1450m二重山稜テンバ15:40

23日 テンバ8:00-雨ヶ立山9:00-布引山9:55/10:25-テンバ11:30/12:35-林道初沢出合14:15/30-駐車場16:00