ブナの沢旅ブナの沢旅
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2010.03.08
御正体山
カテゴリー:山歩き

2010年3月8日

 

今年の冬は天候不良が多く、すでに何度か計画変更を余儀なくされた。今回も南会津を予定していたのだが、全国的な予報の悪さに一旦は中止を決めた。天気が悪いとすぐに士気を無くす弱小パーティなのだ。けれど、なにか釈然としない。そこで、ブナ林の散策ならば多少の悪天でも楽しめるだろうと、敗者復活戦よろしく、急遽予備日としていた月曜日に御正体山へ行ってきた。

御正体山は古くから信仰の対象となっていたブナの山。残念なことに多くは伐採されてしまったが、山頂付近の西面にはまだ見ごたえのあるブナ林が残っていることを知り、かねてから機会をうかがっていたところだった。前日の冷たい雨はきっと山に雪を降らせたはず。

本厚木駅からレンタカーで東名高速を走り、山中湖側から山伏峠へ向かう。トンネル前の空きスペースに駐車しようとすると、すでに車がとまっていた。先行者がいるようで、踏み跡が登山口へ続いていた。廃屋となったホテルの敷地に入ると左手に小さな鳥居があり、この脇から登山道へ。

ここは私有地で以前は中に入れず、4年前に水の木沢を遡行したときはトンネルを道志側へぬけてから右側の登山道に入った。今はゲートも無実化しており、こちらから入山するのが一般的のようだ。できれば都留市側から入って山伏峠に下りたかったのだが、バスの便が悪いので断念。山伏峠からのピストンとなった。これまで一人で来ることができなかったのもアクセスの悪さが理由だった。

このところすっきりしない週末が続いているが、雪化粧した森を歩くこのコースは、そんなときにピッタリの選択だ。山伏峠にでると、待っていましたとばかり霧氷の枝を広げたブナの歓迎をうける。

途中から軽アイゼンをつけて急斜面の細尾根を小一時間ほど登って石割山分岐の主尾根にのる。雪はさらに深くなり、霧氷の花も満開状態でとてもきれい。標高はすでに1300mの楽々ハイキングなり。予想以上の雪景色で、一旦は中止した山行を行き先変更で復活させた選択に、我ながらにんまりする。

ここからは、緩やかながらアップダウンを繰り返して進む。奥ノ岳を過ぎてしばらく行くと開けた空間となり、霧の中から巨大な鉄塔があらわれる。晴れていれば絶好の展望地なのだろうが、ガスで何も見えない。

けれど無残な伐採地を目にするよりは何も見えなくてよかったかも知れない。道志側の斜面は植林が多いが、西側斜面にはブナやモミの大木が見られるようになり、期待がふくらむ。一帯はモミ、ツガ、ブナやミズナラの混合林となっている。尾根道のあちこちでモミとブナの大木が狭い空間に並存し、枝を絡ませながら互いに高さを競い合うかのように力強く天空に伸びている姿がとても印象的だ。

前ノ岳あたりからはブナの大木だけでなく、百年単位の樹齢を感じさせる古色蒼然とした巨木があらわれる。丹沢では見られない巨木に驚くとともに、うれしい発見だ。緑色の苔と雪の白さが相まって、威厳のある雰囲気を醸し出している。再び平凡な樹林にもどり、カラマツの植林帯となるが、1600mで傾斜が緩み、尾根が雪原台地のように広がるところに出て、思わず歓声とともに息を呑む。

視界が開け、穏やかに広がる雪の台地にブナやモミの巨木がそれぞれの領域を主張するように点在している姿は感動的だった。冬は見通しが利くので、斜面の奥まで巨木の存在が確認できる。狭い尾根では競い合っているように見えたが、ここではみなゆったりと平和的に共存しているように見える。

しばらくは夢見心地で一本ずつに近づき、スキンシップを楽しむ。二人で手を広げても抱えきれない胴周り。太さが4mを越える巨木も何本か確認できた。よくぞ伐採を逃れて生き延びてくれたものだと、畏敬の念さえ湧いてくる。

先行していた二人パーティとすれ違い、さらに少しの緩やかな登りで樹林に囲まれた平坦な山頂へ。急に世俗的となり、いろいろな標識が目に付く。省略・・・。真ん中には真新しいベンチと椅子が雪をかぶったままだ。彼らは休まなかったのかな。雪をかき分け、さあ昼食の準備。最近の定番になっている具沢山のラーメンを作っていると、ようやく太陽があらわれ、あたりを暖かく照らし始めた。

食後はザックをおいて反対側の峰宮跡方面の尾根を散歩に行ってみる。北面のせいかさらに雪深く、太陽の光で樹氷のかけらが容赦なく降り注ぐ。同じようにブナの大木が点在していることを確認し、さらに下って尾根が細く平凡になったところで引き返した。

こんなにのんびりしていてもまだ1時過ぎ。あとは来た道を戻るだけだが、またあの巨木の広場を通ることができてうれしい。道志の山にこのように原始の姿が残されていたことを知ったのは大収穫だった。今では自然保全林に指定されているが、これからも力強くあり続けることを願わずにいられない。今度は新緑の姿を見てみたいし、紅葉の時もきっとすてきだろうと期待を胸に抱きつつ山を下った。

山伏峠登山口8:25-奥ノ岳9:50-前ノ岳11:10-山頂12:10/13:15-山伏峠登山口15:40